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A【学園シリーズ】情報屋Kの恋愛簿  作者: 邑 紫貴
花冠の伝説

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34/81

『新聞部火災』


水樹をサッカー部員や武、要請した役員の警備に任せ。

私は生徒会室に向かった。


足を止めて、荒くなった息を何度か吐き。ドアを開ける。


「誰もいない。」


武が無事だったから、役員の役目などどうでもよくなっていたのは否定できない。

解任になったとしても、後悔などないから。


人の気配はないけれど、警戒しながら室内を見渡しながら部屋の奥に進む。

生徒会長の机に、見覚えのある武の携帯が置かれていた。

本当に、あの電話は水樹だったのだろうか?


【コンコン】ノック音。


振り返ると、そこには息を切らしたKの姿。

その後ろから、荊が顔を出す。呼んできてくれたんだな。


「凌子、無事でよかったよ。」


安堵したKの表情と、泣きそうな顔で何度も頷く荊。


「荊、Kもありがとう。早速だけど、情報をお願い。できれば水樹の情報を。」


Kは私から一度視線を逸らし、言葉を選ぶように連ねていく。


「蒼井水樹の情報が少ないのは、転校生だったからだ。学園が意図をもって呼び寄せた。生徒会には、推薦で入っている。」


学園の意図。

Kの様子からすると、多分それは私が触れてはいけない情報。手を出してはいけない禁忌。


「推薦は誰がしたの?」


「現役の妃だ。そして、緋……励治さんも了承している。」


それは信用の置ける人間ということ。

水樹は犯人ではない。水樹のケガは、犯人によるものと推測される。


「K……全部、知ってることを私に教えてくれるよね?荊がどうなっても知らないから。」


私は、荊の後ろから抱きついた。


「凌子さん、放してください!」


「凌子、どうして荊の……その。」


Kは顔を真っ赤にして、視線を逸らした。

私の右手が、荊の胸の前でグーパーを繰り返す。私は荊を人質……いや、胸質に取った。

触っちゃうぞ?との無言の圧力である。


「全部、包み隠さず話しますので。荊を、放してあげてください……」


荊は泣きそうな顔で私を見上げる。


「荊、ごめんね……。Kも、ごめんって。」


こうでもしないと、Kは教えてくれないだろう。

きっと励治に言い訳もできない。


「今、慧から情報が入った。過去の新聞記事すべてが管理ソフトに残っていると。」


燃えた新聞の記事も、見ることが出来る。

そこに事件の鍵があるだろうか。


「緋は、それを調べている。」


やはり励治は、私に内緒で捜査を進めていた。私に危険が及ばないように。

頭の切り替えがないと、事件が闇に埋もれそうだ。複雑に絡んだ複数の事件。


「緋は……励治さんは、犯人をまだ見つけていない。新聞の記事に答えがあるだとうと今、新聞部にいる。」


情報を漏らしてしまったKは励治に会うのは、控えた方が良いだろう。

落ち込んでいるし、荊との幸せ時間も与えてあげなきゃ。


「Kは荊と行動して。私は新聞部に向かう。」


二人と別れ。

新聞部に着くと、部室のパソコンを操作している励治と目が合った。

ちょっと怒った怖い顔。


「ちっ、Kか。」


ため息を吐き。察したような空気に安堵して。


「Kは悪くないよ。私が無理やり聞き出したの。ごめんなさい。けど、一緒に調査するって励治も言ったよね?」


励治は、私を見ない。


「凌子、覚えていないか……」


出逢ったときの事だろうか。

私は部屋の中に入り、パソコン操作をする励治に近づいて隣に立った。


「話して。思い出すかもしれない。」


「凌子、言っとくが。諦め悪いぞ、俺は!」


なんだか見透かされている気分。ついさっきの出来事さえ。

そう、もう気持ちは揺るがないことも。


真っすぐな視線を受け。


「俺の父は、麻生学園の理事長なんだ。役員の緋という立場なら、親父の力が及ばないと思っていた。結局、カゴの中だったんだけどね。それが絶望に感じた。俺の存在。親父から見たら、とても小さく……価値のないものだろうと悲観して。3年前……。雨の中、迫られていた選択肢を迷う崖っぷちに、傘を差し伸べたのが……凌子だった。」


3年前。私の役員推薦の前のこと。

傘……


「ごめん!それ私じゃない。」


何てことだろう。記憶には微かにあるけれど、身に覚えがないのは当然だ。

励治は意味が分からず。話していた内容が重かったのもあり、沈黙で。


慌てて説明に入る。


「その場に確かにいたんだけどね。説明すると、海外に留学している年子で姉の享子きょうこなの。一時帰国したとき、この学園を案内して。雨の中で享子が、落ち込んだ人に傘を差し伸べて何か言っていたわ。」


口早に告げて。

それが事実なのだと受け入れる時間の猶予は必要だろうか。


「落ち込むな~勘違いだったとか。一度、会わせてくれよ。」


「うん。私と、ほとんど変わらない外見だけど。私以上に頭がいいし、優しいよ?励治が知っている通り。」


私は励治の頭を撫でてあげた。


「……ふっ。結局さ。この仕事も、親父に反発して始めたけど。この学園が好きで離れられない。」


落ち込みはしたものの励治は、吹っ切れたのか笑みを見せ。

パソコンに目を向けて、作業を再開する。


「今思えば、確かに違和感があったな。でも、凌子に本気だったのは本当だ。」


「うん。」


励治は、一つの記事で画面をアップにする。


「凌子、これだ。」


「カップル成立?【花冠】の伝説の文化祭のイベント。この人……」


そこには水樹と、氷上美鶴さんの写真が掲載されていた…………






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