1話
我はドラゴンだ。今自分が何歳なのかも忘れてしまうほど生きているドラゴンだ。因みに我らには性別は無い。白銀のしなやかな体躯が美しいドラゴンだ。
そんな我が住んでいる森は、人間に一度入ったら二度と出て来られないとまで言われるほど深い森で、人間に恐れられているのだ。まぁ、我がかつてこの森の資源を狙いにやって来た人間を返り討ちにした事もあるせいだと思うが...
そんな森に人間が倒れていたのだ。朝、森の生き物達が騒がしいと思い近くにいた魔獣に聞いてみると人間がいるからだと答えが返ってきた。追い払えないのか?と返すと追い払う必要も無いほど弱っているらしい。やることもないので倒れていた場所を教えてもらいその倒れている場所まで行ってみたのだが、見るとその人間は地に伏したままぴくりとも動かない。
死んでいるのか...
『ねぇ、主様!主様!助けないの?』
声のした方を見ると人のような姿をした存在が目に入った。いつの間にか精霊も来ていたらしい。
『今どうしようかと悩んでおるのだ。それに助けると言っているが死んでいるのではないか?』
『なに言ってるの?生きてるよー。悩んでいるなら、助けようよ〜』
精霊はそう言って鱗を持って引っ張ってくる
『抜けたらどうするのだ!』
『こんな事で抜けないよ〜』
『まぁ..そうだが...気持ちというものがあるだろう..』
『そんなことより助けないの?』
『そんな事!?』
酷い...。
『はぁ..精霊よこの人間に助けるほどの価値があると思うか?』
『そんなの助けてみないとわからないよ〜』
『.....そうだが』
『むぅ..』
精霊は口を尖らせる仕草をすると我の顔に、ぺたぁと引っ付いてきた。
『ちょっ...何をするのだ!前が見えないではないか!』
『助けないとここから絶対に動かないも〜ん』
何がも〜んだ...。それにしても、張り付かれて前が見えない...困る、が無理やりどかすわけにも行かない。助けるか..いや、だが助けるということは世話をするということだろう。人間の世話などできぬ。やったことない...だが助けないとどけないと言っているし...ううむ、どうするか...
『ねぇ、お願いだよ!お世話するから〜。助けないとー...寝ている間にぜ〜んぶ鱗抜いちゃうからね!』
むむ!?世話をするだと!!良し助けるか!
...いや待て、精霊は飽きやすいからどうせ長くは続かないのでは...?だがしょうがないか...。鱗のためだ...。
『世話をしてくれるのだな?良いだろう!ちゃんと世話をするのだぞ』
『え!?やったー!!これで暇じゃなくなるよ!』
精霊よそれが本音なのだな......
この人間を助けたことから我の日常に少しだけ変化が訪れた.....