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The Best Youth 〜君と一緒に〜  作者: ダークキング


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11/25

The Best Youth 〜動き出す夏〜

「ついに夏休みか」

思わず空を見上げる。

夏の陽射しが肌に突き刺さる。

テストも終わった。あとは――

「通知簿に赤い点がなかったら、ね」

現実を突きつけられる。

「そうだね」

「あったら夏休み消えるからな」

一気に現実に引き戻された。

「光ちゃんは大丈夫じゃないの?」

「……期末はちょっと微妙かも」

正直に答えると、

「私も……」

麻衣子も小さく続く。

「だから普段からコツコツやらないとダメなんだよ」

直美の正論が刺さる。

「それを言われたら終わりだって」

「うん、終わりだね」

容赦がない。

「それに、授業ちゃんと聞くのも大事だよ。テストに出るとこ言ってくれることもあるし」

「そ、そんなのあるのか?」

「ちゃんと聞いてない証拠だね、お兄ちゃん」

「っ!?」

振り向くと、いつの間にか可織がいた。

「お前、ほんとに気配ないな……」

「普通に歩いてただけだけど?」

涼しい顔で言い返される。

「先生ってね、意外とヒント出してるんだよ? 聞いてない方が悪いの」

「あ、ああ……以後気をつけます」

完全に正論だった。

「じゃあ私、七海と約束あるから先行くね」

「ああ、気をつけろよ」

「分かってる」

軽く手を振って、可織は去っていく。

その背中を見送りながら、

「……ほんと仲いいよね、二人」

麻衣子がぽつり。

「そうか?」

「光ちゃん、完全に頭上がってないもん」

「師弟関係みたい」

「やめろ」

否定しきれないのが悔しい。

「でも、いいお兄ちゃんだよね」

「そうそう」

「……うるさいな」

「照れてる?」

「照れてねえ」

笑いが起きる。

「ほら、そんなことしてると遅刻するよ」

「え、もうそんな時間か?」

時計を見る。

「ほんとだ、やばい」

「いつも余裕あるのにね」

「話しながらゆっくり歩いてるからだろ」

「たまに止まるし」

「それな」

くだらないやり取りをしながらも、足は少し速くなる。

「……ま、とりあえず夏休みがあればそれでいい」

「そうだね」

「なかったら遊べないもんね」

「いや、どっちにしても宿題はあるけどな」

「……それは聞きたくなかった」

一瞬、空気が沈む。

「まあ、宿題ないのも問題だけどな」

「それもそうだけど……」

――できれば、少ない方がいい。

キーンコーンカーンコーン

「あ、予鈴!」

「やば、走るぞ!」

「待ってよ!」

一斉に駆け出す。

――あとは結果次第。

夏休みか、補習か。

どっちに転ぶかは、まだ分からない。


「やっと終わったな」

「そうだね」

「明日から夏休みだね」

期末テストも終わり、通知簿にも赤点はなし。

――無事、生還。

長くて短い、四十日あまりの夏休みが始まる。

「光司くん、夏休みどこか行く予定あるの?」

「今のところは特にないな」

「私も同じ」

直美も軽く肩をすくめる。

「じゃあさ、みんなでどこか行かない?」

麻衣子の一言で、空気が一気に変わる。

「それいいな」

「私も賛成」

問題は――

「どこ行く?」

少し考える……。

「やっぱり海でしょ」

麻衣子が笑顔で答える。

「海か……まあ、夏っぽいな」

「でしょ?」

自然と話がまとまっていく。

「信夫は予定ないって言ってたし」

「沙樹も部活以外は空いてるはず」

「じゃあ、結構みんな行けそうだね」

「一回集まって日決めるか」

「うん」

役割もすぐに決まる。

「可織と信夫には俺から連絡する」

「沙樹は私が聞いとくね」

「私はいつでも大丈夫だよ」

「OK。じゃあまた連絡するわ」

――こうして、夏の予定が一つ動き出した。

帰り道。

「……なんか一気に楽しみ増えたな」

「だね」

海で遊ぶだけでも十分楽しいとは思うけど……

(どうせなら、一泊くらいしたいよな……)

家に帰ってすぐ、可織に声をかける。

「可織、夏休み予定あるか?」

「七海と遊ぶくらいかな」

ちょうどいい。

「みんなで海行く話出てるんだけど、行けそうか?」

「いいよ。七海も誘っていい?」

「もちろん」

人数は多いほど楽しい。

「直美、麻衣子、沙樹、信夫……あと俺らで」

「結構多いね」

「まあ、なんとかなるだろ」

「日程決めるから、七海ちゃんの予定聞いといてくれるか?」

「うん、分かった」

その後、電話で調整。

信夫はいつでもOK。

七海ちゃんは「二十七日がいい」とのこと。

夜、直美に確認する。

「沙樹も大丈夫だって」

「じゃあ、二十七日で決まりだな」

時間も決める。

「一時くらいでいいか?」

「うん、それならゆっくり話せるし」

場所はいつもの駅前。

――こういう予定を立ててる時間が、もう楽しかった。

「可織、日程決まったぞ」

部屋のドアをノックする。

「どうぞ」

「二十七日の一時、駅前集合な。七海ちゃんにも伝えといてくれ」

「了解」

軽く返事が返ってくる。

――さて。

あとは連絡回しだけ。

信夫と麻衣子にも伝えないとな。

スマホを手に取りながら、ふと笑う。

(夏休み、悪くないスタートだな)



「おはよう」

「おはよう」

約束の時間より少し早く駅前に着くと、先に来ていたのは直美だけだった。

蝉の鳴き声と人の声が入り混じる。

「やっぱり早いな」

「光ちゃんもね」

そこへ――

「おはよう」

「おはよう」

信夫と沙樹も合流。

「あと三人だな」

「可織ちゃんたちは一緒に来るはずだよね」

噂をすれば。

「おはようございます」

「来た来た」

可織と七海ちゃんが現れる。

「あと麻衣子だけか」

「遅いね」

その時。

「あの信号のとこ……麻衣子じゃない?」

「ほんとだ」

ちょうど信号に捕まっている姿が見えた。

「タイミング悪いな」

「でも遅刻じゃないね」

数分後。

「ごめん!」

「まぁ信号ならしょうがない」

これで――全員集合。

「じゃ、とりあえず飯行くか」

「賛成」

近くのハンバーガーショップへ。

「こういうとこなら話もしやすいしな」

席を確保して、二手に分かれて注文。

――数分後。

「いただきます!」

一斉に手を合わせる。

「で、本題だけど」

信夫が切り出す。

「海、どこ行くんだ?」

「今ノ浜駅の近くの海がいいと思ってる。電車でも行きやすいし、駅から海まで近いし」

「いいね」

「宿もあるしな」

「ホテルか旅館かって話だけど」

「値段はほとんど変わらないよ」

可織がすぐに答える。

「ホテルが一万二千五百円、旅館が一万一千八百円くらい」

「ならホテルでいいんじゃない?」

会話がピタッと止まる。

誰もすぐに返事をしない。

問題は――金。

「みんな大丈夫か?」

一瞬の沈黙。

「私は大丈夫」

「俺も」

「私もいけます」

意外にも、ほぼ全員OK。

「私は親に聞かないと……」

直美だけが少し不安そうに言う。

その時、スマホが震えた。

「悪い、ちょっと母さんから電話」

外に出る。

その頃店内では――

「……金額的に難しいかなぁ」

不安そうな直美。

俺は母さんに旅行の話も伝える。

――そして戻る。

「なんの電話?」

可織が確認してくる。

「ああ、今日帰りが遅くなるって連絡。ついでに旅行の話もしといた」

「なんて言ってた?」

「許可は出た」

「後は私か……」

直美が小さく俯く。

数秒の沈黙。

「大丈夫。直美も行ける」

「え?」

驚く一同。

「うちの家族旅行に、直美も来る予定だったらしい」

「……え?」

「だから費用も問題なし」

「知らなかった……」

直美がぽかんとする。

「だから、その費用をこっちに回してもらう許可を得た」

直美は両手で持っていた紙コップをゆっくりおろす。

「よかった……」

安堵した表情の直美。

「じゃあ、次は日程だな」

「朝早いほうがいいよね」

笑顔で麻衣子が言う。

「九時集合とか?」

沙樹が提案する。

「いいね」

すでに嬉しそうな信夫。

「あとは宿の予約ですね」

七海ちゃんもしっかり会話に入れている。

「私やるよ」

直美が手を挙げる。

「こういうの得意だし」

「助かる」

「日にちは?」

「空いてる日でいいんじゃない?」

「じゃあ予約取れた日にしよ」

みんな自然と笑顔になる。

まだなにもしていないのに、すごく楽しい。

「了解」

こうして、計画はほぼ完成。

あとは――

実行するだけ。


その日の夜。

「もしもし?」

「光ちゃん?予約取れたよ」

「早っ」

「八月二日」

「完璧だな」

「みんなに伝えといてね」

「ああ、任せろ」

電話を切る。

――いよいよだ。

「可織」

「なに?」

「八月二日、決定だってさ」

「了解。七海に連絡しとく」

「頼む」

スマホを握り直す。

「さて……」

信夫と麻衣子にも連絡するか。

窓の外から、遠くの蝉の鳴き声が聞こえてくる。

――今年の夏は、今までで一番楽しい夏になる。理由はないが、そんな気がした。

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