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彼女は何も視たくない ⑤

あれから、クラスに帰り柚子葉と秋乃が待つ席へと戻る。二人から、おかえりと声をかけられてもあまり反応ができない。ぼんやりとしながら、残っていた弁当を食べる。

そんな風に過ごしていると、いつの間にか放課後になってしまった‥‥‥


──自分の意見すらまともに言えないなんて、貴方の方が余程幽霊みたいよ


その言葉が、頭から離れない。そんな風に今まで言われたことがなかった‥‥‥訳ではないか。

前にも一度だけ、同じようなことを言われたっけ。


「‥‥‥れい、視霊〜」

「うわっ、びっくりした!」

「視霊ちゃん、どうかしたの?」

「さっきから〜、ずっと〜呼んでるのに〜ぼっ〜としてたよ〜?」

「あっ、ごめん。なんか疲れちゃって」

「お昼休みくらいから、ずっと可笑しかったよね?もしかして、椿ちゃんに何か言われた?」


普通に過ごしていたつもりだったけど、付き合いの長い柚子葉にはバレていた様だ。


「そ、そんなことないよ」

「本当に?」


いつもは、控えめな柚子葉が珍しく積極的に問いかけてくる。その姿を見て、また椿さんの顔が思い浮かんでくる。


──自分の意見すらまともに言えないなんて、貴方の方が余程幽霊みたいよ

──友人にすら幽霊が怖いと言うことを話せない。そしたら、友人が離れていくとでも思っているのかしら


そうだ、柚子葉はこんなに心配してくれてるのに、今まで一度だって本当のこと話そうとしなかった。私、無意識に柚子葉のこと信用してなかったのかもしれない。

何も言わない私を、更に心配した柚子葉が心配そうに見つめてくる。その顔を見て、また胸が痛んだ。私は立ち止まり俯いてしまう。異変に気がついた柚子葉が、私の元に近づき背中をさすってくれた。二人で立ち止まっているのを不審に思った、秋乃も足を止める。

他人の足なんて、久しぶりに見たな。柚子葉の足、小学生の頃より大きくなってる、当たり前か。


猛烈に全てを、打ち明けてしまいたくなった、いや言わないといけないと思った。


私は、手を握りしめて柚子葉と秋乃の顔を交互に見た。


「ねえ、私ね‥‥‥ずっと話したいことがあったの」

「う、うん。ちゃんと、聞くよ」

「私ね、私、幽霊が嫌いなの。小さい頃から、ずっと‥‥‥でも、そんなこといって嫌われるのが怖かった。ずっと黙っててごめん」


私が、頭を下げると顔を上げてと優しい声がした。聞き間違えるはずがない、柚子葉の声だ。


「話してくれて、ありがとう。嫌いになんてならないよ。寧ろ、私は視霊ちゃんが正直に話してくれて嬉しい」

「今は〜多様性の時代って、私のお姉ちゃんも言ってたし〜、珍しいことじゃないよ〜」

「二人とも嫌わないの?」

「思わないよ、好き嫌いは誰にでもあることだもん」

「知らないとはいえ〜華道くんのところに〜、誘っちゃって〜ごめんね〜」


目頭が熱くなった。私は、今までやろうともしないで嫌われる前提で話すのを避けていた。

でも、実際はどうだろう。二人は暖かく私を受け入れてくれて、寧ろ優しい言葉をかけてくれる!

椿さんのいってた通りにだ。やろうとしてないのに、出来ないといってたことが恥ずかしい。

椿さんには、酷いことをいった。

謝らないと‥‥‥そういえば、今日の放課後に除霊に行くっていってた。


「ごめん二人とも、私行かなきゃ!」


私は、それだけいって集合場所の東満星神社へ反射的に走っていた。後ろから、秋乃がいってらっしゃ〜いといつもの調子で声をかけてくれることが、何故だかとても安心した。


東満星神社は、有名な場所なので私も家族で来たことがある。そのため、迷うなんてことはなく、走って数十分で目的地まで辿り着くことができた。

東満星神社前の急な階段を、息を切らしながら登る。大きくて、赤い鳥居の前まで来ると、一礼して境内へと入る。そこには、平日の五時という時間もあってか人が殆どいない状態であった。その中で、箒がけをしている巫女さんを見つけ、参道から逸れて巫女さんの元へ行く。

あのと声をかけると、いきなりの客の訪問に相手は驚いた顔をしていた。

だが、お構いなしに話を続ける。


「ここで、霊媒師をやっている東福椿さんって方に用事があって来たんですけど、呼んでいただけますか」


私が、そう伝えると納得したように頷いた。


「嗚呼、貴方が助手の方かしら?」

「えっと、まぁ、そうです」

「椿様なら、もう除霊に向かわれましたよ。貴方が来たら、此方の紙を渡して欲しいと頼まれました」

「あ、ありがとうございます」


巫女さんから、貰った紙には

『遅刻よ。

鸚哥森小学校まで、早く来なさい。』

と簡単に書いてあった。手紙まで、愛想がないと思って少し笑った。


「すみません、ありがとうございました。私これで」


私は、また走り出す。手紙を用意しておくなんて、私が来ることを信じていたのだろうか。そう思うと、なんだか嬉しかった。

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