恋愛簿3
武知 恵。
私立冬北高等学校一年A組。
情報屋K……裏の情報屋。表でも情報屋として活躍。
家族はいない。
父・母・弟が幼いときに事故で亡くなった。
初恋は、大柳 志乃。
私立冬北高等学校一年3組。幼馴染。荊のクローンの本体。
彼氏、也田 隆は……親友。
冬北のA~C組は特進クラス。1~3組は、商業科。
隆は4組。4~6組が工業科となっている。
大きい高等学校だから、二人に会うことは少ない。
特進と商業・工業科は校舎が離れているけれど、二人の仲がいいから情報はすぐに入る。
中学2年のとき、志乃は隆のことが好きだと自覚した。
両想いの二人が幸せなら良かった。
荊の唇を塞いだキスは、今でも俺には理解できない。言い表せない。
荊は信じてくれるだろうか。
志乃に重ねてした?
いや、初恋だと言ったが。そんな対象ではなかった。
身内のいない俺に、優しくしてくれた大切な女の子。緩やかで、時に妹のような存在だった。
俺は、あの時から荊を求めていたのかもしれない。
あの強い瞳に、惹き付けられていた。
忘れない。志乃とは違う、今を生きている輝き。
どうすれば信じてくれる?
「荊……また情報が遅れた、ごめん。」
「……ううん、大丈夫。博士と話が出来たし。いずれ、こんな時が来る覚悟はしていた。」
なんだ……?
違和感がある。いつもと違う視線。
「荊、何か俺に隠していることでもあるのか?」
荊は俺の目を見ない。嫌な予感がする。
「荊、俺の目を見て?……友達だよね?言って、何を隠しているのか。手に、何か……」
荊は右手をさっと後ろに隠す。
「出して。」
詰め寄る俺に、泣きそうな顔で首を横に振る。
これを奪わないと、俺が後悔する。
「……や、駄目!何でも無い!」
触れない約束は無視した。
荊の体を抱き寄せ、右手の手首を掴む。
「嫌だ!……止めて、痛い……」
無理矢理、手の指を開く。
持っていたのは薬……
「返して!!」
やっと目が合った。
たくさんの涙。その瞳の強い輝き。荊が薬を握り締め、俺に隠して……
考えることは一つ。命を絶つつもりだったのか。
「どうして!何故、荊が……消えることを選ぶんだ?どうして……」
俺の目からも涙。自分が情けない。悔しさ。
何度も危険に晒して、荊を護ってやると言えない。力もない。
今回のように、何度も荊は危険にさらされるだろう。
「……どうして泣くの?」
荊は手を伸ばし、俺の頬に触れる。
そうか、もう一つの違和感。
「荊、俺の名を呼んでいない。志乃がケイと呼んでいるのを聞いたよな。同じ呼び方が嫌なら、これからは恵と呼んでくれ。ふふ……」
思わず笑みが漏れる。
志乃を意識して、俺を呼びたくないなんて。特別になったようで嬉しい。
俺の笑みに、荊は微笑みを返す。
「……恵。」
真っすぐ見つめ。荊が俺の名を呼ぶ。
抱きよせ、込み上げる想い。
「荊、俺の気持ちを信じて欲しい。護れないかもしれない。それが怖い。荊の代わりなんていないから。俺のために生きて欲しい。消えないで……荊が好きなんだ。」
荊の耳元で囁く。
「……うん、消えない。約束する。恵……好きよ。私を好きになって……」
「これから、ずっと荊が好きだ。もっと好きになる。何度でも言うよ、信じて……」




