夏希
side:夏希。
保健室。
「夏希くん、また体調が悪いの?」
心配して俺に駆け寄る。
保健室は二人だけ。警戒心は無い。
「……?」
彼女は……本当の俺を、知らない。
「ん。成長中で、体が痛いだけ。……ね?」
俺は体を近づけ密着させる。
「ホントだ!」
腰に手を回し抱き寄せ。俺の額と、優香里の額が引っ付いている状態だ。
それなのに。
「私と、並んだね。」
余裕なのか、にっこり笑顔。
「……でしょ?」
心折れて。そっと離れる。
……男として見て欲しいな。わざとじゃないよね?俺のこと……信用してるの?
優香里は、背が高い。やっと、同じ163センチ。
俺の家系は成長が遅いけど、背は高い。並べば、少しは意識してくれると期待していた。
どこまで、手を出しても大丈夫だろうか……。
背が低いときは、胸に触れても大丈夫だった。
揉んだら……さすがに駄目だよな?
はぁ……。
他の男が、髪に触れても笑っていた。
冗談だと思っている?髪にキスした奴なんかに、『汚いですよ?』とか言ってたし。
自覚がないのかな?自分が綺麗な女の子だと、思ってもいない。
俺が、こんなことを考えているとも知らないで……。
「夏希くん、可愛いね。」
額にキス。
子犬扱いかな?
「……優香里?俺も、一応男だよ?」
反応を見る。
「ん?……ふふ。知ってるよ。」
最高の笑顔。
可愛い!!
俺の理性は……いつまで持つのか。
……分かってないよ。あぁ、押し倒してみたい……。
柔らかい体を、抱きしめて。きれいな肌に触れたい。どんな味がするだろう?
「夏希くん?聞いてた?」
……いいえ、全く。
「何?もう1回。」
「私たちが、付き合っていないって言ったら……友達が紹介してって」
優香里の言葉に、俺の何かが切れた。
軽く、優香里の足を払う。
【ドサッ】
優香里は近くのベッドに転がる。
「……?」
優香里は、何が起こったのか分かっていない。
彼女の両手首を左手で掴む。
【ギシッ】
右手と左足は、ベッドの上。
優香里は、上にいる俺をじっと見る。表情は、変わらない。
なぜだ……?
じっと、見つめる彼女から何も感じない。
【ポタ……】
情けない……涙が出る。
掴んでいた彼女の手を離し、目元を隠した。
「……優香里。俺の気持ちは……どうしたら良い?」
「夏希くん……。」
優香里は起き上がり、俺の頬を伝う涙に触れる。
そして胸元のリボンを外した。
「?」
上着の両裾を引っ張ると、勢いよく前が開いて……白い肌に、可愛いブラジャー。
「ゆか……」
優香里は俺の後頭部に手を伸ばし、引き寄せる。
胸の谷間に、俺の唇が触れた。
「……いいよ?」
優香里の顔が見えない。
良い匂いがする。柔らかい。夢見た状況……だが、望んでいるものと違う。
優香里……?
【コンコン】
ノック音に驚き、優香里から離れる。
「夏、緊急だ。来てくれ!」
ケイ?
「わかった、すぐ行く!」
良いタイミングだった。
「優香里……。話は、また……。」
表情は、見なかった。
怖くて。自分の感情が追いつかない。
「ケイ……」
保健室を出たすぐ。
落ち着いて立っていたが、不安そうな顔のケイ。
「場所を変えよう……。」
急ぎは無い……か。
俺に、用事。この状況からの助け。
俺も……敬一も言わないが、知っている。ケイが、裏の情報屋Kだと。
優香里の情報……なのだろうな。
人気の無い場所。
「ケイ……。気にしなくていいよ。良いタイミングだった。まだ、気持ちの整理がついてないけど……情報をくれ。多分、その方がいい。」
ケイも、まだ整理がついていないのか……?
「あぁ。どこから話せばいいのか……。待ってくれ。」
優香里が……クローン……?
閉鎖的な環境で、限られた情報。受けることが無かった愛情。
感情の欠如が、生い立ちを裏付ける。
俺は、優香里にとって……何?
あんなに簡単に、体を差し出して……。
「夏。しばらく、ここを使うといい……。」
ケイは、静かにいなくなる。
……独り。




