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「どこまで話したか。あぁ、橘川茉莉香は妃だ。」
妃って現、学園の長ってこと?
あの、おっとりした間の悪い感じなのに。
思わず疑問が口から滑る。
「彼女が……?」
「あれで、仕事は凄い能力を持っている。幼馴染の蒼井 水樹が転校して来て、補佐も完璧だ。事件で表に出ないように手をまわして大変だったけどな。」
あの仲の良い雰囲気は幼馴染の延長なのね。
学園の意図に、妃の補佐役も含まれるだろうか。そう思っておこう。
「あの日、初めて被害に遭ったのは妃だったのね。」
情報をくれた友人は、妃……橘川さんが被害に遭ったとは言わなかった。
手をまわし、外部への情報規制。
「そう、氷上は実質の第一被害者ではない。同日、事件の現場にいた二人が被害に遭い。幸か不幸か立て続けに起こった。」
「その犯人も秀一くんなの?」
秀一くんは成績のために妃を?
まだ好きだと言っていた氷上さんを同日にというのも。
「全部、校長たちの仕業だよ。」
私の髪も。
あの校長、許さない。
「バカバカしい。あいつ等、ショート愛好家だとか言いやがって。綺麗な女性は絶対ショートだと。何言ってんだ。女は、長い髪を……こう……。」
…………。
(少々、お待ち下さい。ショートの享子が、励治に愛情を注いでいます。)
そういえば秀一くんは、偶然が重なったと言っていた。
「秀一は、利用されたんだ。体育館の鍵を開けたのは、『ショート愛好家』だった。一度、学園と全姉妹校を調査し直さないと。校長室の奥だけでなく、体育館倉庫の奥にも隠し部屋を造っているとは。そこから秀一のしたことを目撃して、脅したようだな。そしてショートのターゲットも見つけた。妃と氷上だ。秀一は好きな氷上の髪を切った奴らに、使われるとはな。」
「……あの怪我は自演というより、これ以上利用されないためだったのかも。」
「自暴自棄になっていただろうな。突発的な行動が利用され、結果として大切な女の子を傷つけたんだ。凶器が見つかり怪しい自分が警察に捕まれば、隠れ蓑に行動していた奴も捕まる。」
私が捕まったとき、もう自分がすべての元凶だと罪を被ろうとしたのだろうか。
成績の話を出すなんて。
いや、勉強に追われていたのは本当。
いなければいいと、そう思ったことがあったのだろう。
自分を責めて辛くて、私からの非難で気が楽になると思ったのだろうか。
複雑な感情が予想され、とても悲しくなる。
「新聞部の火事も、イベントの【花冠】の伝説を忘れたい思いと同時に、犯人特定につながる痕跡にしようと罪を重ね……」
励治は口を閉ざす。
複雑に絡んだ感情と、突発の事件がここまで膨らんで。
「結局、私たちの捜査が間に合わなかった。秀一くんは、武の携帯から私を呼び出して。」
あの時、武が私を見つけなければ今頃どうなっていたか。
「水樹は、校長を捜査していたのね?」
秀一くんのことも知っていたんだ。
学園の意図的な転校。
「励治、私にまだ言っていないことがあるよね?Kも。」
触れてはいけない。けれど、もう少し言える情報があったよね。
それが私の時間を無駄にしたのは事実。
「Kは、俺の命令を守っただけだ。凌子を危険な目に遭わせるわけにいかない。俺に背いて情報を渡したKは責めるな。」
「Kの情報に、生徒会長の事が入っていたときには、何も教えてくれなかった。妃のことだって。別に、私が聴取に行かなくても良かったじゃない!」
腹が立っていた。
自分に力が無いだけじゃない。自分は護られる側で、捜査の邪魔だったんだと。
「ごめんね、励治。でも何だか怒りが治まらない。享子姉、私ね……励治にキスされちゃった。」
「凌子、それは!」
ずっと大人しく励治の膝上にのって抱きつき、話を聞いていた享子姉から殺気が漂い。
私は黙って椅子から立ち上がり、部屋を出る。
廊下で伸びをする私に、部屋の中から励治の悲鳴が聞こえた………




