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何も起こらない日 ②

二人の何気ない日々。

「う〜ん? 今は〜この辺に住んでるよ〜?」

「??‥‥‥そう」


引越しでもしたのだろうか。よくわからないが、秋乃は少し変わったことを普段からいうので敢えて何も聞かなかった。秋乃なら、何もいわずに引っ越すなんてことあり得そうだわ。


「そういえば〜、椿は何を買いに来たの〜?」

「私は、夕飯の買い出しよ。貴方は?」

「私も〜、なら〜、一緒に買いに行こう〜」

「いいわよ。じゃあ、まずは八百屋に行きましょう」

「お〜け〜」


私たちは、八百屋へ行き各々買うものを見繕う。私がトマトをどれにしようかと選んでいると、横から秋乃が覗き込んできた。


「トマトは〜ツヤがあって〜、硬いやつを〜選ぶといいよ〜」

「へぇ、物知りね。ありがとう」

「えへへ〜昔お母さんに〜教えてもらったんだ〜」

「そう、いいお母さんね」


秋乃は、誇らしそうに微笑んだ後、何故か表情を曇らせた。いつもぼんやりした顔をしているから、憂いた顔は珍しい。


「秋乃?」

「私〜会計行ってくるね〜」

「えっ、ええ、私も行くわ」


秋乃の後に、八百屋の奥さんに会計してもらっていると声をかけられた。ここには、最近よく来るので奥さんは私の顔を覚えてくれたようだ。


「椿ちゃん、さっきの子ってお友だち?」

「はい、同じ学校です」

「まあ、お友達できて良かったわね。おばちゃん、安心しちゃったわ」

「‥‥‥ありがとうございます」


奥さんとは、高校入学と同じ頃に出会ったので、まだ日が浅いが心配してくれていたようだ。情に厚い人なのだろう。親のような微笑みからそれが伺える。


「そうだった。今日までなんだけどね、其処で商店街合同で、くじ引き大会やってんのよ。これ、一枚入れておくわね」

「そんなことやってるなんて、知らなかったです。ありがとうございます」

「三枚で一回引けるんだけどね、何しろ今日までだから‥‥‥まあ、集められたらやっていってよ」


そのまま、お礼をいって八百屋を出る。

その後、外で待っていた秋乃と共に肉屋や魚屋へ行った。結果、私の元には二枚のくじ引き券が手に入った。二枚の券を見て、ため息を吐く。くじをギリギリ引けない枚数だ。買い物は、全て済んでしまったし、くじは今日まで、これは紙切れにするほかなくなってしまった。


「ため息なんて〜どうしたの〜?」

「このくじ引き、三枚で一回引けるんだけど、二枚しかないから‥‥‥」

「だったら〜私の〜くじ引き券〜あげるよ〜一枚貰ったんだ〜」

「えっ、でも、それは貴方のでしょう。貰えないわ」

「椿って〜真面目だよね〜。でも〜、これ今日までだし〜使わないと〜もったいないよ〜」


秋乃は、私に無理矢理くじ引き券を握らせる。顔に反して、結構強引なところがある。

だが、確かに秋乃のいうことも正しい。使わなければ、勿体無いのも確かだ。


「なら、二人で引きに行きましょう。良いものが当たったら二人で分ける」

「なんか〜それ楽しそう〜」


そんなことがあり、たどり着いたくじ引き会場は、真っ赤なガラポンが机の上に置かれている、如何にも地元のくじ引きという感じであった。最終日なのもあってか人がわんさか集まっており繁盛していた。最後尾に秋乃と並ぶ。

一等は、ペアハワイ旅行のようだ。ハワイ旅行は、二人で分けられるようなものじゃないな‥‥‥まあ、一等だし当たらないか。

ビリは、ポケットティッシュ。これも二人じゃ分けられないな。三等の醤油セットとかなら分けやすいかも。


「椿〜、いよいよ次だよ〜」

「あら、意外と早いわね」

「ねぇ〜ねぇ〜、どっちが回す〜?」

「一枚貰ったし、貴方が回しなさい」

「ええ〜、でも〜三分の〜二は〜椿の券だし〜椿が回してよ〜」

「さっきから、回したそうに見てたでしょう。貴方が回しなさいよ」

「そうだけど〜」

「次の方、どうぞ!」


話がまとまらぬまま、順番が回ってきたのでとりあえずガラポンの前に立ち券を渡す。


「はい、三枚だから一回ですね」

「秋乃、回しなさい」

「う〜ん、あっ、そうだ〜椿ちゃん一緒に回そう〜」

「一緒にって、どうやって」


すると、秋乃は私の手を取りガラポンの取手を握らせた。その上から、自身も手を握って、私は秋乃に手を包み込まれるような形になった。受付のお姉さんに、微笑ましそうに見られたことが気恥ずかしくて、拗ねたような目で秋乃を見つめてしまう。それでも、秋乃はそんなことお構いなしとばかりに笑っていた。


「ちょ、ちょっと」

「せぇ〜のっ!」


秋乃に押される形で、ガラポンを回すとコロンという音と共に黄色の玉が出た。


「お、お」

「お?」

「おめでとうございます! 一等、ハワイ旅行でぇ〜す!!!!」

「ハワイ〜?」

「旅行?」


お姉さんがベルをカランカランと、豪快に鳴らしたことにより周りのお客さんからも、注目を浴び拍手が鳴り響いている。そんな反応とは裏腹に私は、これをどうすれば良いんだろうかとそればかりを考えていた。

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