荊
安西 荊。
私立結南学園。中等部3年2組。
大柳 志乃のクローン。
5年前、安西 野茨が、亡くなったクローン……月の存在を知った。
亡くなった事実を隠そうとする画策に乗じ。名の無い私を、荊として存在させた。
正式な年齢で、海外にて普通の生活を学ぶ。
同じ時期に造られた由は、優香里の代わりとして育てられたので一つ上の年齢。
学年も上になっているが、本当は同い年。
由と同様に閉鎖的な環境で、本体と同じ教育を受けた。
私は病気を発症し、志乃への臓器提供が出来なくなり存在意義を失う。
博士が、診断書を偽造したのだと教えてくれた。
今思えば、このことがなければ自由はなかっただろう。
自由。確かに恵は、私を自由にした。
クローンとしてではなく、一人の女の子として存在する。安西 荊として。
ありがとう。生きていける。これから独りでも、誰かに存在意義を求めなくても。
大好き……恵。
あんな一瞬で、志乃がメグと呼んだことを私が気にしていることを悟った。
あなたは、とても優しい人。
この騒ぎが大きかったので、私は日本を離れる事になった。
もちろん海外に安全があるとは限らない。一時的。
麻生グループの力で、すべてが解決するまで。
恵……野茨姉からきいた。
私が連れ去られ、懸命に捜してくれたと。そして志乃のことを、忘れていたのだと。
志乃には悪いけど、少し嬉しかったんだ。それだけ私の存在があったのかな。
恵……あなたの目に私は、どう映る?
教えてね。会いに行くから。
きっと。
side恵。
「で、お父さんは何て?」
「あぁ、家の中では節度を守るように言われたよ。」
敬一は顔が真っ赤。
う~ん、節度が守られているのかは聞かないでおこう。
父親に報告した後、どうなったのか。心配するほどでもなかったけれど。
誰かの幸せを聞けるのは良いことだ。
「そっか。結婚式には呼んでくれよ?」
「ふふ……あぁ、まだ先だろうけど。」
敬一は、俺に荊のことを聞かない。
何か言いたそうだが。口を閉ざす。
「瑠衣は結局、情報屋になってしまったな。」
「あぁ。本人の希望だし、墨がついているから。」
夏が走ってくる。
「ケイ。由が今日から登校だよ。」
学園の力を最大限に使って。
事後処理も終わって、落ち着いてきたんだと実感する。
「良かったな。」
笑顔の夏に、敬一は笑いながらも。ため息を吐き。
「頼むから、暴走とか闇討ちは止めてくれよ。」
「約束はできんな!」
堂々と何を言うやら。
笑ってしまう。
実は、由の事は慧から聞いていた。
今、慧は野茨と連絡を取っている。俺は、時間が解決してくれるのを願うだけ。
麻生グループ。学園の組織。役員級。慧・墨・野茨……他の人員が総導入されて。
庇護の強化。規模が違う。
いつか、俺もその役員の中に入ってやる。荊を護るために!
「おっと、時間だ。待ち合わせしてるんだ、また詳しく聞かせてもらうよ。」
敬一と夏の幸せを願い。
護る人を意識して。
麻生学園の中枢。
一つの基地。
待ち合わせの相手は、荊にも指示を出していたボス。
「ボス……久しぶりだな。今日は、何の情報なんだ?」
「あぁ、護って欲しいモノがある。」
「何だ?」
「ふふ……慌てるな。そうだな、まずは報酬の交渉から。ぷふ……おいで。」
意味深な笑みで。
呼びかけに応じ奥から現れたのは……
「これでは不足かな?」
少し照れた顔の、懐かしい女の子。
「荊!」
「ただいま。恵!」
突然の再会。
これがボスによって仕組まれたものだったとしても。
俺たちの恋愛簿は続く…………




