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「優貴、聞いてくれてありがとう。あぁ~すっきりした!」
麗季ちゃんは大人だ。
しっかり前を見ている。
「私のこんな姿を知っているのは、あなただけよ?」
【ドキッ】
麗季ちゃんの笑顔にときめいてしまった。
あまりに綺麗で。
「自信持てば?魅力的な女性だよ、君は。」
本心だった。ただ、安易に言ってはいけない言葉。
それでも年の差に悩むのは同じだから。
「どういうこと?」
アヤの声に振り返る。
会えないと思っていたので、俺は嬉しくなったのに。
アヤは怖い顔で俺を睨んでいる。
麗季ちゃんは、ため息。
あれ?まさか、やきもち?
今、何を言ったら信じてくれるだろう?
麗季ちゃんの相談事を言うことも出来ない。
黙っているのも、どうだろう?
「女好き!」
「俺が好きなのは、アヤだけだよ。」
女好きって、それだけはない。
真実を告げて様子をみる。
「嘘!だって、この間は綺麗な人と一緒だった。私の新聞記事も、ただの好奇心なんでしょ。今度は麗季なの?」
アヤは涙ぐむ。
年の差に悩み、それ以上に拗れるような事は避けたい。
「アヤ!」
俺は自分の言葉を聞いて欲しくて、アヤの名を呼んだ。
この時、初めて知る。君の名前が違うことを。
「私はアヤじゃない!……バカァ~!」
理解できない俺を置いて。
いつものように柵を飛び越える。
「アヤじゃない?」
君を追いかけることも、引き止めることも出来なかった。
「よくアヤって糸偏の綾って漢字使うでしょ?誰かがそれを言ってから、あだ名になったの。本当はリンなのよ。」
傷つけた。
好きだと言っておきながら。俺は、彼女のことを何も知らない。
「なぁ、嵐から聞いたんだけど。中学生が綾のことを狙っているって。そいつは、リンって知ってるの?」
情けない逃げ道のような質問。
麗季ちゃんは淡々と答える。
「えぇ。気にはなっていたけど、私が言うことじゃないと。ごめんなさい。」
「君が謝らなくていい、俺が悪いのだから。むしろ気をつかわせて、ごめんな。」
本当に好きなら、知りたいと願い。可能な限り調べて、名前を間違えるなど。
そんな馬鹿な事で傷つけたりしない。
恋愛に、どれだけ自分が疎いのか。幼い自分に腹が立つ。
まだ、本当に俺が女好きだったなら。そんな間違いはしない……どん底の自己嫌悪。
「任務に戻ってリンと話をしておくわ。また話をしましょう。」
「あぁ。」
柵を軽やかに越えるのを見届け。
俺は中学生以下の知識で、綾を知ったつもり。
学校新聞の特集に掲載された隠し撮りの写真と、本人の言葉などない記事。
何度か会って、言葉を交わし。外見に惹かれて。付き合ってくれなんて。
後悔が俺を襲う。
それでも、この気持ちは。
綾……俺は、本当に君を好きになったんだ。君に惹かれ、もう戻れない。
信じて欲しい……
【携帯のコール音】
誰からか確認せずに出る。
泣きながら話し始めるので、聞き取りにくい。
「奏子?…………分かった、すぐに行く。」
内容に驚き、俺は走って移動する。
チームAが、シンの部屋を荒らしたのだと。
何故?何かを探しているのか。
さっきまで二人はここに、学校にいた。チームAは二人組ではなく、他にもいるのか?
屋上のドアを開け、階段を駆け下りた。
靴を履き替え。校庭を走りぬけ、校門を通る。
「加河優貴さん!……ちょっと話があるんだけど?」
急いでいる俺は不機嫌で。
足を止めて、息を切らしながら観察。
見覚えのない整った顔の男。太西学園の中等部の制服。
予測が正しければ、コイツは。
睨む俺に怯むことなく。
「俺は、松木 連歌です。あなたは、綾と付き合っているのですか?」
馴れ馴れしく綾と呼び。あからさまな敵意。
急いでいるが、こいつを無視するのも何だか悔しい。
「お前さあ、綾と俺が付き合っていたら諦めるの?」
「質問に、質問を返すのは卑怯ですよ。」
こいつ嫌いだ。分かる。こいつも俺のことが嫌い。
見えない火花が散る。
「悪いけど今日は、相手をしてやれない。またな!」
急いでいるのが嘘ではないことぐらい分かるだろう。
太西学園は、麻生学園の姉妹校の中で一番の進学校。特に、中等部は競争率が激しいはずだ。
あいつが綾の頬にキスをした、中学生。
俺の中学の時などバスケ一筋だった。
連歌は真っ直ぐ、何かを見据えた覚悟の見える視線だった。
綾を好きで、俺に立ち向かう余裕もある。
綾のことを、まだ俺は何も知らない。
俺が彼氏だと、はっきり言えなかった。




