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五つの力

「さて、君は何を望む? 五つ位なら、望む力を与えることができるけど?」

 目の前に居る白髪碧眼で白い服で身を包んだ自称神がそんなことを言ってきた。

 さて、とりあえず自己紹介。

 私は雪兎茜ゆきとあかね。どこにでも居るような普通の女子高生。髪も目も生粋の日本人だから勿論黒い。髪の長さは腰くらいで、身長は165㎝体重は48㎏くらいかな……バストとかは覚えてない。

 何故そんな私がこの自称神とこうして話しているかと言うと典型的で、単に事故に巻き込まれて目が覚めたらこの白い空間にいたから。そんでもっていきなり、君は死んだって言われて、私が、そうだろうね……で、あなた誰、と聞くと受入が早すぎると言われたけど、あの衝撃で生きている方が可笑しい。

 いや、ホント凄かった、あの衝撃は……あんなに痛いものだったんだね。多分現場には私の内蔵やら肉片やらが飛び散っていると思う。

 その後、自称神が私をここに連れてきた理由を言っていた。その理由がまた何とも下らない物。私は小さい頃から人間と言う生き物が嫌いで、自分で言うのもなんだけど、生き甲斐のない一生を送った。

 そんな私を哀れんで、この自称神は私をここに連れてきたらしい。

 ついでに補足しておくと、私に親は居ない。小学校を卒業して中学に入るまでの春休みの間に、仕事で海外に行っていた両親が飛行機事故で死んだ。どんな仕事だったかは別段興味が無くて、聞いたこと無かったから分からない。取りあえず葬式をして、遺産は私が受け継ぎそれからは家で一人暮らし。両親は死んだけど、何故か私は悲しみを感じなかった。葬式の場でも涙を流さない私を、親戚達はまだ理解出来てないからと言っていた。

 そんな訳が無い。ちゃんと理解してる。

 ま、その時はとっくに人間嫌いになっていたから、気を遣う親戚達もすぐに追い返した。

 邪魔で目障りだし……。

 それから中学校に入学。特に何もせず三年間が過ぎて、普通に高校へ行って、また何もせず生活していて……今日帰る時、事故に巻き込まれた。

 以上。あ、年齢は17。

「何を望むって言われても……そもそも、あなたは私をどうしたいの?」

「異世界で、第二の生を送ってもらいたい。流石に、一度死んだ人間が同じ世界で生きているとなれば、周囲の者は騒ぐだろう?」

「そりゃあ……あぁ、確かにそれなら異世界の方がいいか……」

「本当受け入れるのが早いね、君は。こちらとしては助かるんだけど……それで決まったかい?」

「その世界には、魔法なんかも有るの?」

 これから行く世界がどんな所なのかによって、望む力は変わる。魔法が存在しない世界でそんな物使ったら、それこそ騒ぎになる……そんなへまはしたくない。

「ああ、勿論存在する。魔物だってね……それから、人間以外の種族、エルフやドワーフ、妖精族に獣人族なんかも。あと、魔物とは違って知能を持つ魔族に、それらを束ねる魔王。君はその魔王を倒す勇者として召喚されることになるけど、別に魔王を倒すなんてことはしなくていい。その世界の魔王は、ただ恥ずかしがり屋なだけで、根はとても優しいから」

「それで魔王が務まるってことは、そんだけ強くてみんなから好かれてるってことか……うん、決まった。まず一つ目だけど、いい?」

「ああ、出来る範囲なら、なんでも与えることができるからね。ああ、でも言語を理解することは、おまけでちゃんと出来るようにしておくよ。書いたりすることも、問題なく出来るように」

「ありがと……それじゃ、一つ目。〝記憶を操る力〟が欲しい」

 自分が勇者として召喚されなら、間違いなく召喚した人間達は、私に魔王を倒してくれと懇願して来る筈。この自称神はそんなことはしなくてもいいと言ったけど、それでその人間達が納得する訳が無い。だったら、記憶を操作してそのことを忘れさせればいい。

「分かった。残り四つは?」

「〝無限の魔力〟と〝完全な隠蔽の力〟」

 この二つは、簡単に言えば誰にも負けないと言うこと。魔法が存在するなら、魔力の大きな人間は色々と厄介なことを頼まれたりするかも知れない。そんなのは願い下げだから、それを誰にも分からないように完全に隠蔽する。そうすれば、厄介なことに巻き込まれることは、あまりないだろうし。

「残り二つ」

「〝最強の肉体〟と、最後に――〝あなたと自由に会話出来る力〟」

 魔法による攻撃は、魔法でしか防ぐことは出来ないかも知れないけど、もし、いきなり仕掛けられた時、反応出来る自信は無い。寝ている時なんかは尚更。

 その辺はそのうち、勘とか身に付けばなんとなると思うけど、傷つかない体があった方が楽だ。

 最後の力は、分からないことがあったらその都度聞きたいから。神なら人間じゃないだろうから、別に何とも思わないし。

「え、どうして……君は人間が嫌いなんだろ? それは、僕にも当て嵌まるんじゃないのかい?」

「神を人間だなんて思わないよ。だから別に、なんとも思ってない……それとも、あなたも嘘を吐いたりするの?」

「まさか……でも、本当にいいのかい? 一度与えた力は、変更できないよ?」

「大丈夫だよ」

「……分かった。話たいことがあったら、念じてくれればいつでも対応出来る様にしておく。こちらも色々と仕事はあるが、君は特別ということにするよ。――それじゃ準備はいいかい?」

「うん」

「よし。それじゃ、茜、頑張ってね」

「いや。頑張るのは、疲れるから」

「はは、そうだね……じゃ、気楽にね。行ってらっしゃい」

 神が手を翳すと光が放たれ、それが私を包み込み次第に眠くなっていった。

 この空間で最後に見たのは、優しい眼差しで私を見送る神だった。

 そんな神に、いってきますと言おうとしたけど、眠気のせいであまり口が動かせず声が出なかったから、心の中で言った。


 ――――いってきます。


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