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A【学園シリーズ】情報屋Kの恋愛簿  作者: 邑 紫貴
花冠の伝説

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22/81

検証


体育館倉庫は、警察の現場検証が終わっている。

テストも終わった放課後、部活が普通に行われていた。


表の警備として立ち入りの許可を受ける為、生徒会室に足を向ける。


【コンコン】「失礼します。」

私は返事も聞かず、いきなりドアを開けた。


「きゃあ!」


逆光でも分かる。男女の重なり。


「不純異性交遊は禁止ですぅ~。撤収!5分しか待ちませんよ。」


女の子は乱れた服を戻しながら、慌てて部屋を出る。

ここをどこだと思っているのだろうか。


「会長、体育館倉庫の立ち入り許可の書類に、判をお願いします。」


会長は上着のボタンが外れたまま。

私を見ながら含みのある笑い。気分が悪い。


「ね、君さ~。ウサギちゃんでしょ?」


「判、ください。」


少しの沈黙。

お互い相性が良くないようだ。腹の探り合いのような時間が続く。

私は顔を引きつらせ。


「何が、ウサギですか。バカじゃあるまいし。」


「ウサギちゃんは、判が欲しくないのかな?……俺さ、デザートの途中だったんだ。機嫌、悪いよ?……あぁ、何?君が代わりに、相手……してくれるの?」


最近、男運がないようだ。

逆切れとかいい度胸じゃない。


「覚悟はいいですか?触れたら、痛い目……見ますよ?」


一歩足を下げ。回し蹴りも出来る距離感。


「ふ~ん。気にいっちゃったかも?」


冗談だよ、とでも言いたげな視線。

生徒会長の噂は聞いていたが、ここまでとは。


私は机上の判に手を伸ばし、書類に押す。


「邪魔されたくなければ、今度は鍵を忘れずに!」


用が済んだので、背を向けて。

部屋を出ようとした。


「ふふ……、わざとだよ。君が来るのを知っていたから。ウサギちゃん、またね~?」


呆れて何も言えない。

振り返らずドアを開ける。


【バタンッ!】

部屋を出た後、思いっきり閉めた。


蒼井あおい 水樹みずき。同じ二年生。成績順位10位以内。

最近の横領事件で交代した、新任の生徒会長。


何がウサギだ。私は、卯佐美!気分が悪い……。



そういえば今朝、情報屋から入ったデータの中に不思議な物があったな。

……クッキー。武に渡すプレゼントだったのかな?それとも誰かの糖分補給?ただの忘れ物だろうか?



許可の書類は持っているので、遠慮なく体育館に入る。

部活はバレー部だけ。端を通り、倉庫へ向かう。

鍵は生徒会室に行く前から持っていた。会長が不在や拒否で判がなくても、強行突破するつもりだった。


鍵を開け、扉を開いて中に入る。

割と明るい。窓からの光が差し込み、時間帯は違うけれど日中は明るかっただろう。

武の見たのは間違いなく、事件の関係者。


犯人の心理状態は、もう一度現場に戻る。とか聞いたことがある。

何かを落としたのであれば。尚更?


……武が怪我をしたと聞いて、心臓が止まるかと思った。

詳細で迅速な情報に安堵し。役員で良かったと思う。


必ず犯人を捕まえてやる!


学園の管轄を担当する刑事は励治もそうだが、優秀な人ばかり。

ここに手掛かりは何も残さないだろう。


体育館倉庫を出て、鍵を閉める。


当日の部活はなかった。けど鍵が開いていた。

鍵を簡単に怪しまれず、手に入れることが出来る人は限られるはず。


励治は、どこまで捜査が進んでいるのだろう。

この時間に姿を見せないなら、今日は来ない。気を遣ってくれたか、本当に忙しいか。


考え事をしながら歩いていたら、いつもの場所に来ていた。

庭園B。温暖化対策で、学園内に幾つも庭園が設置されている。その内の一つ。

春に見事な桜を咲かせる大きな木。


あれ?幻覚かな。入院しているはずの武が見える?

黙ったまま木の横に立ち。私を見つけて、ため息を吐くような仕草。

幻覚ではない本物。


「武、どうしたの?」


走り寄る私に武は無言で。私の口に手の平を当て。

うるさかったのだろうか。


見上げた私を誘導して、木にもたれさせる。

武は顔を近づけ目を閉じ。私の口を押えている手の甲にキスをした。

目を閉じた武が近く、本当にキスしているように思える。


ゆっくり目を開けた武は、悲しそうな表情。

突き刺さるような胸の痛み。息もできないような息苦しさ。


顔の距離が広がり、手の平も私の口から離れる。


「……ごめん。」


武は視線を逸らし、走って去っていく後ろ姿。

私は、もたれていた木に身をあずけるように座り込んだ。

涙が溢れて零れる。


聞いたんだ。私が、励治とキスしたことを。

励治は今日、武の所に行っていたんだ。


武……私のこと、好きだから来てくれたんだよね?

この唇に触れないのは、励治とのキスが許せないから?

武は信じてくれるかな?


私が好きなのは、あなただけ。

あなたは私の気持ちを、どう扱う?


武は何故か、励治に気後れを感じている。

今、想いを伝えても……あなたは素直に受け入れてくれるだろうか?


強引に、私の唇を奪って欲しいのに。

この唇に残る感触、体温を……消して欲しいのに…………




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