あの日…… 春花と二人
春花
あの日……
家……雪花の部屋で、聖花が作動した。
その同じ時刻。……役目に目覚めた。聖花を封印するイリスを、生み出す者として。
健康だったら、もっと丈夫な体だったら……。死なずに、生きられただろうか?
加羅に託すイリス。それが作動した時……私の命は尽きる。
次の日……朝早く、学校へ向かった。
出迎える二人……間守と瞬守。瞬守は、役目に一人加わったのが、嬉しかったようだ。
「時始様。仕事で少し席を外します。」
風の通路……出逢うべき二人に、風で知らせる仕事。
「すみません。」
間守は、年上なのに敬語で謝る。
「こちらこそ……。ごめんなさい。」
間守は『先見』……将来を、ある程度知る能力がある。
彼は、知っている。私が死ぬことも……彼自身が、亡くなる時までのことも……。
「……すぐにいなくなるのに、彼女に申し訳ないわ。」
「最期まで、この場所にこだわるなら……」
彼は、口を閉ざす。
先生への想い……これで……いい。
自分の短い命の中で、人を好きになれた。……幸せな時間があった……。
先生に、出逢って良かった!
……時は来た。
自分の命……すべて……イリスに捧げた……
刻
あの日……
時始様が、役目をまだ持っていない者にイリスを託した。
有羽は……一緒に役目を果たせると思った時始様を、失った悲しみのほうが……大きかった。
俺を失った後、有羽は……大丈夫だろうか……?
泣いている有羽を慰めながら愛しさに……胸が痛い。
「刻は、ずっと一緒にいてね。」
「……あぁ。」
何度、出来ない約束をしただろう?
淋しい君の心に付け込んだ。
俺は、生れた時から……この学園で、空間を守ってきた。ずっと独りだった。
自分が味わってきた悲しみを、君に残す。
それでも……君と共にいたかった……。
時が来た。
「有羽……。空間に異状のあるところを見つけた。」
涙の止まらない有羽。
流れる涙……愛しい君の目元に、優しく口づけする。
「行こう……」
黙ってうなずく有羽。
君に触れるのは……これが最後。
「刻……?」
君を残していく……。この手に……もう一度……君の温もりを感じたい!
それも許されない「時間……だ。」
行く先は、保健室。
……何度、夢に見ただろう?彼女との約束を守れない……瞬間……。
保健室 延々と続く砂漠の空間。
イリスを待って……止まった世界。
時止有羽の兄。
彼は、有羽を砂の檻に閉じ込める。彼女を守るため……。
知らない有羽は、抵抗するために力を使う。
砂が風を通す中、時止は有羽の鈴に触れた。
幼い頃から大切だった、兄の記憶が君に戻る。
俺が奪っていた立場……君の中の俺の存在は、小さくなっただろうか……?
「……兄……さん?」
二人は再会し、別れる……。
俺はずっと、黙って二人を見ていた。
有羽は、理解できなかっただろう。……俺が、助けようとしなかったから……
時止は、有羽と言葉を交わした後 俺のところに来る。
夢で見た通り……。
時止の砂の剣に、俺の稲妻の剣が何度か交差する。
「時止、愛する者のところにたどり着いたら……~。」
それぞれの剣は傷となり……命に時の限界を告げる……。
「……最期に願いは、叶う。」
役目は、終わった。
命尽きる俺に、君の涙が降ってくる。
……暖かい……君の温もり。愛しい人……
「き……刻、目を開けて……。ずっと……一緒だっ……て……言った……よね?」
そう……守れない約束……
「……ごめん」
有羽
あの日……
時始様の役に立てなかった。近づくことも、出来なかった……。
泣いている私を、ずっと黙って……刻は優しく抱きしめる。
……いつものように優しい。いつも以上……に。
不自然なほどの……優しい時間。嫌な……予感がする……
「刻……?」
悲しみを感じる刻の瞳……私が……そこに映っている。
「時間だ。」
そう、……時間……お別れの……だった……
砂の檻に閉じ込められ、必死に出ようと試みる私を……刻は、ただ……遠くから見ているだけだった。
刻は、すべてを知っていた。危害を加えない人だと……。
鈴に触れた人は、私の……大切だった人。
「兄さん?」
優しく守ってくれていた兄の記憶は、刻と重なる……。
「……体を大切にしなさい。大切な役目が待っている……。」
大切な希望。
私の体………中に……守るべき未来。
「……兄さん!止めて!!……お願い……」
奪わないで……
「約束……したのに……。ずっと……一緒だと……」
ウソツキ………




