○ん?
シンとの関係に、嫉妬がないと言えばウソになる。
それでも犯人を捕まえることが優先で。
放課後に行こうと思ったところに、先手を打たれ。
俺は綾の小学校に向かう。
『見つけたものは、綾に見せるように』
複雑ながら、試されているような言葉にケンカ腰で挑む。それなのに。
俺の嫉妬心に、別の火種。連歌が綾に迫っているところを目撃。
校門の壁際に綾を押し付け、体が密着している状態。
しかも野次馬の小学生が目を輝かせ、赤面しながらの見学。
「連歌ぁ~?一体、何をしてるのかなぁ。こんな往来で。」
後ろで仁王立ちの俺に、顔だけ俺のほうに向け平然と答える。
「え、見て分からないのですか?」
泣きそうな綾から離れることなく、ケンカを売ってくるとは良い度胸。
思わず眉間にシワが。
深く息を吐き。
俺は大人だ。我慢。少しトーンは低いけれど、普通の音量で。
「綾から離れろ。」
周りに見物の小学生がいなかったら、もう少し乱暴だったかもしれない。
「何故ですか?」
俺の限界を超えた。
連歌の手首を掴み、身長差を示すような視線と力で、綾から無理やり引き離す。
連歌は俺を睨んで、掴んだ手を振り払い。
「卑怯ですよ。」
「何がだ?」
「力・言葉・態度、全てです。」
背の低い年下から言われて。
当然なのだが、それが余計にムカツク。
ここでも歳の差を考えろと言われているようで。
そんなことを気にしていたら、また拗れてしまう。
年の差。
綾が成長するまで時間はあるようで、一時も無駄にはしたくない。
「綾と、付き合っている。二度と触れるな!」
周囲も合わせて一瞬の沈黙。
綾の驚いた表情。
言ってしまった。
「きゃあぁ~~!」
「やるぅ~~!」
周りにいたのが小学生だからか、大きな声が響いた。
まずい、このまま留まるのは。
勢いで綾の手を引き、その場を走り去った。
「はぁっ……止まって、優貴。」
どれくらい走っただろう?
息のあがった色っぽい声。
綾の足が止まって、手を引いていた俺の足も止まる。
「……はぁ。ごめっ……大丈夫か?」
俺の息もあがって。
その後を走っていた綾はもっと苦しかっただろう。それなのに。
「嬉しい。」
息継ぎで、うつむき加減だった顔を上げ。
頬は走ったからなのか、赤らんでいる。
小さな声で「嬉しい」と、もう一度。
そして満面の笑み。
可愛い!
「何?」
思わず。
聞こえていたが、もう一度聴きたくて綾に耳を傾ける。
「みんなの前で付き合っていると言ってくれた。それが嬉しい。好きよ、優貴!」
俺に両手を差し伸べ、向ける最高の笑顔。
抱き寄せて、心臓がバクバクと心拍数の上昇。
「綾、好きだよ。」
抱きしめた腕の中。
いい香りがする。つい首筋にキス。
「ひゃっ」
綾の体が反応したのが嬉しくなる。
これは、往来のある道ではいけない。名残惜しいけれど。
「綾、大切な話があるんだ。二人で話せるところはない?」
もちろん下心あり。
けれど嘘ではない。
「そうね、家に来る?近いし。」
俺の下心に何の疑いもなく、綾は手を繋いで歩き始める。
家族いるのかな?でも、二人で話せる所って言ったし!
期待が膨らんでいた。
んん?見覚えのある道を通る。
このみち~は~いつかきたみ~ち。そうだぁ!
「シンの家?」
立ち止まり、茫然と出た言葉。
綾は手を離して、家に走り寄り。
「おかぁ~さぁ~ん?」
子どもらしい呼び方で、家のドアに手をかける。
【ガチッ】
鍵が閉まっている音。
「やっぱり留守か。」
鍵を出し、開けて振り返り。
状況の解らない俺に、綾は微笑んだ。
「改めまして、福本 綾。シン君の妹です!」
「いっ……妹?」
記憶が、繋がりを再確認していく。
『大切な人』『いつも護っていてくれた』
兄妹なら当然だ。
和也が言っていた。AYAの記事。
『これ、シンに見せたらビリビリに破られて没収されたんだ。それからすぐ販売中止になるし』
正義感強かったし、すぐに販売停止したのはシンが動いたからだろうな。
新聞を破ったって。そうだよな。自分の妹の写真が、ほとんど隠し撮りだし。
『懐かしいモノが君の中にある』
シンと同じ資質。持って生れたもの。
当たり前だ。それに気付かないなんて。
「優貴、入って?」
入り慣れた家が、別の空間に感じる。
階段を上がり、シンの部屋を通り越した奥の部屋。
ドアに【リン】と書かれたボード。
「入って。」
中はシンの部屋と同じ造りだが、女の子の部屋だ。
「今はね、任務の関係で寮にいるの。」




