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スキンシップ

作者: 朝雛みか

〜短編集1作目〜

書いたのは最近だけど、気に入ってるんで最初にもってきました^^

「おはよう」のハイタッチ。




これが俺とアイツの小学生からの習慣だった。


なんでハイタッチなのかはわからないが、俺ん家がアイツの通学路の途中にあるってことと、親同士が仲いいってだけで、朝になるといっつも俺ん家の前でアイツが待ってて、俺が家を出るなり




「おはよう!てるチ。」




と叫んで手を挙げる。俺は面倒くさそうに、でも照れくさそうにアイツの手に右手を弾くように重ねて、「おはよう」、とボソッと呟くように言った。






俺の名前は小川輝彦(オガワ テルヒコ)


てるチ、っていうのはあだ名でこんな呼び方すんのは多分アイツだけ。


んでもってアイツっていうのが、桐谷百花(キリタニ モモカ)


俺もアイツも同じ高校に通ってて、もう高1の3月を迎えていた。




小学校あがってからと云うもの、アイツ、、百花は毎朝俺ん家の前にいる。


高校に入って学校までは電車を使うようになって、駅までが百花ん家より俺ん家のが遠くなった今でも、百花は毎朝俺の家の前にいる。




そして今日もまた、、




「おはよう!てるチ。」「おはよう」




ハイタッチをするんだ。




周りからは付き合ってるって言われたりするけど、付き合ってない。




ただ、最近、こうなんだか愛しく感じることが増えた。


ハイタッチが物足りなく思う日が増えた。




だから、次の日、ハイタッチのために挙げられた手を咄嗟に掴んでしまった。


自分でも何であんなことしたのか驚きだ。


2人とも気まずくなって、学校では顔を合わせられなかった。




でも、俺は自分に言い聞かせるように思ったんだ。




――ハイタッチに飽きて、ついやっただけで、ただのスキンシップだ。―――




そうとしか考えられなかった。じゃなきゃ、俺が百花に恋して、、いやそんな訳ない。まして百花が俺を好きな訳ない。


だから、そんなんじゃない。ただのスキンシップだ。




次の日も、やっぱり俺ん家の前には百花がいた。




「おはよう!てるチ。」




また今日も手を挙げ、俺は昨日のことを無かったことにして、いつも通りのハイタッチをしようとすると、百花は少し照れたように、




「昨日のが、、いいな。」




なんて言ってきた。俺は恥ずかしくていつも通りのハイタッチをした。


すると今度は拗ねちゃって、今日は一言も口をきいてくれなかった。




次の日の百花は「おはよう」も何も言わずに、俺ん家の前に立っていた。


俺はちょっと寂しくなって、


「おはよう」


と言うと同時に百花の手を握った。当然下にある手を。


そしたら、百花は笑って「おはよう」と言って、俺の手を握りかえした。


どうやら機嫌が戻ったようだ。でも、俺達はすぐに手を離した。


だってこれはスキンシップだから。一種の愛情、いや友情表現なんだから、ずっと手を握ってるのはおかしいでしょ?




でも、機嫌が直ってよかった。明日はどうしようかな?




すぐ次の朝がきた。


今日も百花は右手を挙げて、「おはよう」を言う。




俺は迷ったけど、手を挙げずにハグをした。


一瞬だけだ。だってスキンシップだから、他意はない。




いや、本当に他意はないと言い切れない。この気持ちはなんだ?


今日は、幼なじみとしての友情以外の気持ちが、自分に芽生えていることに、少しだけ気付いた。




次の朝、百花は両手を広げていた。ハグを待つように。


俺はおもいっきし抱きついた。




「おはよう、百花。」




おはようのスキンシップで、百花の名前を呼んだのは初めてだった。自分でも、口から出た言葉に驚いた。百花も言うまでもない。


抱きついてから、何秒がたっただろう。


百花は一向に離れようとしない。俺も、離れる気がしなかった。




あ、でも学校いかなきゃ。って思い、ふと口から


「学校」


という言葉だけが漏れた。




――俺にとっても百花にとっても、このハグだってスキンシップだ。朝の挨拶の一部だから。―――




そんなこと考えながら、一日中過ごしてたら、なんだか少し寂しくなった。




次の日、また両手を広げて


「おはよう!てるチ。」


と言う百花に、驚かしてやろうと、アイツの左の頬にキスをした。当然、スキンシップのつもりだった。


のに、、、


百花の顔はみるみる赤くなっていった。


俺は、さすがにやりすぎたと後悔した。わかってたハズだった。どうなるかぐらい。でも、スキンシップってことにすればなんでも出来るって錯覚していた。




その日の放課後は、久々に一緒に帰ることになって、百花の方から話し始めた。




「てるチ、ってさ。ウチのこと好き?」




「好きだよ。友達として。」




「へぇ。じゃあ朝のは何?」




「スキンシップだよ。幼なじみとしての、朝の挨拶。」




嘘だ。ここまできたら、さすがの俺でも気付いた。スキンシップなんかじゃない。好きなんだコイツが。友達としてじゃなく、ひとりの人として。




「じゃあさ、、」




ちゅっ




俺の口に、柔らかいものが当たった気がする。




「これもスキンシップね。」




「え?」


俺が驚きと動揺を隠せないでいると、百花はイタズラの成功した子供のような笑みで




「バイバイのチュー」




と言って、手を振りその場を去っていった。


帰る百花をみて、独りたたずみ思ったのは




――あぁ、やっぱ、チューだったんだ。


あ、ファーストキスだ。―――




なんてね。


俺は抜け殻みたいに、その場に立ち尽くしていた。




アイツはなんでキスなんてしたんだろう?俺を見て遊んでいるのだろうか。


それとも、俺を、、、。それはないか。


俺はトボトボと歩いて、帰路をあとにした。






次の日。初めて百花がウチの前にいなかった。


学校を探してもいない。メェルの返事もなければ、電話もでない。


俺は放課後、とうとうイライラして急いで百花ん家に来ていた。




インターホンからはもう聞き慣れたおばちゃんの声。




「おばちゃん。輝彦だけど、百花いる?」




「なんか、バカは風邪ひかないっていうのに、あの子高熱だしてね。」




「え?大丈夫なんすか?ちょっと会えますか?」




「あぁ、いいわよ。あがって。」






ソッコー、百花の部屋へと向かう。


ベッドで顔を赤く染めて眠っている百花を見つけた。


――なんか、、エロい。―――




「百花、大丈夫か?」




と言いながら、髪を触った。


すると、百花は目を開けて




「あれ?てるチ。どうしたの?」




と言った。


俺は思わず、百花を抱きしめた。




「てるチ。なに?」




「おはようのスキンシップ。」




ちょっと涙声になってるのは2人の心の中にしまって、、




「そっか。またスキンシップか。」




と百花が悲しそうに呟く。そして続ける。




「今日ね、ウチ病気で休んだの。まさかてるチが来てくれるとは思わなかったけど。」




「うん、でも来た。」




「ウチ、初めて病気で学校休んだ。」




「うん。」




「なんて病気か知りたい?」




「うん、なに?」




「あのね。恋煩いっていうの。」




「恋わずら‥い?」




「うん。てるチ全然気付いてくれなかった。」




「なにを?」




「はぁ。まだわかんないかなぁ。ウチは、てるチが好きなの。」






ここで、初めて俺からキスをした。




「俺も好きだ。」




不意をつかれて赤くなった百花は




「今のは?」




「よ‥よろしくのチュー」




「またスキンシップ?」


と言って、まだわかってない、と言いたげな顔をした。




「これからは恋人としてのスキンシップだ。」




「ふーん…。それなら許す。」




とか言って、人生で三回目のキスをかわした。






スキンシップの意味が大きく変わったような気がした、今日は3月も下旬。




春の風が、季節を変える警鐘を鳴らし始める頃だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんて、甘酸っぱいストーリーなんだ……。 でもなんだか読んでいるうちに、気分が明るくなったのでOKです!(笑) なんかこの読後感・むず痒さは一体何なんでしょう……。 それはそうと、ストーリー…
2011/02/15 00:00 退会済み
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