↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドリーム・エクスプレスに乗って  作者: 三羽高明


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/7

臨時列車ドリーム・エクスプレス号(1/1)

「待って! 待ってよ!」


 走り去っていく汽車を、ヤマトは必死で追いかけていました。


「僕を置いていかないで!」


 汽車はヤマトの声など聞こえないように、大きな音で汽笛を鳴らします。モクモクとした煙が流れてきて、一瞬前が見えなくなったヤマトは、つまずいて転んでしまいました。


 その煙が晴れる頃には、汽車は豆粒のような大きさになっています。ヤマトは呆然となりました。


(どうしよう……。これじゃあ、夢の国から出られないよ……)


 ヤマトは途方に暮れて、どんどん小さくなっていく汽車を見ているしかありません。


 ヤマトが今いるのは夢の国。眠っている時にだけ行くことのできる特別な場所です。


 夢の国にはルールがあります。それは、起床時間までには絶対に現実の世界に帰らなければならない、というものでした。


 このルールを破ると永遠に眠りの世界に閉じ込められ、現実の世界で目覚めることができなくなってしまうのです。


(もうダメだ……)


 ヤマトは泣きそうになりながら、線路の傍にうずくまりました。


 夢の国と現実の世界を繋いでいるのは、「夢の門」と呼ばれる大きなゲートです。ヤマトが追いかけていた汽車……「ドリーム・エクスプレス」は、その門の近くにある駅にとまるのです。


 つまり、あの汽車に乗れば夢の門まで行けるということです。


 でも、乗れなければ歩いて向かうしかありません。ですが、ここからでは夢の門までかなりの距離があります。起床時間までに門にたどり着くことは不可能でしょう。


(おしまいだ……。僕は一生この世界から出られないんだ……)


 辺りに広がっているのは、花が咲き乱れ、優しい色合いの雲が浮かんでいるほのぼのとした光景。


 けれど、そんな穏やかな風景に囲まれていても、ヤマトの心はちっとも晴れません。現実の世界にいるもう会えない家族や友だちのことを考えて、ひたすら絶望します。


 その時でした。どこからともなく汽笛の音が聞こえてきたのは。


 ヤマトはハッとなりました。もしかして、ヤマトが乗っていないことに気付いたドリーム・エクスプレスが戻ってきてくれたのでしょうか?


 ヤマトは線路の先に目を凝らしましたが、近づいてくる車輪の音は後ろから聞こえてきます。もしかして別の汽車かもしれない、とヤマトは思いました。


 その予想は当たりました。さっき去っていったドリーム・エクスプレスと同じ型ですが、車体の色が違う列車がヤマトの前にとまります。乗り口から車掌さんが姿を見せました。


「こちら、臨時列車ドリーム・エクスプレス号でございます」


「臨時列車?」


「通常のドリーム・エクスプレスに乗車できなかったお客様のために、特別に運行している列車です。お乗りになりますか?」


「もちろんです!」


 ヤマトは急いで汽車の中に飛び乗りました。座席に腰掛けると、車掌さんが機関室へ戻っていきます。


「全ての線路は門へと続く。線路がある限りどこまでも走る。出発進行!」


 車内アナウンスが終わると、汽車が動き出します。ヤマトはほっとして、体の力が抜けそうになりました。


 臨時の汽車に乗れるなんて、なんという幸運でしょう。これでどうにか門まで行けそうです。眠りの世界に閉じ込められないで済むと分かり、ヤマトは心の底から安心しました。


「車内販売~。車内販売はいかがっすか~」


 陽気な声が聞こえてきます。後ろの車両から、カートを押した職員さんがやって来るところでした。


「お客さん、何かいかがっすか?」

「えっと……オレンジジュース一つ」


 声をかけられ、ちょうどのどが乾いていたヤマトは飲み物を頼みました。車内販売とは言ってもお金は必要なく、好きなものを注文することができるのです。


「はいよ! オレンジジュース、一丁上がり!」


 職員さんがカートの上段にかけてある布を取って、中に手を突っ込みます。すると、そこからコップに入ったジュースが出てきました。


 ヤマトにそれを渡しながら、職員さんが隣の席に腰掛けます。


「オイラ、ルカっていいます。よろしくっす」


 職員さんは社交的な性格のようです。年はヤマトと同じくらいでしょうか。その背中には透き通ったチョウチョのような羽が生えていました。どうやら人間ではなくて、夢の国に住んでいる妖精のようです。


「僕はヤマトだよ」


 ヤマトも自己紹介しました。


「僕、臨時列車が走ってるなんて今まで知らなかったんだ。これがなかったら絶対に帰れなかったよ」


「絶対、だなんて大げさっすねえ。線路をたどってれば、いつかは門まで行けますよ。もっと気楽にやるっす」


 ルカはのんきに笑っています。ヤマトとは違い、ルカは楽観的なものの見方をするようでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉妹作です。
メアは悪夢の女王様
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。