裏風紀
1階廊下にて友人、須藤 敬一に話しかけられる。
「……ケイ、5組の奴が捜していたぞ?」
「あぁ、さっき会ったけれど。またKと間違えられただけだ。」
窓の外。
木陰にいる人物を見つける。
「どうした?」
「いや、教室に忘れ物をしたみだいだ。先に行ってくれ。」
昨日、情報を渡せなかったから。
嫌でも来るはすだ。
見つけた木陰に走り寄り。
「昨日は、ごめん。」
「何の事?……それより情報!」
茨は情報を暗記し、俺と視線を合わそうとしない。
「学園に私の情報なんて、あったのね。」
遠い目で空を見た。
涙が流れないように、我慢している。
「意図的に消された、情報のカケラだ。……しの。大柳 志乃は、俺の幼馴染。ずっと、幼い頃から好きだった。彼氏は、俺の親友。二人はとても大事な存在で、幸せになって欲しい。告白なんて出来なかった。」
荊は、彼女の名前を聞いても反応しなかった。
これだけ似ているんだ、関係があってもおかしくない。
「……ふん。こんなことで、昨日のことを無しに出来るとでも?」
「……ふっ、厳しいね。」
少し機嫌が良くなったのは、気のせいではないかな。
「K……あなた、名前は?」
「武知 恵」
「じゃ、メグ……またね。これからも情報よろしく!!」
メグ……久々に呼ばれたな。今でも、志乃だけが呼んでいる。
小学生の時。漢字を学んで、みんながケイと呼ぶようになった。それからずっと。
最近、みんながケイと言うのが普通だったから、忘れていたな。
……いや。無意識に、誰からも『メグ』と呼ばれたくなかったのかもしれない。
だから、情報屋のコードはKなんだ。
未練だらけだな。
今回の情報は、私立結南学園。中等部・高等部の校長。汚職の噂。
危険度は高い。
「ケイ?お前も、サボりなの?」
「も?て、夏……」
光田 夏希。
もう1人の友達。
「大丈夫。保健室に、行ったことになってるから。」
「あぁ……。俺は授業出るよ。間に合うルートを、知ってるんだ。」
「じゃ、昼に!」
裏風紀の任務。
背の低い彼は、今成長中。156センチ。みんなに可愛がられてる。
性格は、本当にいいが、1人に対しては違う一面を持っている。
まだ隠しているので、彼女は苦労するだろう。
「ケイ君。夏希くんは?」
「あぁ。保健室らしいよ。」
ね、真庭 優香里。
「……?」
「どうしたの?」
「いいえ。ちょっと、寒気が……?」
敬一も、任務だと知っている。
「……またか?」
「あぁ。」
夏は、学園の裏の風紀。
敬一は、表の風紀。
「この冬北でも大変なのに。」
「結南の件か?」
「……あぁ。昼休み、夏も例の部屋に呼んでいる。」
学園が用意した一部の人間しか知らない特別な部屋。
俺は、表の情報屋として参加していた。
裏の事は、命に係わるから教えていない。
「敬一、妹は大丈夫なのか?」
「……彼氏が出来た。」
「知ってる。」
須藤 瑠衣。敬一の妹。血のつながりは無い。
それを妹が知っているとは、まだ敬一が知らない。どうして付き合い始めたのかも。
「いくら仲良くしていても……離れなければいけない時が来る。」
本当は、想いは通じているのに。
情報は濫りに出せない。
「裏風紀会の前に、内通者について報告する!」
表風紀会長、敬一。
「一名。結南に出入りしていたのを捕らえた。裏の警備からの報告に、裏の風紀が確認。現在、調査班が取調べ中。結南の活動が活発化。厳重な注意をして欲しい。」
裏風紀会長、夏。
任務は、この件だった。
裏の警備、荊に情報を渡したのがK。俺だ。
彼女の初仕事が順調で安心した。