狙われたモノ
side荊。
……ここは?
「あ~、気がついた?大丈夫?」
この声……志乃!?
「……大丈夫……。」
無難に返事をしたけれど。状況がつかめない。
周りを見渡す。
割と綺麗な部屋。ホテルにいるような整った家具。
でも監禁用だろうか?窓には厳重な格子。ドアには幾つもの鍵穴。
「……本当に大丈夫?」
「えぇ。あなたは、大丈夫なんですか?」
初めて会話をしたけれど。何か、のんびりした人だ。
私に微笑み。
「……私は、大丈夫。だけど、大切な人が……大丈夫かな……」
一瞬のうちに涙が溢れ、ぽろぽろと零れ落ちる涙。泣き出したら止まらない様子。
あぁ、張り詰めていたんだ。
目が覚めない私を、ずっと見ていたのだろうか。しかも自分にそっくりな。
どれほど不安だっただろか。
彼女を抱きしめ、そっと頭を撫でる。
「きっと大丈夫……。」
目的は私……と、あなた。
いつか来ると思っていたけど。まさか、いきなりとは。
志乃は私のことを、親類と聞いているだろうか。
こんな状態で告げたとして納得するかな?
「……ありがとう。優しいのね。あなた、荊ちゃんよね?」
「うん。」
志乃の次の言葉を待つ。
どこまで、どんなふうに聞いているのか。
「親類に、そっくりな子がいると聞いたわ。……でも知ってる。ごめんね。何て言っていいか……あなた、私の……」
知ってるって。
それは……
「お父様の、隠し子なのね?」
……はぁ?何も知らないと、そんな発想になるんだ。
思わず、眉間にシワ。
何も知らないくせに。
そう、知らずに生きてきた。それが当然なのかもしれない……
「こんなに似てるのよ?親類なんて、ね?」
平和な環境で育ったら私も、こうなのかな?
どう答えたらいいの?
「……えっと、じゃあ……この状態は?」
志乃は、自信満々で。
「金銭目的ね!……お金の話を、男の人達が言ってたから。それか、お父様に恨みのある人?……まさか、まだ隠し子が?」
「ははは……。」
どうしよう。思わず笑ってしまう。
志乃の代わりなんて、とんでもないな。確かに、見た目は同じ。でも、ここまで違うとは。
メグ、疑ってごめんね。
代わりにはなれない。少し話しただけで、誰でも分かる。
「志乃……。これから犯人と話をする時、真実が分かるかもしれない。……今は騒がず、体力を残しておこう?」
志乃は、キョトンとして。
「……うん。」
返事は小さな声で。
格子のある窓を見つめ。分かっていない状況でも、不安を見せず。
メグは志乃みたいなのが好きなんだよね。
……無理だ。メグは私を好きにならない。
凌子さんが、封筒の中身を私に渡してくれた。
葉書サイズの紙に、荊を守る盾の絵が描かれている。
いつか独りになるのだと思って生きてきた。誰かに護られるなんて。
これからの未来。考えたことが無い。
確かに、今は野茨姉に甘えている。けれど基本的には、いつか独り。
自分の身は、自分で護る。そう教育されたから……
【ガチャッ】
鍵が開いて。重いドアが開く音。
「入れ!時間をやる。中の奴と、話をつけとけ!」
怒鳴り声と共に、一人の男性が部屋に入れられる。
見覚えのある人……博士?
信じられなくて、言葉が出ない。
死んだと聞いていた。どんなに情報を集めても結論は同じだったのに。
「……3号と、本体か。まさか今になって会うことになるとは。皮肉なものだ。」
月と由、そして3人目か……
番号で呼ばれるのも、本体呼びもどうなんだろうか。
「さて、何から話そうか……ん?本体は寝てるぞ?起こすか?」
え、いつの間に?
聞いていないのなら。そのままがいいのかもしれない。
「彼女は知りませんから……。今は時間が惜しい。すべて事の成り行きを教えて下さい。」
すべての始まり。何故、クローンなんか……?
私たちは、どこに向かう?存在意義は見つかるのか……希望は、あるのだろうか…………




