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次の日。同じクラスの、水泳部のマネージャーに話しかける。
すると距離をとって。
「優貴君、みんなの視線が痛いの。手短にね?」
周りの視線が気になるのは、俺も同じだ。
誰が犯人か俺には分からない。
「悪い。シンと、記録のことで話をしたことある?」
なくなった記録ノートの存在は、水泳部なら誰もが知っていると思っていた。
ましてマネージャーなら。
「え?森君は、楽しみで泳ぐくらいだったでしょ?記録なんて気にしなかったよ。みんなには、私以上にアドバイスしてくれたけど。」
「そっか、あいつ優しかったからな。それに、息抜きで泳いでるって忘れてた。」
普通の会話って、意識すると難しい。
聞き出したいことがあるのに、上手く誘導できないのは。
「先生は、何も言わなかったの?」
「森君、成績優秀だから。顧問の先生と二人で話をしてたのって、あまり記憶に無いな。あ、」
「優貴くぅ~ん!何、なにぃ~。何、話してるの?」
数人の女の子に囲まれ、彼女は表情が曇り。
慌てて、俺から更に距離をとる。
「またね、これ以上はごめんなさい。」
素早く去って行く。
何かを思い出した風だったけど。この状況なら、しょうがないか。
女って面倒臭いな。
寄ってきたのを無視して、場所を移動する。
そういえば綾、昨日の様子がおかしかったような。
どうして来たのかも、結局は分からず。大丈夫だろうか。
しかし……暗号は水泳と関係ないのかな。
気晴らしで泳ぐ程度。背泳ぎ。背中?
記録のノートをつけていたのは誰だろうか。
探すなら、過去のものでもないだろうし。
放課後、帰りにでも励治さんの所に行ってみるか。
「あ、いた。多河君!」
聞き覚えのある声。
けれど。
「あれ?励治さんの」
彼女さんが、太西学園の制服を着ている?
なんだろ、無言の圧力。場所を移動するよう、視線で誘導。
はいはい、黙ってついて行きますよっと。
屋上。
周りに人が居ないのを確認し、違和感に我慢も限界で。
「あのぉ~。聞いていい?」
それに、綾にいつ見られるか。落ち着かない。
また機嫌を損ねないように、距離をおき。
「いいわよ?」
やっぱり警察署で見た雰囲気と、違う気がする。
気になったのはそれだけではないのだけれど。
「ここの制服って、簡単に手に入るの?上の趣味なの?」
綾・麗季ちゃんに、彼女さんまで。
「え?他所の制服じゃ、目立つでしょ?」
キョトンと、何がおかしいのかまるで分かってない顔。
普通の子なら目立たないけど。
「この学園にいない人だって、分かりますよ?」
学んでいた。
綺麗とか魅力的とか、簡単に使って良い言葉ではない。
「そう?」
不思議そうに、制服をヒラヒラさせる。
役員って、顔とかで選んでないですか?
役員が気になってくるじゃねーか。
まぁ、それはまだ考えず。
「励治さんの、彼女じゃないですよね?雰囲気が違う。」
「ふぅ~ん。なるほどね!私は卯佐美 凌子。励治の彼女は、私の姉。よく似ているんだけど、年子の妹よ。よろしく。」
違和感を解決したくて、聞いてよかった。やはり別人。
あんな一瞬、見てはいけないと直視せず。
よくわかったよな、俺。
凌子さんは嬉しそうに笑う。
「一回で見分けついたの、あなたが初めてよ!おっと。嬉しくて、肝心なこと忘れるところだった。」
役員なのに、よく話す人だな。
気持ちを切り替えたのか、真剣な表情になり。
「励治から伝言。見つけたものは、綾に見せるように。との事!」
そう言うと。
俺に手を振りながら、方向を変え。
ドアを開けて、上がってきた階段を下りて行ってしまう。
チームAだけか。
格子を超える姿が常になり、普通の行動が地味に感じた。
しかし、どうして励治さんに持っているメモの事がバレたんだ?
情報屋か?噂で聞いていたけど、それにしても万能すぎないか?
励治さんは、犯人を知っていると思う。
俺を試しているのか、証拠を待っている?
不謹慎にも、ワクワクしている自分がいた。




