表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A【学園シリーズ】情報屋Kの恋愛簿  作者: 邑 紫貴
情報屋Kの恋愛簿

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/81

造られたモノ


「今から5年前。慧は、ある事件の情報を手に入れた。犯人はその情報を取り返すため、私を狙った。人質に取ったものの、すぐに追い詰められ一緒に海に飛び込んだ。あなたは遠くて気付かなかった。その子が、月。私の……クローン。私が生れた後すぐに造られた。一年違いで生まれ、私と同じ教育を受けた。しかも閉鎖的な環境で育つ。私が知ったのは、事件の後。家の中は異常な緊張感で私が気付くほど……。月が死んだ事実をもみ消そうとして、騒動は大きく……すべては、おじい様の仕業だった。安西家の女性は短命。血筋の大柳家も同様。私は、悲しい生き方をしている月が存在していることも知らず。会ったこともなかった。死んでいたのは……私。だから消える覚悟をした。死んだのは、私。慧と……幸せに生きることは出来ない。慧……あなたが私を殺したのだと、そう思えば生きてこられた。もう会うことも無いと思っていたのに。おじい様が亡くなって、親族の同情から日本に呼び戻されるなんて。すべて遅いわ。狂いすぎた。収拾をつけながら、傷は……広がっていく。私も加害者……。」



幸せになることをあきらめ、それを突き付けるような言葉。

『慧……あなたが私を殺したのだと、そう思えば生きてこられた』


今回の失敗、私も一歩間違えば凌子さんの命を奪っていたかもしれない。


「……慧、今日は引き上げる。」


メグは慧さんを、連れて出て行った。


残された二人。

月姉は涙を浮かべて微笑む。


クローン……月は本体の為に死んだ。そのために存在し、造られたモノ。

本来なら存在してはいけないモノ。


「荊……。あなたは私の妹。絶対、幸せにする。もうすぐ志乃は、あなたを親族として受けいれる。事実は隠されたままで。」


月姉……野茨姉が、経験したように。私の本体、志乃も傷つく。

私の幸せ……?それは何だろう?


「これからは、野茨姉って呼ぶね。……月は役目だ。死ぬまで野茨姉の為に存在した。生きた証だよ。私なら、それを望む。」


野茨姉の涙を初めて見た。

いつか、きっと……野茨姉の傷が癒えたら、慧さんとの未来もあるだろう。




次の日。

校長が逮捕された為、結南学園は臨時休校となった。


凌子さんに謝りたくて会いに行きたかったけれど、事後処理が忙しいみたいだ。

気にしないでと、返事は来たけれど。


逮捕の時に証拠が出たから、私は無事でいられる。

調査も進んで、むしろタイミングは良かったのだと言われたけれど。

問題はそこじゃない……


仕事を任せてくれたメグにも、謝らないと。

信頼してくれたのに、がっかりしたかな?……嫌われたらどうしよう?



冬北高校。

裏庭の木陰に座って、メグは読書中。


周りの気配を確認して近づく。


「メグ……?」


そっと声をかける。


「荊?……どうした?」


メグの優しい微笑みに、胸がキューっとなる。

その意味も理解できず。分からない感情に戸惑った。


「荊、体調悪いのか?顔が、赤い……」


「ううん。昨日のこと、謝りに来たから。緊張してるの……」


多分、それ以外の何かなど私には分からない。


「謝らなくて良いよ。あれは罠だったんだ。むしろ情報が遅れて危険にさらした。俺の方こそ、ごめんな。無事で安心したよ。」


「でも……」


「凌子も荊を気にしていた。これが裏の危険なところなんだ……凌子の事後処理は2・3日で落ち着くだろう。その頃に会う日時の連絡が来るよ。」


優しい人。温かい気持ちになる。

悔しい……こんなに優しい人の心が、私のものではないなんて。


欲が出る。

……いつから?こんなに望むようになった?


野茨姉は言った。自由にしてくれると。

嘘だ……窮屈で堪らない。


「荊、ここに座りな?今日は、ゆっくり出来るんだろ?」


「うん……。」


昨日のクローンのことには一切触れない。メグは知っていたんだ。

彼女の代わりに……私がなれば?

嫌……嫌だ、嫌だ!絶対に。


この優しい目は、彼女を見ているんだ。

誤解しちゃダメ。


「荊、そういえば……願い事は、決まった?」


ドキッ……

考えてない。考えたけど、思いつかなかった。


「……友達になって。」


口から、自分もびっくりする言葉が出た。

そして涙。


「……ごめ……。まって……」


言葉が上手く出ない。

メグは、優しく私の頬を撫でる。零れる涙を指で拭い。


「……荊。」


優しい声。

顔が近づいて、メグの目が細くなり……色っぽい。


私の唇に。

柔らかいメグの唇が触れる。


メグが私に……


「嫌っ!」


「ごめん。」


メグは顔を赤くし、謝った。

それは。


「……何に対して」


誰に対して、ゴメンなの?


「荊?」


優しい人……その優しさが私の心を乱す。


「……名前を呼ばないで!嫌だ。誰を見ているの?」


取り乱す私の手首に、メグの手が触れる。


「嫌、触らないで!」


私の目にたまった涙が、困った顔のメグを揺らぐように捉える。


「……分かった。友達の嫌がることはしない。約束する。」


……友達……。






Side:恵。


凌子から潜入捜査の連絡が入り、実行時間の直後。

罠の情報を掴み、時間との勝負。罠にかかった二人は無事、救出に成功。

これからこんな想いを何度するだろう。胸が痛い。

志乃のクローン。この事実を知った俺の存在が、君を苦しめる。

どうしたら信じてくれる?

志乃と荊は、俺の中では別人だ。

言葉やタイミングを間違えれば君を傷つけるだろう。

君は、志乃の代わりに存在するから。

俺は荊の存在を否定したりしない。大切だ。命を懸けて護りたい。

信じて欲しい。君が望むなら、ずっと……友達。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ