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無理 ⑦

不穏な空気が続きます。

「待って、なら、椿のお母さんは? なんで、足を盗られたの?」

「それについても、パパが予測しているわ。ママは、足を盗った悪霊に相当恨まれていた。悪霊は、元々ママが除霊した悪霊の親だったのよ。死んだ子どもが、幽霊になって此方へ戻って来たのに、ママに祓われたことに逆恨みしたのね。仕方のないことだわ。そして、親は絶望し、自殺した。それで、自身もまた悪霊となりママに襲いかかって来たの」

「‥‥‥つまり、どういうこと?」

「幽霊が人間の足を奪える条件は、自分が殺した人間と、心の底から憎んだ相手となる」

「信じられない」


私は、椿の真剣な顔を見て、信じたく無いが、この話は本当なんだと思い始めた。椿は、こんなにくだらない嘘をつかない。


「どうしてこんな大事な話黙っていたの?」

「言えるはずないでしょう。こんな話信じてもらえるとは思えないし、それに‥‥‥このことは、国が隠蔽しているかもしれないのよ」

「えっ?」


隠蔽という穏やかでない言葉に、動きを止める。


「ママの事件の直後、警察にも通報したし、霊媒師協会にも、お婆さまから連絡してもらった。でも、そんな事実はなかったと、握りつぶされた」


無表情で首を振り、それでも何故だか諦めたような顔つきに見えた。


「警察はこの事実を隠蔽したってこと? どうして?」

「正確には、国、つまり幽霊管理局が中心となって隠しているんだと思う。警察がこんなに大きな秘密をひとつの組織で、隠し通せるとは思えないわ。霊媒師協会だって、政府に通ずる人がいるから、幽霊管理課から言われれば逆らえないわ」

「幽霊管理局って、現世に戻ってきた幽霊を管理しているっていうあの幽霊管理局‥‥‥真逆、だって幽霊管理局は人間と幽霊の共存を第一に考えている機関だよ?そんなことするようには思えない」

「だからこそよ。よく考えてみて、もし、これが表に出れば世界は大混乱になる。今までみたいに、幽霊と共存なんて出来ないでしょうね。共存を第一に考えているなら、隠蔽するのは当然だと思うわ。だから、貴方には言えなかったの。だって、秘密を知っている人間がいるとわかれば、幽霊管理局に何をされるかわからない」

「‥‥‥」


椿のいうことが本当なら、彼女は私の命を守ろうとして、黙っていてくれたということだろうか。

椿の言う通り、この事実が公になれば、きっと幽霊を排除しようとする動きが強まるだろう。今だって、そういう輩が少なからずいるのだ。幽霊側だって、このことを知ったら人間を積極的に殺そうとするものが出てくるはずだ。幽霊管理局が、その事態を予想しないわけがない。だから、幽霊管理局は、この事実が表に出ないようにするためなら、どんな手段を取るのかわからない。

それでも、だからといって、罪のないものを裁くのは間違っているのではないだろうか。私は、無念に死んでいったであろう家庭教師を思い浮かべる。


「誰にも頼れないから、ママの足を盗った幽霊は自分の手で、祓うと決めたの‥‥‥だって、足が盗られたのは私のせい。だから、私は霊媒師になったのよ。そして、私が担当した三件はもしかしたら、ママの足を盗った幽霊の仕業かもしれない。私の話は、それだけ」


壮絶な情報量に何も言えずに、沈黙してしまう。そんな私を一瞥して、椿は夕飯の準備を手伝ってくると部屋を出ていってしまった。結局、最後まで何もいうことができなかった。

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