表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/215

log70.新たなスキル

 その後、部屋の片隅に存在したワープゲートを使って無事にミッドガルドへと戻ってきた一行はそのままの足でギルドハウスへと向かった。

 闘者組合ギルド・オブ・ファイターズのギルドハウスで待っていたのは、タイガーとカネレの二人。

 カネレはセードーとキキョウの二人が特異属性を開放したと聞いた時も、特に驚いたような様子は見せなかった。


「だ~よね~♪ 二人とも、先のイベントのレアアイテム持ってたし~、そうだと思ってたよ~♪」

「では……レアアイテムには、そう言う効果もあるということですか?」


 バーカウンターでギターを弾くカネレに、ミツキは静かに問いかける。

 カネレは頷きながら、上機嫌で適当な曲を弾き始めた。


「そうだよ~ん♪ 二人の持ってるアイテムに限らず~、レア度の高い属性アイテムは~ランダム属性解放時に、その属性に固定したり偏らせたりする効果があるんだよ~♪ 特にモンスターが変異するなんて設定があるようなアイテムは~、ほぼ百パーセントその属性を開放させる効果があるんだよ~♪」

「そうでしたか……納得いたしました」


 キキョウの持つ妖精竜の髪飾り(フェアリーコーム)妖精竜(フェアリードラゴン)が直接転身したアイテムであり、セードーの持つ夜影竜の紋章(シャドウペイント)夜影竜(シャドウドラゴン)が己の同胞であると認めるためのアイテム……。どちらもそれぞれに特化した属性を持つモンスター由来の逸品だ。さらにレア度自体も相応に高い。

 ランダムと言いつつその確率をある程度操作できるのはいかがなものかとミツキは思ったが、この手のアイテムは本来もっと高レベルになってから入手できるようになる品だ。こういったアイテムを入手できるのもまた運の為せる業……ということにしておこう。


「では、二人がランダム属性解放を選ばなかったら……」

「その時はその時だよ~♪ あくまでランダム属性解放なら特異属性に目覚める、ってだけだからね~♪ 二人が別の属性が欲しいなら、その属性が普通に入手できるよ~♪」

「うむ。数多存在する選択肢の中で、二人が選んだものがたまたまあれだった……という話だよ」


 カウンターの中でシェイカーを振るタイガーはしたり顔でそんなことをのたまうが、ミツキは彼を半目で睨みつける。


「……GMはご存じだったんですよね? ランダム属性解放の特性を……」

「……フフ、どうかな? 私も、このゲームをすべて知っているわけではないのでな」


 タイガーは誤魔化すように笑いながら、ミツキにカクテルを注いでやる。


「彼ら自身に迷いがあるなら、天運に任せるのもまたよし……とは思っていたがね」

「……そうですか。まあ、いいです」


 タイガーから差し出されたカクテルを受け取りながら、ミツキは不満げに呟く。

 納得がいったわけではないが、二人にとってマイナスになったわけではない。むしろプラスというべきだろうか。特異属性は、自ら選んで入手できる属性ではないのだから。

 そんな特異属性を引き当てた二人は、さっそくスキルを取得し、リングの上で試しているところだ。


「………」


 リングの中心で、セードーは瞳を閉じて精神集中を行う。

 それを見守るのはウォルフだ。小さな呼吸を繰り返すセードーを、ウォルフはじっと見つめている。

 やがてセードーはゆっくりと拳を握り、腕を交差させる。


「――オォアッ!!」


 そして気合いを入れるように拳を引く。瞬間、セードーの全身から闇色の波動が現れた。

 セードーの全身を覆う波動は湯気のように立ち上り、彼の体を守っている。

 その波動を見たウォルフは、口笛を吹きながらセードーへと近づいていった。


「それが、〈闇〉属性のスキルの一つ……かいな?」

「うむ。名を五体武装・闇衣」


 セードーは軽く構えを作りながら、ウォルフと正対する。


「効果は闇の波動を纏い、それを武器や防具のように操ることができる……とのことだ」

「ほっほぅ。どれどれ」


 いうが早いか、ウォルフはセードーの顔面に向けて軽いジャブを放つ。

 ウォルフの腕が霞んで見えるほどの速度で放たれたジャブは狙い違わずセードーの顔面に突き進む。

 セードーはそれをかわそうともしない。ウォルフのジャブが、セードーの人中に命中する――。


 カァン!!


 ――その瞬間、打点から響き渡る甲高い金属音。

 ウォルフは驚いて拳を引いた。


「おぉう……なんや金属を叩いたような感触やな」

「スキルLv1の時点だと、闇の波動は鋼の性質を得るらしい」


 身に纏った波動を軽く撫でながら、セードーはクルソルを弄ってスキルブックを呼び出す。


「スキルLvが上がると、波動が徐々にさまざまな性質を得るようになり、最終的には複数の武器を所持しているのと変わらん状態になるらしい。今の状態でも手刀が斬撃効果を得たりするらしいぞ」

「ほーん。便利なもんやなぁ」


 面白そうに頷くウォルフ。

 闇の波動自体が、今後のセードーの武器となるというわけだ。単なる素手よりも戦術の幅は確実に広がるだろう。

 一方のキキョウは、棍を手に軽くジャンプを繰り返していた。靴の調子を確かめるような、そんな軽いジャンプだ。

 そんな彼女を、リングロープに寄りかかりながらサンが眺めている。


「で、キキョウが手に入れたスキルってなんだよ?」

「えーっとですね……」


 キキョウは何度かの跳躍の後。


「……えいっ!」


 気合を入れて強くジャンプを行う。

 その時、鈴の音が鳴るような軽やかな音が響き、キキョウの姿が消える。

 そして一瞬の間に、五メートルほど離れた場所にキキョウの姿が現れた。

 危なげなく着地したキキョウは、サンの方を見て楽しそうに微笑んだ。


「これが私の覚えたスキル、光陰流舞です!」

「ワープ技って奴か」

「はい! スキルLv1だと一回だけですけど、Lvが上がるごとに回数が増えるみたいです」


 キキョウは言いながら、またワープする。

 軽やかな音を立てながら、リングの中を縦横無尽にワープしまわる。


「方向は自由自在で、縦横無尽。ワープ距離の調整も効いて、ワープ中は完全無敵なんだそうです!」

「へー。MPの消費はどうなんだ?」

「結構重めですけど、MP使うスキル持ってませんし!」

「そういやそうだっけ」


 MPが尽きかけ、一旦ワープを停止するキキョウ。

 MPの回復を待ちながらも、楽しそうに笑っていた。


「これすごく楽しいです! 私、空中歩法(エアキック)がなかったから空中での制動が難しかったんですけれど、これのおかげで私も空中戦ができそうです!」

「だな。Lvが上がれば回数も増えるわけだし、空中歩法(エアキック)より応用効きそうだな」

「はい! これからは、ガンガン前に出ていきますよ!」

「今までだってそうだったじゃんか」


 フンスフンスと鼻息も荒いキキョウの姿に、サンは苦笑してみせる。

 そんな二人に、セードー達が声をかけた。


「そっちの慣らしは終わったんかいな?」

「はい! いつでも行けますよ!」

「それでは、軽くスパーといこうか」

「あたしだけ属性解放してねぇんだけど?」

「まあ、付きあえや。明日はいの一で、自分のイベにつきおうたるさかい」

「さあ、サンさん! 私たちのコンビネーションを見せてあげましょう!」

「なんかいつになくやる気じゃん、キキョウ。そんな嬉しかったの?」

「ふむ。では、こちらも遠慮はするまい」


 四人はそのまま、チーム戦の要領で軽いスパーリングを始める。

 セードーは闇の波動を纏い、キキョウは光と共にワープを繰り返す。

 ウォルフは風でサンを吹き飛ばし、サンは気合でウォルフに対抗する。

 四人とも、イベント終了後の疲れを感じさせない、勢いのある動きでスパーリングに臨んでいた。

 ランダム属性解放イベント後だというのに、元気なことである。ゲーム的な体力はないが、精神的な疲れは出てきそうなものだというのに。

 それをぼんやり眺めながら、ミツキは小さくため息を突いた。


「はぁ……元気ね、皆」

「ミツキさ~ん♪ その発言はちょっと老けてない~?♪」

「カネレ」


 余計なことを抜かしたカネレが椅子の上から一回転しバーの床へと叩きつけられる。

 ミツキの凶行を止めようとしたタイガーであったが、忠告自体が遅かったことを悟り、ため息を突きながら椅子に座り直すミツキを窘めた。


「できれば、床は壊さないでくれたまえ。決して安くはないのだからな」

「ええ、すいませんGM。次は気を付けますね」


 そう口にしながらも悪びれた様子のないミツキは、そのままカクテルの残りを口にする。

 床の上で気絶しているように見えるカネレの様子にだれも気が付かぬまま、スパーの方は白熱していった。


「カランカランやかましいわぁ! うろちょろしなぁ!」

「だってワープしないとウォルフさん殴ってくるじゃないですか!?」

「ぬん! ……便利だなこれ」

「ぬがー! あたしの貼山靠が効かねぇとかどうなってんだそれー!?」


 新たなスキルの使い心地を再確認するセードーとキキョウ。そんな二人に翻弄されるウォルフとサン。

 熱くなり、軽いスパーリングであったことも忘れて本気になりだす四人を見て、タイガーは楽しそうに微笑んだ。


「うむ……。若人たちが熱くなり、互いの技を競い高め合う……。良きかな良きかな……」

「下手をすれば、リングも破壊しかねない勢いですけれどね」


 ミシミシと悲鳴を上げ始めるリングを見て呆れたような声を上げるミツキ。

 ゲームの仕様上、よほどのことがない限り壊滅的なダメージが現れることはない……と信じたい。


「チェイリャァァァ!!」

「うりゃぁぁぁぁ!!」

「シャァァァァ!!」

「えぇぇぇぇいぃぃ!!」


 裂帛の気迫と共に繰り返される必殺技の応酬。

 力と力がぶつかり合い、また一段と大きな悲鳴をリングが上げる。


「……大丈夫でしょうか?」

「うむ! 壊れても直せばよい!」

「さっきと言ってること、変わってませんか?」


 呆れたようなミツキの声に、タイガーは無言の笑顔で答える。

 ミツキはため息を突き、全てをあきらめてリング上のスパーリングが終わるのをゆっくりと待つことにした。

 そして十分後。リングは粉と砕け散り、ミツキに正座させられた四人がこってり絞られることとなったという。




なお、リングの修理代は、皆で稼いで返すことになった模様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ