表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/252

ー第6話ー 『Fの襲撃』

注意、某戦闘力53万のお方ではありません。

ようやく着いた。


海を背に、目の前に広がる街を見据える。

『マギア』程では無いが、街は活気に溢れていた。元人族の冒険者や元魔族の屋台の店主。過去に争った事が嘘の様に、そこは平和と共存に溢れていた。


勇者が行なった、この人間族計画。それは世を安定させだと同時に、新たな弊害も生み出した。


それによって生まれた弊害……それが『魔王の徒』。

『マギア』のタワーを襲ったアレ。そして今、俺の後ろを付いて歩く女も『魔王の徒』。どんなに平和が訪れようと、悪は滅びない。仕方のない事だ。


まぁいい。その『魔王の徒』によって創り出された禁忌の存在。

それがこの、NNが持つ魔眼だ。

魔眼を持つ者は、この世界に数人も居らず。生まれた時から持つ者は殆ど居ない。それが最後に確認されたのは、およそ400年前。


ロトムス王国を建国した人族の英雄。

ロトムス王国初代国王。チール・ロトムス・ハンバードが二つの魔眼、『魔力眼』『予測眼』で今もなお続くロトムス王国を納めたと言い伝えがある。

因みに、シューラ王国やサン王国はそっから100年くらい後に、ロトムス王国の兄弟が、別々の場所で国を治めることで大陸を支配したとか、しないとか。真相は闇の中。


まぁ、そんな事はどうでもいい。何でこんな事を、言い始めたかって言うとな。


気づかないフリして屋台のおっちゃんから二つ、肉団子を買う。

いや、このおっちゃんは関係ない。問題はその後ろ。

物陰に隠れる奴が一人。さっきから後ろを付けている奴が一人。建物の上から観察する奴らが二人。更にはこの隣の屋台で団子を売ってる婆さん………の後ろで物乞いをするフリをしている奴。


全部でえーと……5人!


尾行下手か!てか、多いわ!


何だか知らないが、俺はいつの間にか、厄介ごとに巻き込まれている様だ。


NNを殺しに来たのか、はたまた俺が『最高聖神官』と知って、生け捕りにでもしに来たか。まぁ、どちらにしても、仕掛けて来たら全員潰す!




NNがな!!




え?俺?何回も言わせんなよ。俺はおじいちゃんだぞ?おじいちゃん。嫌だろ?いつも笑顔のおじいちゃんが、無表情で人殺してたら?

それと、俺一様『最高聖神官』だから、無益な殺生しないんだ。

でも、神官じゃない『魔王の徒』のNNが、味方を間違え殺しちゃうのは、仕方ないよね?


………と言っても、そのNNは、どうやら尾行されている事に、気が付いて無いらしい。そんなんだから、あのバイザー男にやられるんだよ。もうちょっと感を鋭くしようね。


「先生。ここからどうするの?」


「ふむ。」


敬語を使わない事は、良く無いな。目上の人に敬語は使おうね?俺の事を『先生』って呼ぶなら、ちゃんと敬語を使おうね?

さて、そんな事は別にいい。


これからな、まぁ、この鬱陶しい奴らを何とかしたいが、どうせ、糞に群がるハエみたいに付きまとって来るだろうから、襲われない限りは放置で良いか……

奴らもどうせ暫くは、様子見だろう。何が目的かは知らんが。


さて、これからの行動計画だが、とりあえず、このオースティード大陸はさっさと出てまずはヨールパル大陸にでも行く。


オースティード大陸を出るのは理由がある。一応、魔王グリムの支配していた地域なので、布教はしづらい。ってのが俺の見解。

と言うわけで、ノーヴァ大陸かシストラ大陸に行く訳だが、まずそのどちらかに行くには必ず、ヨールパル大陸を経由しなければならない。正規ルートだとな。


裏ルートを使えばいくらでも、何処にでも行けるが、今の俺は最高聖神官。裏があるのは不味いと思うので、正規ルートで行こうと思う。


あ?転移使うのは良いのかって?良いに決まってるだろ!?便利な道具あんのに使わねー、馬鹿はいねぇよ。

アレか?お前は『どこで◯ドア』あるのに使わないのか?

………な?だから転移はオッケーだ。


まぁ、なんでわざわざヨールパル大陸を経由しなければならないのか、そんな事を話し始めると、俺が一旦、教会本部に帰ってその手の書類を探して、読み上げなければならなくなるので、言わない。とゆうか知った記憶はあるが、知らん。毎日、適当に判子押してる奴にそんな事を聞くな。


まぁ、ヨールパルまで行ったらそっから適当に出ている船に乗ればいい。ヨールパルでも布教はしない。一応魔王城があった場所だからな。教会建てるのは難しいだろう。多分。


「まずは、ヨールパル大陸に向かう船着場まで向かう。」


「どうやっていくの?」


もちろん馬車。と言いたいとこだが、生憎、教会の資金はカツカツだ。贅沢言ってられない。は?船代と船の食事はなんだったんだ?自腹に決まってんだろうが!ボケェ!!


2人分だよ!2人分!なんか付いて来ちゃった所為で、2人分払ってんだよ!俺が!!

そう考えると俺、優しいなオイ!


まぁ、どうせその金、バイトのドラグが、しっかり稼いでる金を使ってるから問題無いがな!!

いやぁー!タダで働かせるって最高だね!俺、なんもやってないのに金が入るよ!


あ、俺、ちゃんと週一でやってるからね?一週間毎に、溜まった売り上げをドラグの借金返済と称して、俺の懐に入れるってのを。

あと、ちゃんといつも来てくれる黒コートの常連のおっさんにお水を出してあげる事も。

あとは『呪王』を名乗る、行き遅れにピニャコラーダを出す事も。


後は全部ドラグに丸投げ。

あいつ、いつになったら借金返せるんだろうな?

まだ、六百万近くあるのにな。

あいつは、フレクトリアの最低賃金で働かせてるから、なかなか借金が減らないよ。しかも、時給じゃなくて日給で働かせてるから、マジで借金返せねえってな。因みに日給3チール。

フレクトリアはこんな事が合法だから最高だぜ!

この調子でどれだけ頑張ろうが、あと4000年は掛かる。絶対店潰れるだろうがな!


と、まぁ俺のお財布事情は置いといて、そう考えると馬車でも良いかな?って思った自分がいる。

だが、良く考えるとこの街に馬車らしきものが一つもない事に気付いてしまった。


いや、馬車はあるが、あの、リムサン大陸みたいに、馬車の交通網が発達してる訳では無いみたいだ。


糞。結局徒歩か。


「徒歩で行くとするかの。」


「分かった。」


となれば、少し日が沈みかけているが、さっさと向かおう、船着場へ。

たしか、こっから更に西に行けばある筈。少なくとも、ここの船着場にはヨールパル行きは無い。

不便なものだ。


どうせ、さっきからつけてるハエ共も今日は襲ってこないだろう…………









最悪だ。完全にフラグだったわ。




「囲まれた……」


夜の山道で16人の赤ローブに囲まれた。全員が同じくらいの背丈で、赤いローブについたフードを、深く被っているのでこいつらの表情は見れない。……見る気は全く無いが。


「その格好、F隊ね。何の目的?」


NNがそう言っているので、この赤ローブ集団はF隊と言うらしい。


そのF隊は無言でナイフを構え、今にも襲いかかってきそうだ。


「チッ……破滅魔法。」


NNは詠唱を行い、臨戦態勢に入った。

そう言う俺は、いかにもおじいちゃん、という感じで赤ローブを見つめる。


赤ローブの3人が動いた。

それと同時に、他の赤ローブがそれぞれの、魔法の詠唱を開始。


赤ローブの3人は、俺には全く目もくれず、NNに襲い掛かる。


「水龍!」


俺とNNを囲うように、水の龍が渦になって壁を作る。

駄目だな、これは悪手だ。

まず視界を無くしたのが不味い。俺みたいに、透視ができるならまだ道はあるが、それが出来ない、ましてや数が不利なのに、この魔法を使ったってどういう事だ?


「この中なら安全。」


どうやらNNは、この魔法の防御力に自信があるらしい。だが、そんな事を言うとフラグになるんだぜ?


言ってるそばからナイフが飛んできた。


「なに!?そんな、水龍がF隊にやられる訳が……」


いや、やられたやん。駄目やん、ヘッポコやん。もう……魔眼使えよ。


「NNよ、闇眼を使うのじゃ。」


「どうしてそれを……いや、それよりも、私に闇眼は使えない。」


「何故じゃ?」


もしかして、いや、ありえるな。魔力眼の制御が効かない時点で、分かる事だったが、多分、闇眼に変えられないタイプだ。


「私は、闇眼に切り替える方法を知らない。」


だよな。どうせそうだと思ったよ。

まぁ、今から教えてやるがな。


「眼を閉じ、闇眼になれと念じるのじゃ。」


ちょっとナイフが貫通してくる数が多いので、水龍の内側に魔防壁を張った。


NNは俺の言った通り、眼を閉じ念じてる。たぶん。

本当は、魔法を発動させるように、イメージを持って眼に魔力を流せば変わるのだが……どうせ、その表現しても分かんないだろうからな。


そして、NNがゆっくりと眼を開くとその左眼は真っ黒な眼。奥の見えない暗黒。黒!とにかく黒!白眼なんてない!黒一色だ!


「ふむ、どうやら成功したようじゃな。」


軽い感じでそう告げる。当の本人はその左眼を抑え俺から眼をそらした。


「どうした?」


「見てはダメ。」


何故かと聞くと、この目で檻とかを灰にしたからとか……

うん、それ俺の仕業。その眼はただ、闇属性の魔法が使えるだけだから。

と、そんな事を言っては駄目なので、適当にごまかしておく。


「ふむ、だがそれは物にしか、起こっていないじゃろ?」


「……うん。」


「だったら大丈夫じゃろ。闇眼は闇属性の魔法を使える。とりあえず、奴らにやってみよ。」


「分かった。」


水龍を消しNNが赤ローブを睨んだ。

睨んだその先に闇の球体が現れ、周りのものを吸い取る様に、赤ローブを飲み込んだ。


うっわ、えげつな。


半分程、その眼で殲滅したのに、赤ローブ達は怯みもせず、襲い掛かってきた。


「Fの分際で私に敵うと思うな!!」


振り向きざまに水の刃を放ち、赤ローブの首を刎ねる。俺を人質にでもしようとしたのか、赤ローブの1人が俺に襲いかかったが、NNの水刄によって首を刎ねられる。


「荒れ狂え、水の怒りを……破滅魔法。『アクアニードル』!!」


NNから溢れ出た大量の水が、赤ローブ達の足元に流れ込む。

それは赤ローブ達の足を止め、動きを封じた。


「チェック!エンド!」


その掛け声と共に、水が巨大な針の様に変形し赤ローブ達を貫いた。


うっわ、えげつな。


赤ローブを全員倒した事を確認すると、NNは魔法を解除した。

水の針に突き刺された赤ローブ達は、水が無くなる事により、地面に落下した。その衝撃で赤ローブのフードが取れた。

そして俺は、その異変に気付いた。


「ん?……これは……」


赤ローブ達の顔を、確認していくとそれはまるで……


「同じ顔?」


「そう、これがF隊の正体。」


突然語り出したNNに眼を向ける。


「F隊……いえ、Fの正式名は〈h.c.-006-F.K.〉。旧式のホムンクルスを使った人造人間部隊。既に廃棄されたと聞いてはいたが……まだ、残っていたみたい。」


お……おう……ホムンクルス……此処に来て初めて、ファンタジーを感じないものを見つけてしまった……


だが、待てよ。このh.c.なんとか……略してFって呼ばれてるって事はNNにもなんか正式名があるって事か?


「NN。お主にもあるのか?」


まさにそれは的中した。


「私は〈e.e.-014-02『NN』〉これが私の名前。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ