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冒険者

 食堂を探して3分。


 やっと見つけて、一言。


「おはようございます」


「ああ、おはよう」

「おはよう」

「あ、ユウカちゃん」

「おはようございます……」


 返事が様々だぁ……。

 これだけでだいたい性格分かるよね。


「さっ、朝ごはん食べましょっ」

「はい」


 カレンさんの隣の席へ促される。

 ここに座っていいのかね。


「えっと……」


 メニューは、薄そうなスープ、肉、茶色いパン。以上っ!


 ……朝から肉?重くない?


「食べないの?ユウカちゃん」

「いえ……はい、いただきます」

「おう、食え食え。食わないと大きくならないぞ」


 へいへい食いま……おいアレン、てめえ今どこの大きさのこと言ってんだ?胸?セクハラ?セクハラか?


「冒険者やってれば、これくらいは食う」

「もう慣れちゃいましたね……」

「そう、なんですか」


 ……マジ?この身体そんな食えないぞ?たぶん。


 少し、食べてみる。


「………」


 しかも、味付け濃いわ〜。


「ふふっ、ユウカちゃん、笑って笑って」

「ふふふ…」

「はあ…」




 ……ふふっ。




「あら可愛い」




 みんなで囲む食卓、いいね。






 ……ああ、そうだ。




「あの、すみません皆さん、少しお願いがあるんですけど……」

「えっ、お願い!?なになにっ!?」

「おいカレン……」


 食いつきすぎですよ、カレンさん。



「昨日の夜に、私が何をすべきか、少し考えたんですけど……」



 ホントはもうちょい前だけどね。



「これくらいしか、思いつかなくて」



 これは本当。






「私を……冒険者ギルドに、連れて行ってくれませんか?」








 ◇








「ホントに行くの〜?ユウカちゃんには合わないと思うなあ〜」

「行くんです」


 ……カレンさんが若干うざい。いや、心配してくれてるのは分かってるんだけどね。


「なんでわざわざ冒険者なの〜?汚いよ〜?危ないよ〜?」

「それが一番、手っ取り早そうでしたし、皆さんも冒険者らしいので」


 たぶん、かなり稼げるだろうし。


「なんでそんなに急ぐのよ〜?」

「皆さんにも都合があるでしょうし、まずは自立できるようになりたいな、と。皆さんの邪魔にはなりたくないので」


 早く自立することが目標だしね。


「………えっと、俺の話を聞いてそう言ってるのかい?それなら気にしなくてもいいんだよ?」


 アレンがそう言う。

 ……うん、まあ。


「それはそこまで気にしてないので、アレンさんも気にしないでください」

「そ、そう……」


 本当だよ?


「ううぅ、ユウカちゃんがしっかりしすぎている……」


 素晴らしいことじゃないか。自立、いい響きだね。


「まあ、そういうことなら、俺達もしっかり紹介してあげないとね」

「……そうねっ」


 ……紹介?誰に?


「まあ、それはギルドに着いてからのお楽しみってことで」







 ◇







 突然だが、ここはファンタジー世界だ。


 剣と魔法の世界で、文明は中世程度まで発展している、いわゆるテンプレ世界だ。


 さて、ここで問おう。


 もしその世界のなかに、つまり、周りは木造やらレンガやらで建物が作られている時代に、唐突にコンクリのビルがあったら、どう思うだろうか?



 その答えがこれである。



「ごっつ違和感あるやんけ……」

「ん?どうかしたの?ユウカちゃん」

「い、いえ、何でもありませんわ、おほほほ」


 いかん、ちょっと変になった。


「ここが、冒険者ギルド……ですか?」

「ええ、そうよ」


 そこにあったのは4階建てくらいのコンクリの建物。

 大きな看板がかけられており、剣と盾の紋章が描かれている。


 コンクリの建物に。


 ……世界観ぶち壊しェ……。


「早く入ろう」

「ああ」

「そうですね……」

「ほら、行くわよ、ユウカちゃん」

「は、はい……」




 うぃーん




 自動ドアェ……。


 なんだろう……この空間だけ、なんかいろいろぶち壊してる気がする……。絶対これ異世界人関わってるだろ……。



 ギルドへ入れば、多くのムサイ男の冒険者と見目麗しい受付嬢がおり、そこは喧騒に包まれ……てない?


 なんで皆フリーズしてんの?


「……ドっ、竜の咆哮(ドラゴンロアーズ)よぉぉぉおおお!!」

「「「きゃー!!」」」


 !?


「カ、カレンさんとリュエルさんだぁぁぁあああ!!」

「「「うおおおおお!!」」」


 !?!?


「あー……やっぱりこうなったか……」

「もはや毎回恒例ね」

「迷惑です……」

「………」


 皆さんなにその余裕!?


「えっ、と……?」

「あっ、ユウカちゃんは気にしなくていいのよ〜。ちょっと私達が有名なだけだから」


 いやちょっとじゃないよねこれ!?


「あ、あれが今最もSランクに近い若手冒険者パーティか……」

「噂通り、ホントに美人ばっかだな……」


 解説ご苦労様。


 そうか、この人達結構凄い人達なのか。

 まあAランクって言ってたから、たぶんまあまあ凄いんだろうなとは思ってたけど。


「アレン様〜っ!握手してください〜っ!」

「ゲイル様っ!こっち見て〜!!」


 そして、完全に業務を放棄して近寄ってくる受付嬢共。


 いや、仕事しろよ。


「リュエルさんっ、この後一緒に食事でもいかがですかっ!?」


 いや、初対面のやつと食事は行かないだろ……。


「フッ、カレンさん、この僕と、一緒にカッフェでもいかが?」


 いやキモいわ。フッってなんだよ。カッフェってなんだよ。キモいわ。誰もお前となんか行かねえよ。


「アレン様〜!」「ゲイルさ〜ん!」「カレン様!」「リュエルさん……」


 ……なんだこのカオス。すげえな、ある意味。


 そしてそんな状況の中で、アレンが、動くっ!


 どこへ!どこへ向かう!?



 あっ2階ですかそうですか。


 視界の隅の呆然とする受付嬢&冒険者を尻目に、さっさと上にあがる皆さん。強いね。


 いや、うん、まあ。


 とりあえず、お前ら、仕事しろ。









「お久しぶりです、ガルトンさん」


 目の前には、ゴリラ。


「ガッハッハ、久しぶりだな!アレン!」


 ゴリラ、だね。



 まず目に入るのは、その盛り上がった筋肉。なんかピクピクさせててキモい。


 そしてその黒い肌。えっと、ボディビルダーの方ですか?


 さらに、その濃ゆい顔。まさにゴリラ顔。


 結論、ゴリラ。Q.E.D.



 というか、なんでタンクトップ着てるの……。ムサイわ……。




「ギルマスになったと聞いて驚きましたよ。冒険者は引退ですか?」

「おうっ!これからは後進を育てていこうと思ってな!」


 ゴリマスだ。こいつゴリマスだったぞ。


「そうですか……少し残念ですね。もうあの勇姿を見られないと思うと」

「ガハハッ、見たくなったらいつでも見せてやろうっ!」

「ははっ、ええ、その時はお願いします。それと、つまらないものですが、ギルドマスター就任、おめでとうございます」

「おうっ、ありがとなっ!」



 なんでも、竜の咆哮(笑)がこの街に来たのはこのゴリラに会うためだったそうな。昔の恩師なんだと。

 ちなみにゴリラは元Sランク冒険者だったらしい。へー……このゴリラがねえ。



「ところで、そっちの嬢ちゃんは誰だ?」


 あっ、ここでこっちに回ってくるのね。


「ユウカ=ロックエデンと申します」


 見様見真似のカーテシーを披露。それっぽいからこれでいいでしょ。


「お、おう、俺はこのギルドのマスターやってるガルトンだ。で?嬢ちゃんみたいなのが、冒険者ギルドになんの用だ?」

「この子は私達が森で拾ってね、今は保護してるのよ。冒険者になりたいって言ってるから、連れてきたわ」

「この嬢ちゃんがか……?」


 ジロジロ見てくるゴリラ。


 おう、やんのかゴラ。喧嘩なら買わないぞゴリラ。


「本当に大丈夫か……?」

「まあ……俺達もそう思いますけど……」


 おや、雲行きが微妙に怪しい。

 それはよくないね。一肌脱ごうか。


「お願いしますっ!絶対に冒険者ギルドに入りたいんですっ!何でもさせていただきますからっ!」


 ん?今なんでもす(ry


 深々と頭を下げる。入れてっちょ。


「う、うむ……いや、まあ、冒険者ギルドは基本来るもの拒まずだから、嬢ちゃんがギルドへ加入するのは問題ないんだが……」

「お願いしますっ!」


 大事な事は2回言います。


「うむ……まあ、お嬢ちゃんがいいならいいんじゃないか?うん……」


 よし、折れた。


「ありがとうございます!」





 フッフッフ、MISSION COMPLETE。





 俺は、下げた頭の下で、邪悪な笑みを浮かべるのだった。

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