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A【学園シリーズ】情報屋Kの恋愛簿  作者: 邑 紫貴
花冠の伝説

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32/81

・・


麻生学園の大学病院。橘川さんの病室。


【コンコン】


ノックをし、中に入るよう促す声を待つと。

ドアが開いて、そこにいたのは。


「……水樹?」


病室の中から生徒会長が、私達を出迎えた。


「お、学園の聴取はウサギが来たんだな。」


中に入るように促され。


「何故、あなたがここに?生徒会長なら、別にあなたが聴取でも良かった気がするわ。」


疑問をぶつけるけれど。

いつもとは違う口元だけの笑み。質問には答えず。私達から視線を逸らして。


茉莉香まりか、知っていることは話して。俺は生徒会の仕事に戻るから。」


水樹は優しい表情に変わり、橘川さんのベッドに近づいて。

頭にポンポンと手を乗せ、優しく撫でた。


まるで大切な女性を扱うように。

手をのけて、荷物を手にして私を見ず。


「ウサギ、またな。」


何、この違和感。

急ぐように病室を後にしようとして。見せた後ろ姿。


「水樹、あなた……。待って!」


引き留めるために声をかけたけれど。

振りかえることなく。


「……面会時間が終わるぞ?」


正論だけを言い残し去っていく。

このとき、面会時間なんて気にしなければ。水樹を引き止めておけば、状況は変わったかもしれないのに。

後悔するのは少し後のこと。



「橘川さん。話を聞かせてください。」


荊は、励治の指示通り聴取を始めた。

水樹との接点がなく、私のような疑問もなく。時間がないのは本当だから。


橘川さんは、私を一度見て。

視線を落として、小さな声で答える。


「実は、北條くんを呼び出したのは私なんです。でも、待ち合わせに行ったら……血を流していて……うっ……ごめんなさい。」


武が目撃した髪の長い、立ち去った女の子は橘川さんだった。

現場に残されていた【花冠】のクッキーも。


「もっと、当時のことを詳しく教えてください。」


泣かれても困る。

きっと、武に対する感情が複雑に入り混じった苛立ち。嫉妬のようなもの。

この事実を、もっと早く知っていれば……。


「私、人を呼ぼうと思って。体育館から出て人を探して、生徒会のバッチ付けた女の子に救急車をお願いしたの。その後、職員室にも行って。人に伝えた安心か、衝撃が大きかったからなのか貧血で保健室に運ばれて。気がついたときには、現場検証の騒動で警察に話しかけても相手にされなくて。帰り道に『髪切り』に遭うし。病気も悪化して。」


これは泣いても仕方ない。私が悪いです、ごめんなさい。

なんとも間の悪い。いや、その中に偶然ではない何かあるのかも。


「その生徒会の女の子。名前や特徴は?」


「さっき、み~君に聞いたんだけど……知らないって言うの。その女の子は私と同じぐらいの髪の長さだったから、髪を切ったかも。」


まさか彼女だろうか?


「少し、気の強そうな綺麗な子?」


「生徒会のバッチのせいかもしれないけど、しっかりした印象の綺麗な子でしたね。」


何かが繋がりそうで、変な違和感。嫌な感じ。じっとしていられない。

聴取は、水樹の方が詳しくしているような気もするし。面会時間も僅か。今日は切り上げた方が良いだろう。


「橘川さん、話してくれてありがとう。また再聴取があるかもしれないけれど、今日はここまでで帰ります。お大事にね。」


口早に済ませ、病室を後にした。

私の後ろをついてくる荊に、歩きながら。


「荊、学園に戻ろう。嫌な予感がする。」


この何ともスッキリしない違和感。ずっと考えがまとまらず。

そんな私に、荊は何か言わなければと思ったのか。


「凌子さん。武さんは、もう退院して登校しているんですよね。状況聞きますか?」


私に武を会わせようとしたのかもしれない。

幼馴染だから、学校以外でも会うのだけど、荊は知らない……

凶器が発見されて、髪切り事件も間隔があいているのもあり学園から通常の登校許可が下りた。

自己責任の中、通常の授業が開始され。


武は。そうだ、初めの被害者。

凶器の発見。武を殴ったのは橘川さんではない。これって……


病院から出て、足を速めて走る。後を訳も分からず付いてくる荊。

私は走りながら携帯を掛けた。


「武、出てよ。どうして」


コール音が続いて出ないかと思えば。

聞こえてきたのは。


「卯佐美、彼を預かっている。一人で生徒会室においで。」


電話に出たのは武ではない。

この声……




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