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第一村人

「さて」


 目標設定が済んだなら、次は皆さんお待ちかね、《毒薬作成》のお時間だ。


 でもさ、もう作る毒薬はきめてるんだよね。


 名前はカッコイイのにしました。厨ニとか言わないで。異世界なんだから、そういうのがいいの。



 名称:賛美の狂歌

  服毒者に激痛を与え、身体能力・魔力を上昇する

  この効果は15分後に消滅する

  効果消滅後、身体能力・魔力を僅かに上昇する

  この効果は永続する

  消費魔力:100



『狂歌』は強化に掛けてみました。『賛美』はフィーリング。


 まあつまり、ドーピングですね。


 これには理由がある。


 なにせ、今の俺じゃマトモな毒が作れなかったのだ。


 《毒薬作成》の効果を覚えているだろうか?

 毒薬の作成には魔力を消費するのだ。

 そして俺の魔力は相当に貧弱らしく、思いついた毒薬を作ろうとしても、何故だが作れそうな気がしなかったのだ、


 そこで思いついたのは、毒薬で魔力を上げることである。


 だが、魔力だけを純粋に上げる毒薬も、同様の理由で作れなかった。

 しかし、同時にデメリットをつけることで、消費魔力が減少することを発見したのだ。つまり、そのデメリットが激痛である。


 で、筋肉の超回復から発想を得て、一回思いっきり上げたら、効果が切れても持続させやすいんじゃないかと思って試したら、これまた大当たり。


 その結果、上の効果になりました。


「ふむ……」


 まあ、痛みはある程度慣れてる。前世はいっぱい怪我してたし。

 ただ、効果に書かれるほどの激痛が、どれくらいのものなのかが分からん。


「気絶するほどじゃないといいんだけど……」


 そうじゃないと、この森の中で使うには危な過ぎる。何がいるか分からないし。この世界、魔物いるし。


「……むう、ものは試しか」


 そうでもしなきゃやってらんないか。今のままじゃ、ただの貧弱美少女だし。もし襲われたら、起きてても寝てても、ただじゃすまないか。


「なら、早くやるべきだな」


 独り言が多い。一人になるどうしてもね。


 ……うしっ、やろう。


「女は度胸っ!」


 元男だけど。


「いざっ!《毒薬作成》『賛美の狂歌』っ!」


 その瞬間、手のひらに生まれたのは、一粒の錠剤。そして同時に襲ってくる、かなりの倦怠感。


「うおう……」


 立ってるのも辛いレベル。

 魔力を消費しすぎるとこうなるのか……。気をつけないと。



 ……はあ、飲もうか。


「いただきます」


 コクン



 ……ん?痛みが来ない?



「あっ…がっ、あぐぐぅぁあああ!!」



 あ、思ってたよりヤバい。時間差やめてそれ。



「いぎぃぃぁああぁぁああ!!」



 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいちょっと痛すぎるよこれは死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ



「ぁぁああああああああああぁぁぁああ!!」



 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い




 〈スキル《激痛耐性Lv1》を獲得しました〉




「あぁぁぁあああぁぁあっ、うぎぃぁぁあああっ!!」



 クソッ甘すぎたこれはマズイ痛い死ぬ痛い死ぬ死ぬ痛い痛い死ぬ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイ……




「いっ、あっああァァあああぁああ!!」







 〈《激痛耐性》のLvが2に上昇しました〉



 〈《激痛耐性》のLvが3に上昇しました〉



 〈《激痛耐性》のLvが4に上昇しました〉



 〈《激痛耐性》のLvが5に上昇しました〉








 ◆








「あぁぁぁあああぁぁあっ、うぎぃぁぁあああっ!!」




「なにっ!?この声っ!?」

「女…の子……?すごい苦しそうです……」


 そこに居たのは、四人の男女。


 二人の女はそれぞれ杖を、二人の男は剣と盾、そして槍を持っている。


「様子見に行きましょっ!」

「待て、カレン。あちらがどうなっているか分からない。行くのは危険だ」

「でもっ!」


 草原を歩いていたときに聞こえてきたのは、少女の苦しむ声。

 一人の女は助けに行こうとするが、一人の男はそれを諌める。


「どうしますか……アレンさん……?」

「そう、だな……」


 もう一人の女が、もう一人の男に問いかけると、その男は考え込み――――


「よし、一度、様子を見に行こう。ギルドに報告すべき案件かもしれない。いいな、皆」

「分かったわっ!」

「……ああ」

「はい…」

「ただし、安全第一だぞ。カレン、先走るなよ。注意して進もう」

「それは分かってるわよ」


 そう言って、彼らは進みだした。


 声のする方向へ。






「いっ、あっああァァあああぁああ!!」


「まだ叫んでる」

「早く、行きましょう……」

「そうだな」


 彼らは進む。

 陣形を組み、魔法で明かりを確保し、周りに注意を払いながら。

 彼らはプロだ。この程度は身に染み付いている。



「やはり、少しゴブリンがいるな」

「あの子、襲われてないといいけど……」



 そうして、歩き始めてから15分程。


 湖に出て、彼らが目にしたモノは――――







 ――――湖のほとりに倒れる、人形のように美しい体つきの、蒼銀に輝く美しい髪を持つ、絶世の美少女だった。






「……っ、見ちゃダメよっ!」

「わ、分かってるっ」

「あ、ああ」


 そして全裸だった。




 彼らは良識がある。良かったねユウカちゃん。




「綺麗な子ですね……」

「…そうね……でも」


 その少女は、苦悶の表情で、全身に汗をかきながら、そこに倒れていた。


「この子がさっきの声の主ね。襲われてたわけじゃなさそうだけど」

「大丈夫、でしょうか……一応、回復しておきますね……」

「頼んだわ」


 そう言って、女は詠唱を唱える。


 すると少女を淡い光が包んだ。


「これで、たぶん大丈夫です……」

「よし、じゃあ、この子はとりあえず、街に運びましょ」

「そうですね……ここに残すのも可哀そうですし……」


 女は少女を毛布に包み、手に抱える。


「よし、じゃあ行くわよっ」

「あ、勝手に行くなよカレン!」

「わ、分かってるわよ」



 彼らはそのまま、少女を抱えて、森を出ていったのだった――――









 ◇









「……んぅ?」


 目を覚まして、一言。


「知らない天井だ」


 いやあ、失敗失敗。まさかあそこまで痛いとは。

 気絶するとか、そういう次元じゃなかったね。逆に気絶出来なかったよ、痛すぎて。そのせいで15分間まるまる苦しんだ。15分は長えよ……。


「……ん?天井?」


 ……ここ、どこ?


「………」


 待て待て、落ち着け俺。

 状況を整理しよう。


 まず、毒薬を飲んで森で気を失った。

 その後目を覚ませば、そこには知らない天井。


 天井=人工物=人里?


 知らない間に、人里まで連れてこられたのか?


 さて、ここで俺の様相を思い出そう。


 俺、全裸、美少女。毛布がなんかかかってるけど。


 ………。


 あれ、急に犯罪臭がしてきたぞぉ〜?


 誘拐された?もしかして俺、誘拐された?


 周囲を確認。


 俺が寝ているのはベッド。

 右側には窓。逃げようと思えばここからか?いや3階くらいの高さがある。この身体には厳しいか?

 左側にはドア。今は閉まってるけど、鍵は内側から開けられるだろう。


 ……人がいない今のうちに逃げるべきか?


「……よし」


 一旦外に出て、様子を確認――――




 ガチャ




 あ。


「お?」



 ゆうかいはん A が あらわれた !



 そこに出現したのは、男。イケメン?


「………」

「………」


 さて、ここで俺の様相を思い出そう。


 俺、美少女、全裸。with一枚の毛布。


 ………。


「………」


 ダッシュッ!


 部屋の外へrun away!


 一刻も早くこの男からtake apart!


「ああああ待て待て待てっ」

「にゃっ!?」


 掴まれたっ!?

 手ぇ当ってる、当ってるからっ!胸に当ってるからっ!

 俺の身体はお前が触っていいもんじゃねえぞぉ!


 あーーはーなーせー!


 しばらく男の腕の中でジタバタしていると、部屋の外からone more 足音。


 あっ、これ詰んだぽよ。


 ああ、異世界に来てそうそうに捕まって闇商人に売られるんだ……そのままどっかの変態貴族に買われてあんなことやそんなことやこんなことまでされちゃうんだ……ああ、無常……。



「あっ、カレンいいところに!この子どうにかし――――」

「あんたどこ持ってんのぉーっ!」


 メキョ


「ぐへっ」


 ゆうかいはんB、ゆうかいはんAを殴るの巻。






 ……なんだこれ。

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