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A【学園シリーズ】情報屋Kの恋愛簿  作者: 邑 紫貴
感謝短編

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82/87

感謝短編【情報屋】

D【全シリーズの感謝短編】に掲載していたもの。

なんとか編集や修正作業あきらめが終わったので、各作品に振り分け。


タイトル『抑制に戸惑い』

side:めぐむ・登場人物:いばらすい


放課後、慧との待ち合わせに選んだ中庭。

木陰に入り、“表”で集めた情報をまとめる。

「恵!」

他校……しかも中等部の制服で、周りを気にしながら近づいて来る荊。

再会して、近づいた距離に俺は戸惑っている。

環境に慣れた荊の自然な笑顔。

「……迷惑だったかな?」

俺の微妙な態度で、荊が不安そうな表情に変化した。

お互いが過剰な深読みをしているのかな。苦笑をしてしまう。

「慧と待ち合わせなんだよ。」

仕事なのだと伝えると、状況を理解しての苦笑を荊が返す。

「恵……慧が来るまで、近くに居てもいい?」

「約束の時間まで、10分……ベンチに行こうか。」

目立たない木陰に設置されたベンチを指差しながら、荊の手を引いた。

「荊、多分……慧は近くに居るよ。だから約束の時間までね。」

笑顔の俺に、頬を染めて何度も首を縦に振った。

そして可愛い微笑みを見せる。

握った手は、汗ばんでいるように感じる。

俺の緊張が伝わるのかと思って、戸惑いに不安が付きまとう。

何気ない会話。荊の学校生活を聞いて、嬉しさと愛しさと……深まる想い。

自分が近くに居ない時間を寂しく感じ、近くで見ている誰かに嫉妬する。

入る情報で満足が出来ない。それでも触れるのは、この手だけで満足していたい。

求める欲求に際限がなく……荊に嫌われてしまう。

言葉を発して動く唇に、視線も逸らせず。

慧は、約束の時間より早く来る。慧が近くに居るんだ……

自分を抑制するように何度も思い返す。

荊は俺の気持ちを、どこまで理解してくれるだろうか。

「恵、時間が気になるの?」

荊の悲しそうな表情に、どう答えて良いのか迷う。

荊の手を引き寄せ、手の甲に口づけする。

「俺は、君が大事だ。大切にしたい。」

俺の正直な想い。

視線を向けると、今度は泣きそうな顔。

「……だから触れてくれないの?私は、もっと求めて欲しい。」

駄目な自分。結局、荊に言わせてしまった。

『ごめん』荊を抱き寄せ、謝る言葉を呑み込んだ。

抱き寄せる力が加わる。これで気持ちが伝わるなんて、無理な話だ。

俺は、卑怯に逃げ道を探す。

「野茨も、近くに居るよね?」

荊からの反応は、身を固め……微かな震え。

俺は何度も、心の中で謝る。

罪悪感に痛む胸……それ以上に傷ついた荊と、真っ直ぐ向き合う。

「……帰るね。」

「あぁ。」

次に会う約束はしない。寂しさの漂う荊の後姿。

「慧、居るんだろ。」

「はい。」

近くの木の上から飛び降り、姿を見せる慧。

「答えてくれ……俺は卑怯だよね。」

慧は、首を横に振っただけ。答えを返さない。

「抑制出来ないんだ。誰かの為を思い、願うのは純粋な動機……なのに、結果は大切な人を守れない。傷つけるのを恐れて、深い痛みを与えているんだ。自分の弱さに、君たちの想いも利用した。ごめん……」

謝る俺に、慧は珍しい笑顔を見せた。

抑制に戸惑った結果……




タイトル『豹変』

Side:いばら・登場人物:めぐむ


恵と同じ冬北高校に合格して、任務に追われる日々。

役員の出入りする壁を飛び越え、着地した。

ふむ、まだ身のこなしに問題はない。

成長を続け、最近バランスを保つのが難しい時がある。

壁を見上げ、満足げに校舎の方へと方向転換。

ん?偶然、恵と遭遇した。

恵は私を見つめ開いた口を閉じて、頭を抱えて座り込む。

どうしたのかな、もしかして調子が悪いの?

慌てて走り寄ると、恵は勢いよく顔を上げた。

「荊、ちょっと来なさい。」

珍しく、怖い表情の恵。

あら?手を引かれ、強引な彼にドキドキしているのが分かる。

木の下、刈り込み前で伸びきった芝生の上。

「正座ですよ!」

何故、こんな事になったのかな?

目を鋭くし、私を射抜くように見つめ。そんな初めて見る表情に、心奪われた。

普段、優しい恵の注意は穏やか。私は気遣いの溢れた彼が好きだ。

今日の恵は、怒りが露わで感情を手に取ったみたいで満たされる。

「荊?」

え、話が終わったのなら原因が分からないんだけど??

「何かな?」

私の質問返しに、とぼけたような表情の恵。可愛いよね。

おや?恵の無理に笑った笑顔。私も、少し引きつった笑顔を返してみる。

「塀を飛び超える事を禁じます!」

「え!?唯一ID認証で飛び越えOKの壁なんだよ?」

一番の近道を奪われると、私が不便じゃない。

恵は口早に語りだす。耳を傾けると、入って来た言葉は……

「荊の下着が見え、俺は」

何だ、問題はソコかー。

「いいでしょ、ここは役員しか……」

私の口答えに、恵の何かが切れたのか、怖い表情で睨む。

【キュン】

この場面で、このトキメキは恵の普段見せない表情のせいだよね??

何だか悔しい気がした。

私の気持ちも知らず、延々と語り続ける。苛立ちに、恵の口を手で塞いだ。

恵の鋭い目が、急接近した私を睨んで訴える。

「うるさいのよ、恵……」

目力に負け、視線を逸らしながらも反抗的な態度を示す。

【ガリッ】

痛いっ!?

視線を戻すと、恵が私の手の甲に噛みついていた。

噛む力が弱まり、口から手が解放され、戸惑いながら噛み痕を確認。

涙目になる自分が情けなくて腹立つ。

恵の怒りが理解できず、自分の怒りも消化不良。

涙目で睨むと、恵が真剣な表情で一言。

「俺の言う事を、聞け!」

ドロドロの感情が、一瞬で浄化された。

恵、カッコイイ……優しさに甘えていた。こんな厳しさを見て、彼の想いを味わう。

もっと、見せて欲しい……

「大好きよ、恵……愛しているわ。」





end

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