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1話 ベランダに落つるもの

基本的にわたくしめの前書きは毎回適当です


呼吸が可能で、しかも愛想の二文字を知っているという超高性能なお茶くみマシーンとしての仕事(当然ながら嫌味120%の出血大サービス)から帰還、ストッキングがそろそろヤバい事を気にしながら、アパートの鍵を開ける私は27歳女・独身。それ以上でもそれ以下でもない。


力加減に少しばかり気を使いながらバッグを奥に放り投げる。

前に、あまりにも勢いをつけすぎて窓ガラスにヒビが入ってしまったことがあったからだ。

”何故か”腕力だけは一般女性よりストロンガーな私。そんなことが仕事で役に立つわけでもなく、私は相変わらず27歳、女・独身。それ以上でもそれ以下でもない。


そしてその後、着替えを終えた事で名前など飾りに過ぎない一介のOLから、”一応”ちゃんとした名前を持った人間になる。


それからは待望の――というわけではないが、腹は減るものだ――夕食である。


スーパーの弁当にチューハイ一本、合計しても格安なり。


咀嚼する、嗚呼それなりに美味しい、いつも通りの味。だけど明日は給料日だから奮発してもうちょっといいものを食べよう。

どうせなら私のやつにだけおまけでおかず追加されてたらいいのに。

咀嚼する、咀嚼する。

咀嚼して、飲み下す。何度も何度も。

これが私の晩酌。『いつものやつ』である。もはやスーパーのトマトみたいな顔のあのオバさんとは知り合いになってしまった。


そしてこれが、この小ぢんまりとした、庶民的かつ質素な夕御飯が……不愉快極まりない私の世界なのだ。

そこには絢爛豪華なシャンデリアもなければ贅を尽くした料理の類もない。


まぁそれはいい。

だが外見的な不愉快さはともかく、私が不愉快さに不愉快で居るのは、この世界は、私の妥協の果てに生まれた、納得の末の世界ということ。

私は望んで今、この世界の前に正座している。


「はぁ……」ため息なんかをついてみたりする。


「なんでこうなっちゃったんだろうな……『私』。……あ、これ美味し」


私以外知りえない歯がゆさと、ある程度の満腹と、くだらないバラエティ番組を味わっている最中、



事件は起きた。



何やら物騒な音がベランダから響いたのだ。


ベランダには、これといって特筆すべきものはなにもない。園芸趣味なんてあるわけでもない私が、ほんの少しだけ人並みにお洒落なことをしてみようという思いを起こした結果園芸店洒落からやって来た

小さな観葉植物の鉢がひとつ、居心地悪そうに――無造作というわけでもないが、取り分け丁重に扱われている訳でもなく――鎮座しているだけだ。

だから、その時そこで起きたとてつもない轟音、何か『落ちた』としか形容しようのない音に私が大いに驚かされたのは、言うまでもない。


適度な無造作さで散らばるチラシ類と型落ち気味の携帯の充電コードなどにに足をとられ、よろけそうになりつつも、

いかにも年増女にお似合いといったふうな色合いの、ベージュのカーテンを恐る恐る開けてみる――


と。


――本当に、心の底から何かに驚いたり、恐怖した時は、人間、声なんて出ないものだ。

私はその言葉を、目の前の光景と、自分の絶句によって、身を持って理解した。



ベランダに、大柄の年老いた男が、盛大に、大の字になって倒れこんでいたのだ。

短いっすかね

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