ある氷の國のお姫様の話
ゆっくり書き勧めます
それは何処かにある小さな國のある娘の話。
彼女は幼い頃から部屋に閉じ込められていました。
両親にも兄姉にも人形のように扱われ幼い心はズタズタに引き裂かれました。
小さな心に氷の花が咲きました。
年月が経ち美しい娘に成長した彼女はその家を出て行きました。
宛があるわけでもなく。
彼女は歩いていきました。
どこまでもまっすぐに。
氷に鎖された小さなお城がありました。
彼女がその氷に触れると城の扉が開き彼女を城に招き入れ扉は固く閉ざされました。
長い間その國は誰かの侵入を許しませんでした。
ある日のこと。
その國に一人の魔女がやって来ました。
魔女は彼女に会いにやって来たのでした。
「氷の國のお姫様にお見せしたいものが御座います。」
そこには双子の少年が立っておりました。
片方は黒髪に紅い目の男の子。
もう片方は金髪に蒼い目の男の子。
「この双子は私の作った子。どちらか片方を貴女様に献上致しましょう。」
彼女は黒髪の少年を選びました。
それから氷の國には徐々に暖かな太陽が差し込むようになりました。
魔女はある時から彼女の前に姿を見せなくなり、その代わり金髪に蒼い目の男の子が姿を見せるようになりました。
二人は二人にしかわからない言語で話をし黒髪の少年はそれを彼女につたえます。
「この城から東に歩いた先にある國のお姫様が床に伏せたままで起きないそうです。魔女はその國に住んでいてお姫様の傍にいるそうです。魔女が貴女に逢いたいと言っているようです。」
彼女は支度を整え、魔女が居るという國の城へ向かいました。
切り立った崖の上にそのお城はありました。
殺風景でまるで無人のように思えるその城はしんと静まりかえっていました。
まるで死んでしまったかのように静かな森と城に息を飲みます。
まるで昔の自分の様な冷たさを彼女は感じ取りました。
よく見ると深い森が城の前まで拡がっていました。
彼女はよく気をつけて森を抜けます。
森には狼や鳥がいるものですがこの森には居ないようです。
「静かね。」
彼女は小さく呟きました。
寂しそうに笑って前を向いて歩きます。
「だって、お姫様が眠ったままなんだもん。」
金髪に蒼い目の少年はようやく口を開きます。
「眠ったまま?いつから?」
「ずっと前から。」
「ずっと前?」
「そう。ずっと前から。でも誰も知らないよ?お姫様の周りの門番はお姫様に逢わせようとしないから。この森の鳥達も動物達も、みんなみんな眠ってるんだ。」
少年は苦笑し彼女を誘導します。
危なくない道を歩いてもらおうと。
門をくぐると塔がありました。
全部で5つ。
その真ん中にお城はあるようでした。
「こんなに広いお城は初めてだわ。」
「貴女のお城も立派だとオレは思うよ?」
「でもこんなに広くないもの。とても素敵だわ。」
彼女は微笑みます。
しばらく歩くと開けた場所に出ました。
一つ目の塔に到着したようです。
そこには一人の青年が座っていたのでした。