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A【学園シリーズ】情報屋Kの恋愛簿  作者: 邑 紫貴
時を巡る

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あの日…… 雪花と玲

時始おうの 桜野春花はるか 高等部二年生

幼い頃から体が弱く、いつも愛される側だった。愛する側になりたかった……。

二年生に進級し、あなたが教師として現れました。

遠縁の、優しい大人の男性。海辺改うみべ あらた先生。

あなたの視線の先に、……加羅がいるのが分かります。

それでも、『好き』でいることに……幸せを感じていました。

科学準備室の見える噴水。

……命が短いと知っても……そこに身を置くことで、精一杯でした。

“好きでいてもいいですか?”

あなたに好きな人がいるのは知ってます。

それでも……少ない命の尽きる時まで……好きでいても、いいですか……



間守 神鳴かみなり きざみ 高等部三年生

生まれてすぐに、学園の空間を守る役目を持った。

ずっと、一人だった。役目は、自分にパートナーが来る事を告げる。

その者と愛し合い、……残していくことも……。

君がどれほど辛いか……それでも、一緒にいたかった。

気持ちは、止められなかった。自分が死ぬとわかっていても……。

君を愛した日々が、どうか希望となりますように……。



瞬守 朝凪あさなぎ 有羽ゆう 高等部二年生

幼い時の記憶が戻ったのは、兄が私の鈴に触れた時だった……。

二人を止めたくて、必死で叫んだ。大切だった兄と、大切なあなた……

私に言わなかったけど、あなたは知っていた……この結末を。

それが、別の役目を守るため……。

私のあなたへの想いは、人恋しさではなかった。信じて欲しい……。

大丈夫……この、生きる希望を……私が守るから……



聖花 桜野おうの 雪花せつか 高等部二年生

高等部の入学式。春花の体調が悪くて、保健室へ連れて行った。

あなたは優しくないし、機械的な対応で……。あなたの何に、心は反応したのか……。

同じ学年の男の子にはない……生き方……だろうか?

自分の中で、口に出てしまうほど……気持ちが大きくなっていたなんて。

「……聞かなかったことにする。」

あなたの心が欲しい。

『……願いは何か……』

あなたは、私を好きになってくれますか……?

命と引き換えなくても本当に……簡単に……手に入ったのに……。

一番後悔したのは……あなただった。



時止 石井いしい れい 高等部保健室 担当医師

自分の役目の時が近づいていた。

それなのに、何故か……年の離れた一人の生徒が心にかかる。

病人ではなく、付き添いだ。

役目だけを見つめてきた。

わたしを愛してくれるなんて……

君は信じてくれるだろうか?

とても嬉しかった。……君を、愛していたんだ。

あの時、役目を忘れ……素直に気持ちを伝えていれば。

……今、君は……この手にいた。

君の命を奪った聖花と共に、この空間でイリスを待つ間、どれほど後悔しただろう……?

せめて、君を守って死ねたら……

君は最期まで、わたしを愛し願ってくれた。

想いの伝えられなかったわたしを……赦してくれますか……?




雪花

あの日……


春花の体調が、いつもより良くない。

加羅に見送られ、春花に付き添って保健室へ向かった。

先生は不在。春花を寝かせ、部屋から出た。

……残念……

「桜野……?」

「珍しい。玲に引き留められるなんて……」

いつ頃からか、愛想のない先生を、名前で呼ぶようになっていた……。

引き留めたくせに、無言?

ちょっとドキドキ……あれ?いい雰囲気……?

「いや、いい。教室に戻りなさい。」

いつもより優しい?

「そう」

私は、可愛げなく……そこから離れた。

いつもより、玲が近く感じた。想いが膨らんでいく……


昼休み

春花が教室に戻らないので、保健室へ。

朝の雰囲気に、期待が膨らんでいた。

「春花、大丈夫?」

そっと保健室のドアを開けて、声をかけた。

「家から迎えが来て帰ったよ。」

机に向かったまま、玲はこっちを見ない……。

苛立ちを感じ、部屋の中へ入る。

玲の横に、仁王立ち。

「玲、私の方を見なさいよ!」

「必要ない。」

いつもと違う冷たさ。拒絶……?

頭が真っ白になる。

「……好き……なのに……」

気持ちが込み上げ 想いは、口に出てしまった……。

言ってしまった!つい……口に出てしまった!!自分が信じられない……。

玲は何も言わない。戸惑っているように見える……?

「……聞かなかったことにする。」

玲の返事に耐えられず、涙があふれる。

「じゃあ、忘れてよ!!」

保健室から走り出る。

【ドンッ】加羅とドアにぶつかった。

余裕がなく、余計に情けない……昼からの授業どころではなかった。


家に帰り、自分の部屋に入る。

悲しみとか、いろいろな感情が込み上げ……泣いた。

どれほど泣いただろうか……。外は夕日に染まっている。

まだ、玲のことが好き。欲しい……彼の心が……。

『……は何……。願いは何か。』

夢うつつなのか……?

自分の前に、赤く光る……花の形をした宝石が現れる。

「玲が欲しい。彼の心が……」

手を伸ばし、それに触れた……意識が……薄れていく……。


意識が戻り、虚ろな目に……血を流す玲の姿……!

私の口に、彼の唇がそっと触れる。

「……好きだ。愛し……て……いる……」

玲は、そのまま崩れて動かない。

そして、私も……息を………。




あの日……


役目の時が来た。ずっと、この時の為に生きてきた。

それなのに全く……役目に集中出来ない。

雪花……君の涙が、頭から離れない。

右手に、砂時計を作動させ……聖花の場所に空間を繋ぎ、移動した。

信じられなかった。これが……現実……。頭が真っ白になった。

そこにいたのは、桜野……雪花……。

君が時の犠牲?!

【ドアが開く】

切り離された空間に、桜野加羅が入ってきた。

時役使ではないはず……?

「……記憶が……ある……か」

雪花に、微かな意識がある?!

砂嵐を生じさせ、空間を保健室に戻した。

「雪花……?」

「玲……好き……よ」

君の心のカケラ……

「時よ、止ま……れ。聖花を……封印すべき……イリスをま……て」

雪花は、眠るように目を閉じた。

そして、俺の……腕の中に……。

どれほど後悔しただろう?

生きている……息もしている!!でも……目覚めない……。

俺は、役目の為に生きてきた。そんな俺を……最期まで愛してくれた……

せめて、雪花を守って死ねれば……

もう伝わらない俺の気持ち……を……

俺も、好きだ……愛していた!

信じてくれるだろうか……?

お願いだ……信じて……欲しい……


時が来た。

雪花の命は、聖花と共に止まるだろう。

刻から受けた傷と、伝言……。

雪花の眠る前に立ち……右手の砂時計を、雪花と自分の間にかまえた。

背中から衝撃が走る。貫いた何かは、砂時計に当たって……止まった。

刻の言った通り。

「……い?……玲……!?」

雪花……雪花……!

最期に逢えた……。

「好き……だ。……愛して……い……る……」

雪花の唇に、そっと自分の唇を重ねた………幸せだった……

君の心に、少しでもこの想いは……届いただろうか……




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