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A【学園シリーズ】情報屋Kの恋愛簿  作者: 邑 紫貴
君は小学生?!

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57/81

・・


ハサミ、いや縫い目が細かいからカッターが良いだろうか。

机の引き出しからカッターを取り出し、刃先を少しだけ。

ヌイグルミ自体に傷をつけないよう縫い目にカッターの刃を当て、解いていく。


【カサッ】


古い綿の中から小さなメモが出てきた。

そこには『I 背泳ぎ』と書いてある。


意味は分からないが、これはシンのダイイング・メッセージだろうか。

明らかに隠されたメモ。誰に宛てたのか。

この文章は暗号だろうな。アイ?奏子ならS。綾はRだよな。

背泳ぎ?水泳部なら何かわかるだろうか。

明日にでも遠回しで聞いてみるか。


綾も何かを探していたよな。これか?

でも『例のところには無かった』と。どこのことだ?

俺は勝手に、鍵の閉まっていた水泳部のロッカーだと思ったのだけど。


綾に、このことを話したほうが良い?

いや、危険に巻き込みたくない。

きっと部屋を荒らした犯人を捜す手がかりになるだろう。


一体、シンは何を隠し持っていたんだ?

……殺されたのだとしたら。



【コンコン】

窓ガラスのノック音。


外から?

2階の窓に、風にしては規則的な音。


カーテンを開ける。


「綾?」


チームA。黒い軽装の綾が、ベランダにしゃがんで下から見上げ。

可愛く微笑む。


「入れて?」


甘えるような声に、疑問も抱かず。

鍵を開けて招き入れる。無意識だった。


「へへっ」


幼い感じで無邪気に笑う綾。

窓から入った拍子に、髪からいい匂いがする。


「駄目だ、早く出て!」


俺は焦る。

こんな夜の時間。俺の部屋に、好きな女の子が誘うような香りを漂わせ。

自分の理性を抑える自信が無かった。


そんな俺を気にせず、部屋を見渡す綾。

そして机の上のヌイグルミを見つけた。


「これ!私がシンくんにあげたヌイグルミ。何故、優貴が持っているの?」


「預かっていた水泳部のロッカーにあった荷物の中に入っていたんだ。」


「……そう。」


綾が作った物。古いヌイグルミ。

シンと綾の付き合いは、どれだけ長いんだ?


「縫い目を解いて……中に何か入っていたの?」


綾の視線がヌイグルミに逸れたタイミングで。

俺は手に持っていたメモを、隠すようにズボンのポケットに入れた。


「いや。もしかして?と思ったけど、何も入ってなかった。解いてゴメン。」


シンに嫉妬していた。

中にあった物が何だったか告げれば。

もしかすると綾なら暗号も分かるかもしれない。


入っていたヌイグルミを作ったのは、綾だから。

駄目だ、こんな状況でまじめな話なんか出来ない。


「綾、どうして俺の所に来たの?今日はもう遅い時間だ、話は明日にでも」


【グイッ】


綾は、俺の着ている服の胸座の辺りを掴んで引き寄せ。


【チュッ】


軽いキス。

柔らかい唇の感触に、俺の頭の中が真っ白になった。


綾は涙ぐみ、頬を赤くして俺の胸に顔を埋める。


「綾?」


動悸が速くなりながら、シンに対する嫉妬心が胸の痛みに変わる。

綾に嘘をついた事が、俺の理性を補う。なんて皮肉なんだ。


「言って、何を隠しているの?いつもの優貴じゃない。」


「綾、俺」


【コンコン】

今度はドアのノック音。


「優、入るぞ~?」


嵐だ。

まずい、こんなところを見られたら!


「嵐、まだ開けるな!待て!」


慌てる俺の視界の端。

綾は慣れた感じで、慌てることなく。冷静に。

窓を開き部屋を出て閉め。ベランダの手すりを越えた。


さすがチームA。

傍観する俺。


「優~?何だよ、大きな声出して。机の上も散らかってるし。珍しい。慌てて……さては、エロイのを隠してるのか?」


何故か嵐の目が輝く。

俺は、綾の様子がおかしかったことより嵐の将来が不安になった。


「何、しに来たんだ?」


「宿題だけど?」






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