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A【学園シリーズ】情報屋Kの恋愛簿  作者: 邑 紫貴
花冠の伝説

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21/81

・・


励治と一緒に病室を出る。

私が無言だからか、励治も口を閉ざしたまま歩く。


病院の出口を通り、外に出た。

もう日も暮れ、暗くなっている。


「励治、あまり武を刺激しないで。」


「ね、俺が本気なのを知っていて言うの?」


励治は真剣な表情で、私との距離を詰め。

病院の玄関、雨よけの壁に逃げ道を塞がれ。彼の両腕の間。


身動きが取れず、うろたえる。

まさか励治が、ここまでするとは考えていなかった。


「励治……?」


「何、意外な顔してるの?」


分かる。いつもと違うのが。


「知ってるよね?私が好きなのは……っ……!」


いきなり口を塞がれ。強く押し当てられる励治の唇。

両肩を手でおさえられ。必死で抵抗するがビクともしない。


信じられなかった。

油断じゃない。前に助けてくれたから信用していたんだ。

自分の失態。心が傷ついている。


「……っ……うぅ……」


涙が止まらない。好きでもない人とのキス。

勝手に励治を信じていた私……。


「ごめん……。君が、俺が大人だからと信じてくれているのを知っていた。でも、本気なんだ……凌子……。」


肩にある手が熱い。

怖くて、励治の目を見る余裕などなかった。


「むしろ冗談だと思っていたの。だって、いつも触れるのは……」



「きゃぁああ~~」


女の子の悲鳴。

割と近い。


励治は私から離れて、走っていく。もちろん私も走って、後を追いかける。



近くの公園に人影。


「大丈夫か?」


声をかけた励治は現場を見渡しながら、警察に要請の電話。

私が追い付いたのを確認して、周辺を捜索。


私は女の子の傍に座り込み、声をかける。

けれどパニックなのか、震えて泣いたまま。


目にした髪が、乱雑に切られていた。

私にも震えが生じる。


この事件が繋がっていたなんて。思いもしない。


公園付近に、複数のパトカーと警察関係者。

騒然となる中。


「凌子、危ないからパトカーで送ってもらう。今日は大人しく、乗って帰ってくれよな。」


私は黙ってうなずき、パトカーに乗り込む。

緊張感に、冗談など言える雰囲気もなく。


励治は、もう私を見ていない。仕事に本気で取り組む大人。

背中を見て知っていた。どんなに冗談を言っても、踏み込ませない大人の壁のような距離。


励治は頭がいい。やれば、何でも出来るだろう。

それでも学園に近い仕事を優先しているのは、何かに反抗しているから……?



パトカーの中。

警察の制服を着た女性二人の会話が聞こえる。


「励治さん、かっこいい~よねぇ。久しぶりに見た。」


「ふふっ。私も久々に見たから嬉しい。でも!噂では、本気の人がいるみたいよ。そんな話を……~」


私は視線を窓に移し、外を見ていた。


外は闇。

通り過ぎていく景色。


励治……大人の励治が、本気?

彼が私に触れるのは、必ず武が近くにいるか役員の見ている時だった。

今日は腰だったけど、そんなに触れていない。私が反撃するのを想定した行動範囲。


私と違って、励治は大人……。

何か、理性で考えての言動。


パトカーが家の近くを通る。


「そこの門で止めてください。……ありがとうございました。」


パトカーを見送り、敷地に入る。

そして隣の家の二階を見上げた。


部屋に明かりは点いていない。武の部屋。

いつから恋愛感情に気付いただろう?私の好きな幼馴染。幼いときから、ずっと一緒。

武……私のこと、好き?



家の鍵を開ける。

私の父は警察の関係者。帰らない日もある。

母は幼いときに亡くなった。寂しい家。考えるには、丁度いい自分の部屋。


はぁ……。ため息を吐き。キスされた唇に触れる。

男の人の唇も、柔らかいんだな。知らなかった。


本当は、分かっていなかった……励治のこと。

大人だから、私なんて本気で相手にしない。私の気持ちを優先してくれると。


励治に初めて会ったのは……結南学園の、前校長の横領事件の時。

学園の警備として、担当の刑事である励治に報告をした。

事件は無事解決したけど、私は一時捕まっていて。救出の際、励治は初対面の私を何故か、いきなり抱きしめ。


「心配した。」


いきなりの状況についていけず。

その後。


「気持ちいい……。」


何て、ふざけて。

私は思わず。


「離して。大丈夫だから。」


そう。今と同じ。何も考えず、彼のお腹に膝蹴りをしてしまい。

まるで、私をいつからか見守っていたかのような。変な感覚。変な出会いの始まり。


励治は私のことを、もっと以前から知っていたのかも。

いつの間にか、私が武を好きなのに気付いた。


励治は、何かにつけ学園に出入りしている。警備の私との接点が多い。

いつも武と一緒にいるとき、励治もいることが増えた。

武は励治が苦手のようだ。いつも言いたいことを飲み込んでいるよう。

武は、私の気持ちを……どう思うかな…………






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