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深い溝

「スミシー!」


みんながそうぼくに叫んだ。


実際驚いたね。


でっかい転がる岩みたいになったぼくの体は、ドアを蹴破っても勢いが収まらなかったんだ。

 

「スミシー、何がしたかったんだ」


ユダにそう聞かれて、ぼくは彼のことを、ちょっと下手な笑顔で見上げたんだ。


転がった先は、ちょっとした溝があって、ぼくはそこにはまってしまったんだよ。

 

「もう少し慎重に行動するんだ」


真剣なジェラールに抱き上げられたぼくの肩は、溝にはまっていなくっても、狭くなっていたと思うよ。


それに、改めてその溝を覗き込んでみると、下からとめどなく風が吹き上げられていて、そこなんかはない感じがしたから、ぼくの肩は余計に狭まっていたんだ。

 

「にしても、これで余計な心配はなくなったわけだ」


ラバはぼくを一瞥すると、先を見上げながらそう呟いた。


彼の長い金髪が風に吹き上げられて、ちょっぴり崇高な雰囲気を感じさせた。

 

ぼくらは勢いで、何の気なしにその道を進むことにした。


道は四方が完全に、嫌にくすんだ色の石に囲まれていて、ひどい閉塞感がまとわりついた。


通路と読んだほうがふさわしいその道をみんな同じように見上げたんだけど、その先はよくわからなかったんだ。


要するに道は急な坂になっていて、先は見えなかった。


でもよく見ると唐突に石が途切れていて、僅かにひらべったくなった空が見えたりもしたんだ。

 

「どうしたんだい、ルーディー。早くおいでよ」


ぼくは結構無理やり彼女の手を取っていた。


エスコートをしようと思ったんだ。


でも彼女は、その、扉と通路の間の狭い溝を渡ろうとしなかった。


「怖くないよ、こんな溝。そこは深いだろうけど、どうあったって落っこちたりしないよ」


ぼくは精一杯優しく微笑んで、彼女の手を引いた。


でも、彼女はやっぱり溝を越えようとはしなかったんだ。


深い溝なんだよ、全く。

 


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