神殿~七色の剣~
「ここだね……何か分かるといいけど」
街を出てから二時間程歩いて辿り着いた神殿は、以前に見た神殿と同じような外観をしていた。地下だから分からないけどやっぱりこの神殿も、上に行くとしたら五分も掛からないと思う。今回調べるのは地下だけど、先に上に行くか、下に行くか……。
「今回はどっちから行く?」
「うえ」
「分かった。それじゃ、行こう」
中に入り観察して、まず目に入ったのは螺旋階段。これは同じみたいだ。またテイルに乗せて貰って、上にいくと、こっちはすぐに着いた。
そこにあったのは三つの部屋に通じる扉。
正面の部屋に入ると、以前の所と殆ど同じような部屋だった。でも、今回は机の上にノートが置いてある。それを待っているテイルの所に持って行き、一緒に中を確認する。
白。
ノートは、また何も書かれていなかった。どのページを見てみても結果は同じ。
鞄に仕舞って他の部屋も確認する。
右の部屋には何も無かった。
左の部屋には一振りの剣が中央に刺さっていた。刀身は蒼く輝いており、どれだけの時間この場に有ったのかは分からないけど、錆も刃毀れも無かった。
テイルに、念の為準備をして置いてと頼みその剣に近づく。そして、私と剣の距離が零になった時、刀身の輝きが蒼から七色に変わった。でもその中には、黒と白も混じってる。
「あかね……」
「今の所は大丈夫だよ、テイル。もう少し待ってて?」
「うん」
心配してくれるテイルにそう言って剣を手に取ると、その瞬間何かが体を駆け抜けた。それが何だったのかは全く分からない。それくらい一瞬のこと。でも、嫌な感じはしなかったから、問題はないと思う。 何かの力を秘めてるのは明らかだから、一応持って帰って、ラムネちゃんに見せてみようかな……? この国の領内にあるから、何か知ってるかも知れないし。
剣を鞄に入れていた布で包んで抱え、テイルに乗せて貰い、今度はそのまま下に向かっていく。
「やっぱり、ここも同じだね? いくら降りても辿り着かない」
「うん。へんなかんじ」
下り初めて、そろそろ三十分。いつまで経っても下には着かない。
地下だから、深くしようと思えばどれだけでも出来るかも知れないけど、幾ら何でも深すぎる。いっそのこと、飛び降りた方が良いかも。
「テイル、飛ぶ力は残ってる? 私も補助するから」
「だいじょうぶ。なにをするの?」
「一気に下まで飛んで、床が見えてきたら私の風で勢いを殺す。それでも着かなかったら、また調べてみよう?」
「うん。……いつでもいいよ」
「それじゃ――――お願い。テイル」
「わかった。しっかりつかまっててっ!」
階段から跳び翼を広げ勢いよく落下していく。風の音で、どれだけ早く落ちているのかも分かる。
それでも、十数分以上落下していっても、床は見えて来ない。
ただ、段々先の空間が歪んでいるような感じがした。テイルに止まって貰い、ゆっくりとそこに近づくと、そこはパリパリと小さな音を立て続けていた。
「何だろう、これ……テイル、分かる?」
「たぶん、くうかんをしゃだん、するもの。これがあるかぎり、したにはいけない」
「じゃあ、やっぱりここは魔法が関係してるんだ。取りあえずこれをどうにかしないと……少し魔法をぶつけてみよう。テイル、少し離れて」
「うん」
少し上に移動して、念の為に結界を張り、中から火を放つ。その火は歪んだ空間に向かい、そこに到達した瞬間姿を消し、私達に飛んできた。結界に当たりバヂリと音を立て、火は霧散した。
良かった、結界を張ってて。
でも、魔法による破壊が出来ないなら、今の私じゃ何も出来ない。
次はテイルにやって貰ったけど、黒い炎はやっぱり返ってきた。また結界に当たり音を立てる。
「どうしよう?」
「…………さっきのけんは? なにかできるかも」
「あ、そっか。やってみよう。テイル、しっかりキャッチしてね?」
「まかせて」
「ありがと」
もう少し離れて貰って、剣を包んでいた布を解いて右手に構え、テイルの上から飛び降り歪みに向かって振り下ろす。
歪みに触れた瞬間、刀身が一際強く輝きを放ち、確かに何かを斬った感触があった。テイルにキャッチして貰って、また背中に乗る。そのまま下に向かっていくと、すぐに下が見えてきた。着くギリギリまで落下して貰って、直前で風を使って勢いを殺す。
「この剣、何なのかな?」
「わからないけど、それのおかげでたすかった」
「そうだね。さて、早速調べてみようか」
「でも、あかね。ここ、まえのところとおなじにおいがする」
「てことは繋がってたんだね。それが、さっき切った歪みの所為で断たれていた。まずは下を確認してみよう」
下に降りて、正面の扉に入り中を確認する。そこは確かに、以前見た部屋だった。外に出て上に行き、今度は外を確認すると、周りは森。
「こんなに遠い場所を繋ぐなんて……こんなこと、誰がしたんだろう?」
「わからない。でも、これでいどうが、はやくできるようになった」
「ん~……それもそうだね。戻ろうか。歪みが無くなった今なら、すぐに帰れるだろうから」
「うん」
中に戻り螺旋階段を上がっていくと、下にいくよりは時間が掛かったけど、すぐに着いた。念の為、上に登り左の部屋に入り床を確認すると、確かに剣が刺さっていた穴があったから間違いない。
結論、二つの神殿は繋がっていた。
誰がどういった目的でやったのかは分からないけど、それが分かっただけでもよかった。
「帰ろうか……そろそろお腹が空いたでしょ?」
「うん。おにくがたべたい」
「ふふ。いいよ、沢山食べて。でも、食べ過ぎたら駄目だよ?」
「わかった」
その日テイルは、記録更新とも言える量の肉を平らげた。
本当に食べ過ぎたら駄目だよ?
可愛いけど。