ー第7話ー 『私の名はディラ。高位聖神官だ。』
『ホムンクルス』
人造人間。人に造られた人。言い方は様々だが、どうやらこのF達は、ホムンクルスらしい。俺的には、クローンとか言っても良いと思う。同じ顔だし。
それはどうでも良い。
NNから話を聞くと、どうやらFを作り出した人物と、NNに魔眼を与えたのも同一の人物らしい。
すげぇなそいつ。ホムンクルス作って?魔眼も作る?天才だろ!
あと、Fがホムンクルスなら、似た感じでNNにも、ホムンクルスが居るのかなと思って聞いてみたら、どうやら違うらしい。
「〈h.c.-006-F.K.〉の『h.c.』は『homunculus』。『F.K.』は『fake』つまり偽物。Fはホムンクルスの量産型で、戦力を急激に増やす為に造られたホムンクルス。でも、魔王グリムから、実験の中止命令が出た為に、Fは止む無く廃棄された。」
とまぁ、よく分からんが、取り敢えず量産型って事はわかった。
だが、ホムンクルスか……
これは、世界的に大きく何かを変えられる気がするな。どうせ禁忌だろうが。
ホムンクルスという情報。これを手に入れたのは大きい。多分。そうだな……ホムンクルスか……『マギア』に情報を持ち帰る事はしない方が良いな。
教会の情報独占。あらゆる交渉の場で、情報の量はその人の有利になる。とかなんとか、おっさんが言ってたな。俺は絶対、交渉なんてしないが。
だが、何か役に立つはずだ。そうだな……そのホムンクルスの製作の方法とか、おっさんのお土産として持って帰ってやるか。おっさん、そういうの好きだしな。
「のう、NNよ。Fが居そうな場所はあるかの?」
「え?あるけど、どうするの?」
よし、忍び込んでホムンクルスの情報を持ち帰ろう。
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先生は突然、手の者を呼んでくると言い、転移で何処かに行ってしまった。
先生が居ない。私はただ、F達の死骸を処理し森に腰掛けていた。
手の者を呼んでくる……一体誰だろうか……私の事を犯罪者と呼ばない人が良いけど……
「お前がNNか?」
突然、背後から声を掛けられ、思わず飛び起き構える。この私が……こんな簡単に背後を取られた!?いつの間に!?
「え……」
顔を合わせると、その人は、黒髪で真っ黒なローブを着こなし、目元を隠す銀色の仮面を身に付けた男………
この人は………
この人は…………
夢に出た人。とても大切な人の一人。優しい先生。こんな所で……私の過去を知ってる人。私の、本当の私を知っているかもしれない人………この人は、そう………
「先生……」
「ん?私はイリアル様ではないぞ。」
知っている。イリアル先生ではない。私の知ってる先生。私の先生。夢に出てきた先生と瓜二つ。
「私の名はディラ。高位聖神官だ。」
そうだ……
そうだ………
そうだ…………
この人はそう……ディラ先生だ。
《恩師を忘れるわけないですよ。》
いや、私は忘れていた。恩師を……この人はディラ先生。私の先生。思い出した。やっと……私の記憶が一つ埋まった。
「ディラ先生!!」
『私はNN、お父さんはグロウ。』
その瞬間、私の眼の前は真っ黒に染まった。
「どうしたNN?」
チガウ……私はNNじゃない…………
「NN?」
チガウの……先生………それは私じゃ………
薄れゆく意識の中に、私は落ちてしまった。
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俺が謎の仮面神官ディラとして、NNを鍛えると同時に、ホムンクルスの情報を拝借しようという計画が折れた。
NNは突然俺の姿を見て、「ディラ先生!!」なんて言ったと思ったら、急に倒れてそのまま意識を失うし。
せっかくカッコよく登場出来たと思ったのに……
『私の名はディラ。高位聖神官だ。』
決めポーズもしっかり取ったのに……完全にスルーされてるし……
直ぐにホムンクルス、取りに行きたかったのに……
今はNNが早く起きるのを待って、切り株の上に座っている。
回復魔法かけてさっさと起こしても良いんだが、ちょっと面倒いと思った自分がいたのでやめた。
ったく……いきなり「先生!」なんて言われたから、俺がイリアルって事がバレたかと思ったわ……気配察知は全く出来ないのに、そういう所は素晴らしいんだな、って関心したわ!
実際は全然違ったけど!
さて、何故俺がディラ先生と呼ばれたのか、考えよう。
まず、このディラの姿を見て先生呼ばわりする奴は9人。俺が直接的に魔法やらを教えた子供達だ。今じゃいい大人だが。
まずはタリウス………あ、こいつは俺の事、先生なんて呼ばないか。
あと、イグザも無いか、記憶ないから。
………どうにか思い出すこと出来ないかなー。おっさんに聞いたけど、おっさんでも無理っていったしな。むしろ、俺の記憶眼で、ほじくり返せとか言われたな。そんな面倒な事する訳無いだろって言ったが。そもそも、俺の記憶眼にそんな能力は無い。あったら使ってたわ。だからおっさんに聞いたのに、無駄だった。
ドラグ?
肉食えば治るとか言ってたわ。
まぁ、それは置いといて。
他には、アイナちゃんやメル、デュメス、ランバ、ギノ、そしてあのムカつくリア充のニーナとザンバ。
うん、この9人くらいしか先生呼ばわりされる人はいないな。
んー。
ちらりとNNを見やる。
人違いじゃね?
ディラって名前の人が、俺以外に居るだろうし……
…………透称眼!!
…………成る程、どうやら俺はホムンクルス以外にも、用事が出来てしまったようだ。
それも、とっても大事な。