魔王二天王デミスト(後編)
「つまり、ラティリスが女神の力の一部を使いこなすことができるようになれば、魔王様を亜人に戻すことも可能だということか?」
「そういうこと」
デミストの質問に、エアルが答えた。
因みに、女神の力の話をしたついでに、私の名前も伝えておいた。
「使い方は聞いたけど、まだ使ったことはないから、本当にそんなことができるのか正直分からないんだけどね」
「だったら、俺で試してみるか?」
そう言うと、デミストが右腕を私に差し出した。
「いいんですか?」
「ああ、いつか魔王様を亜人に戻すことになるかもしれない力がどんなものか知っておきたい」
「分かりました」
ファレス様から教えられた女神魔法。
魔の力を浄化することができる。
「女神魔法浄化!」
私がそう唱えると、両手から光が発せられ、デミストの右腕を光で包んだ。
「こ、これは……」
「どうですか?」
「一旦、止めてくれ」
「え、はい」
私は魔法を止めた。
「確かに、魔の力が失われていくのを感じた」
「無事に使えたみたいですね」
これでブラグラ王子にも使える。
「ああ、ただ、今は魔王様のためにも、まだ力を失うわけにはいかないからな。今日はこれくらいにしておく」
「魔王様のことが、本当に大切なのですね」
「フ、大切だった人の忘れ形見だからな」
「そうだったのですか……」
魔族には魔族の事情があるのだろう。
「まあ、俺のことはどうでもいい。それよりも、ラティリスの仲間がそろそろここにたどり着くようだ」
ここまで来る時間が予想よりも遥かに早い。
きっと、必死に追いかけて来てくれたに違いない。
「俺はこの場で立ち去るが、俺が育てたこの魔獣をお前に渡しておこう」
「……か、かわいい……」
渡された魔獣はハリネズミの姿をした魔獣だった。
手のひらの上で愛くるしい動きをしている。
「緊急時に役に立つはずだ」
「ふふ、デミストは見た目によらず、実は可愛いものが好きなんですね」
「見た目によらずとは酷いな。まあ、否定はしないが」
もしかして照れてる?
最初とはずいぶん印象が変わったよね。
そんなことを考えながら、私は思わず微笑した。
「ラティリス!!」
「あ、ルランドって、え?!」
ルランドは私を見つけると大声で私の名を呼び、私を強く抱き締めた。
「無事で良かった!」
ルランドの身体が小刻みに震えている。
そんなに私のことを心配して……
「不安にさせてゴメンね」
私は心から申し訳なく思った。
「いや、俺が勝手に心配しただけだ。ラティリスが無事なら、それでいい」
「心配してくれてありがとう、ルランド」
色々な不運には巻き込まれているが、それを差し引いても、こんなに私のことを想ってくれている人の婚約者になれて、私は幸せ者だと感じた。
次回、『ドワーフ王国』




