ドラゴンの力~テイルの覚醒~
『答えろ人間。何が目的で此処に来たのだ?返答次第では生きては帰さぬぞ』
目の前の巨大なドラゴンは威圧を込めて私達・・・じゃないか。私にそう言った。前に会ったって言う表現が合っているかは分からないけど、水龍の森で会ったドラゴンもだけど、人間はドラゴンに何をしたんだろう?
今は答えないと本当に殺られるんだろうけど気になる。
『答えろ人間!』
さっきよりも威圧を込めた声でまた言われる。
「・・・私は5の街に居る情報士さんに此処の情報を貰って来たの。貴方が居たと言うことは知らなかったけど、何もするつもりは無いよ?」
とりあえず本当のことを言ったけど、信じては貰えないだろうな・・・。言い終わった途端目つきがなんか鋭くなったし。
『本当にそうか?お前達人間は遥か昔にも我々龍族を騙し滅ぼそうとしたでは無いか。忘れたとは言わせんぞ?
――――七色の覇者よ!』
「え・・・?」
どういうこと?
『何を訳が分からないと言った顔をしている?お前は七色の覇者。バルハイト・ズィーデルであろう?確かに姿こそ違うが、その力を偽ることは出来ぬぞ?そして、その剣。それが何よりの証拠だ』
フレイム・ドラゴンが指したのはアルカンだった。余計に訳が分からない・・・私はバルさんも知らないし、ましてやこの世界でそんなことがあったなんて知っている訳が無い。
「・・・・待って。私はバルハイト・ズィーデルなんかじゃ無いよ?私はアカネ・ユキト。七色の覇者なんかでもない・・・それに、龍族を滅ぼす?それなら何で私はテイルと居るの?」
私はテイルを右手で示しながら言った。
『テイル?そこのシャドー・ドラゴンのことか?墜ちたものだな・・・人間如きに名を与えられ、今まで共に居たのか?龍族の誇りをお主は持っておらぬのか?』
フレイム・ドラゴンはテイルに問いかけた。その声には明らかな軽蔑の色が見える。
テイルはフレイム・ドラゴンを睨みその問いに答えた。
「わたしはあかねがすき。だから、いっしょにいる・・・あなたにはかんけいない」
テイル・・・ありがとう。
『下らぬ。人間はまたいつか必ず我等を騙すだろう。どれだけお主がその人間を信じていようと、いつかは裏切られ、見捨て「そんなことない!」・・・何だと?』
テイルはフレイム・ドラゴンの言葉を力強く遮った。
「あかねは、にんげんにおそわれていたわたしを、たすけてくれた。
さいしょはあかねも、そのにんげんたちとおなじだとおもったけど・・・ちがった。
ごはんもわけてくれたし、ねるときはわたしもだいじょうぶなように、けっかいをはってくれた」
初めて会った時のことだ。
私を警戒していて寝る時には距離を置いていて・・・でも、ご飯は強請ってきていた時のテイル。
「あかねのなかまになったとき、あかねはとてもよろこんでくれた。
はじめてまものをたおしたときは、こわさにないていたけど、そのこわさにまけないようにがんばってた。
わたしにもずっとそばにいてほしいって、いってくれた。
うれしかった。
こんなわたしでも、あかねをささえることができるんだって、おもえて・・・」
仲間になって、2の街で依頼を受けて水龍の森でドラゴンと会話した後、トライ・サーペントを倒して、その時の斬った感触が怖くて私はお風呂でテイルを抱き締めながら泣いて、ベッドでテイルに『ずっと一緒にいてね?』と頼んだ。
私も嬉しいよ?そんな風に想ってくれていることが分かって・・・。
「それからずっと、わたしはあかねといっしょにいた。
いろんなところをまわった。わたしはおおきくなって、あかねにかかえてもらうことはできなくなってざんねんだったけど、たのしかった。
れんどきあでは、らむねをまもるためにじぶんのてをよごした」
つい最近のことだ。ラムネちゃんを守る立場に有りながら命を狙っていた団長と団長に頼まれてラムネちゃんを暗殺しようと居ていた、7人。
その7人と団長を殺した翌日、ラムネちゃんが来て部屋に呼ばれお礼を言われて、一緒に行きたいと言ってくれたこと。
「そうだよ?アカネは何の関係も無いわたしの為に手を汚してくれた。貴方ならわたしが誰か分かるよね?気高き龍族の一体。フレイム・ドラゴン」
そこでラムネちゃんが入ってきて、フレイム・ドラゴンにそう言った。心なしか怒っている様な気がする。手にはいつの間に出したのか、武器の鎌。
『魔王・ラムネ・ル・レンドキアか。置物とは仮にも魔王までもが、そんな小娘と共に居るとはな』
「アカネを侮辱するなら、誰であろうと許さない」
「わたしだってそうだよ?あかねはほかのにんげんとはちがう」
ラムネちゃんもテイルも魔力を解放して、攻撃の態勢に入った。
『我と戦うつもりか?』
「「・・・・・・・・」」
2人は沈黙でそれに応え、フレイム・ドラゴンも肯定と受け取ったのか魔力を解放する。
その途端フレイム・ドラゴンの体が真紅の炎に包まれ、周りの岩が溶け出した。私たちが立っている場所が無事なのはまだ抑えているからだと思う。この程度が本気の訳がない。
『いいだろう・・・掛かってこい!完膚無きまでに叩き潰してくれるぞ!シャドー・ドラゴン!レンドキアの魔王よ!』
言うと同時にテイルとは比べものにならない大きさの炎の玉を繰り出した。
「展開!」
バヂ!
慌てて結界を張って、玉と結界はぶつかり一瞬の拮抗の後、何とかずらすことが出来たけど、暫くして後方で爆発が起きた。
「ハア・・・ハア・・・」
威力が違いすぎる。これでも、今までで一番強力な結界だったのに・・・それで、ずらすのが精一杯だなんて・・・。
「アカネ!大丈夫!」
「ハァ・・・うん、なん・・・とか、ね?」
『ほう・・・防いだか?やはり七色の覇者は伊達ではないな?』
「・・・・だから、私は七色の覇者なんかじゃない!アカネ・ユキトだって言ってるでしょ!テイル!ラムネちゃん!アルカン!本気で行くよ!出し惜しみは無し!」
「「うん!」」
腰からアルカンを抜き構える。今の刀身の光は青。気休め程度にしかならないかも知れないけど、火には水で対抗するしか無い。
「テイルは空中から攻めて!ラムネちゃん、自分の空間に入ることは出来る?」
テイルはすぐに飛びフレイム・ドラゴンの後ろに行く。
「出来るよ!それで攻撃すればいいんだね?」
「うん!お願い!私は出来るだけ注意を引きつけて戦う!」
ラムネちゃんは頷き空間に入る。
『そんなことで我に勝てると思っているのか?』
「何もせずに殺られるよりはましだよ!ハッ!」
跳んで水を剣から放つ。フレイム・ドラゴンは上空に飛んで躱し、それをテイルが追いかけるけど、力が違いすぎるのか全く追いつけずに居る。そして後ろを取っている筈のテイルが後ろを取られ、フレイム・ドラゴンの爪がテイルに当たりそうになったのをまた私が水を飛ばして妨害する。何とか間に合ったけど、この位置じゃ当たらない。
「テイル!」
呼んで戻ってきたテイルに跨り空中戦に突入する。
「余り無理に追ったら駄目だよ?悔しいけど、今のテイルはあいつの速さには着いていけない」
「うん。わかってる」
『只さえ我の速さに着いてこれぬ者が、荷物を乗せた状態でまともに戦える訳が無かろう!』
フレイム・ドラゴンがさっきよりも大きな炎の玉を吐いてくる。
「だから、その分を私がカバーする!」
それにまた水をぶつけるけど、悉く砕かれ迫ってくる。
当たりそうになった瞬間周りが暗くなり、玉も消えた。
「アカネ」
「あ、ラムネちゃん。ありがとう、助けてくれて」
「ううん。それよりも、あいつにはわたしの攻撃が通らなかった。潜んで何度か攻撃したけど、傷ひとつ付かない」
はっきり言って・・・勝ち目がないのは分かってた。いくら私の魔力が無限で最強の肉体なんて持っていても、まだこの世界に来て1年しか経っていない。その期間で完全に使いこなすことが出来ていないことも、テイルも今の力じゃ対抗出来ないことも、十分分かってる。
分かってるけど・・・。
「あかね。かおをあげて?」
「テイル?」
「あきらめたらおわりだよ?わたしたちならできるよ。がんばろう!」
「そうだよ?攻撃が通じないとは言っても手段が何も無い訳じゃない」
「・・・・そうだね。頑張ろう!2人とも!」
「「うん!」」
3人で頷き合い、アルカンも輝きが強くなった。
その瞬間。
『ガアアアアアアアア!!』
フレイム・ドラゴンの咆吼が聞こえ私たちの居る空間に亀裂が入った。そして更にフレイム・ドラゴンが咆吼を上げ、空間が完全に崩壊する。
「ラムネちゃん!乗って!」
空間が割れ空中に投げ出されたラムネちゃんの手を掴み後ろに乗せる。
「アカネ、テイル!後ろ!」
「「え?」」
『遅い!』
振り向いた時には既にフレイム・ドラゴンが腕を振り上げていた。
ドゴ!
「ガッ!」
攻撃がテイルに命中しさっきまで立っていた場所に3人とも飛ばされて叩き付けられ、数メートル地面を削りやっと止まった。
「・・・う・・・あか・・・・ね・・・らむ・・・・ね。だい・・・じょうぶ?」
「う・・てい・・・る。あ!テイル、血が!早く治さないと!ぐ・・・」
攻撃をもろに受けたテイルは横腹から出血していた。大量の血が今も流れていてこのままじゃ命に関わる程の量だ。急いで治療をしようとするけど、私にもダメージがあり思うように動けない。ラムネちゃんは気を失っている。幸い酷い怪我はしていなかったけど、顔や腕の所々に傷がある。
『フン!その程度の力でよく我と戦おうなどと思ったものだな?』
フレイム・ドラゴンが私たちの数メートル先に降り立ち、そう言ってきた。
『さて、これで終わりにしてやるぞ?七色の覇者よ』
周りの岩がさっきよりも遙かに早い速度で溶け出し、溶岩の様になっていく。熱気は私たちどころかこの谷全体に届きそうな程だ。このままだと攻撃が来る前にこの熱さでやられてしまうかも知れない。
宣言した通りこの攻撃で終わりにするつもりなのだろう。
10メートルは悠に超える大きさの炎の玉が形成された。
「あん・・・なの・・・・ふせげる・・・わけ・・・・ない・・」
「ううん。防いで見せる。テイルとラムネちゃんは絶対に私が守る」
体に鞭を打って立ち上がり、テイル達の前に出て魔力を全開にして、アルカンを構える。刀身は更に強く輝き、5メートル程の水の刀が形成される。蒸発してしまうなら逆に打ち消すだけの魔力で対抗するだけだ。
『喰らうがいい!』
巨大な炎がこちらに向かってくる。
「アルカン!」
ガッ!
振り上げて渾身の力を込めて炎に向けて振り下ろしたアルカンと炎がぶつかる。
「アアアアアアアアアア!!!」
『その程度で防げる訳が無かろう!大人しく燃え尽きるのだ!』
「絶対に・・・防いで見せる!!アルカン!!」
ガァ!
「いっけええええええええ!!」
ドガアアアアアアアン!!
大爆発が起き炎も水も互いに打ち消し合った。私はその爆発で吹っ飛ばされてテイルにギリギリの所で受け止められて、何とか無事だったけど、フレイム・ドラゴンは全くと言っていい程無傷で同じ場所に立っている。
「そ・・・んな・・・・」
『まさか本当に防ぐとはな・・・お前は一体何者なのだ?』
ゆっくりとこちらに近づいて来ながらそう問い掛けてくるフレイム・ドラゴン。
「さっき・・・も・・・言った・・・で・・しょ?私・・は・・・・アカネ・・・・ユキト・・・よ」
もう本当に立てない。喋るのもそろそろ限界だ。
『そうか。お前をこのまま生かしておくのは危険だ。確実に息の根を止めるとしよう』
私はフレイム・ドラゴンに右手で掴まれた。握りつぶすつもりかと思ったがどうやら、爪で刺し殺そうとしているみたいだ。
「やめ・・・ろ・・・・」
『諦めろ。シャドー・ドラゴンの仔よ・・・元々我等龍族と人間は相容れぬ存在。お主にはお主の居場所がある。ここでは無い。それだけのことだ』
「ちが・・う。わたし・・・・の・・いばしょは・・・・あかねとらむねの・・・・となり・・・それ・・いがいは・・・ない!」
『・・・まだ立つか?シャドー・ドラゴンの仔よ。何故そこまでこの娘に拘る?我等の寿命に比べれば人間などすぐに死んでしまうのだぞ?そこの魔王とて同じだ。そうなれば何れお主は孤独になる』
それは私が恐れていたことでもあった。
いつか私が死んだらテイルは1人ぼっちになってしまう。
分かっていた。永遠に側に居ることなんて出来ないことは・・・。
それでも・・・それでも、私は・・・。
「それでも、わたしはあかねとらむねがすきなんだ!だから、おまえなんかにころさせはしない!」
『やはり、この娘は危険だ。早々に息の根を止めさせて貰う!』
フレイム・ドラゴンが左手を振り上げた。
「止めろおおおおおおお!!」
ゴア!
『む!』
テイルが叫ぶと同時に強大な魔力が溢れ出したのを感じた。
なんとか首を後ろに向けて、見ると黒炎がテイルの体を包み込んでいた。
次の瞬間、黒炎に包まれたテイルがフレイム・ドラゴンの私を掴んでいる方の腕に飛び出して、助けてくれた。
『グゥ!何だ、これは!』
フレイム・ドラゴンの腕は燃えていた。
テイルの黒い炎によって。
テイルを包んでいる黒炎は段々大きくなっていき、私を包んでいるテイルの手も大きくなっていた。
バサッとさっきまでよりも遙かに大きくなった翼の羽ばたきによって黒炎が晴れた時、姿を現したのは
「アカネ。もう大丈夫だよ?」
―――――大きくなったテイルだった。
フレイム・ドラゴンの元まで戻りテイルはラムネちゃんを左手に乗せる。まだ気を失っているけど、ちゃんと息はあるの確認して私は安心した。
『お主、何だ、その姿は?』
テイルと向き合う形になったフレイム・ドラゴンがそう問いかけた。
「驚く必要があるの?貴方と同じ成体になっただけだよ?」
『そんなことは分かっている!我が聞いているのは、何故いきなり成体になったのかということだ!』
そう、テイルは成体になった。どうしてなのかは、私だって分からない。今まで余り成長しなかったテイルが、一気に成長したんだから・・・。3メートル程だった体はフレイム・ドラゴンよりもほんの4~5メートルしか差が無い程まで大きくなった。
「そんなのワタシだって分からない。でもこれで、アカネとラムネを守ることが出来る!」
「テイル・・・」
「アカネは休んでて?今まで守って貰った分、今度はワタシが2人を守るから」
テイルは近くの岩場に私とラムネちゃんを降ろした。その時、黒い炎が私たちの周りを囲んだけど、熱を感じない、不思議な炎だった。問いかけようと思いテイルを見ると
「その炎は2人を守ってくれるから、安心して?」
と優しく言ってくれた。
「ありがとう、テイル」
テイルは微笑んでフレイム・ドラゴンとまた向き合った。
「決着、付けようか」
『そうだな・・・』
「アカネ、応援してくれる?ワタシがこいつに勝てるように」
背中を向けたままテイルはそう言った。
「当たり前だよ。頑張れ、テイル。早く終わらせて私たちの家に帰ろう?」
「もちろん!」
そして2体のドラゴンはどちらからともなく飛び上がり、止まった所で
「『――――――ガアアアアアアアアアアァァァアアアア!!!』」
ドガアアァ!
咆吼を上げて激突した。




