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魔獣氾濫

「もうすぐ?」

「もうすぐかな」


 イオニル街出発から40日くらい(あやふや)。

 めちゃくちゃに寄り道したから時間がアホみたいに掛かったけど、ようやく王都に着きそうな予感。


「まあまあ長かったね」

「楽しかったなあ〜っ!」

「そうだね、楽しかった」


 うん、リンベルがいてよかった。旅が明るくなったからね。


「ねえねえユウカちゃんっ、王都ではなにするのっ?」

「うーん、まずは拠点の確保かなあ……」


 道中でギルドの依頼を何度も受けたことで、相当な金が貯まっている。これなら小さい拠点の購入にも足りるだろう。


「その後は?」

「適当に観光して、しばらくぐだぐだしたら次の目的地へ、かな?」

「ふ〜ん……」


 世界を巡るのが目的だからね。一箇所に留まるのは本意じゃない。


「ねえっ、その旅にもついて行っていいっ?」

「あーいいね。リンベルなら大歓迎だよ」

「ひゃっほ〜っ!さすがユウカちゃ〜ん!」

「はしゃぎすぎだよ、リンベル」


 可愛い奴め。


「で、この山を越えれば王都はすぐなのかな?」

「え〜っとね……山を越えれば5日で着くんじゃないかな」

「……まあまあまだあるね」

「そだね」


 別にいいんだけどさ。







「……ん?」

「どしたの、ユウカちゃん?」

「いやなんか、変な音聴こえない?」

「音?」

「なんか、山の上の方から……」


 ごごごごごっていう、地響きみたいな……。


「う〜ん、私には聴こえないけど……」

「……これは……」


 普段から魔力で強化してるから、リンベルよりも数段耳はいい。リンベルが聴こえないのも納得か。


 だが俺の耳は捉えた。少しずつ大きくなっているこの音は……。


「……足音?」

「え?」


 無数の生物の、足音。


「……ヤバそうかな?」

「え、何、何があったのっ?」


 見てみないと分からんな。


「ちょっと上から見てくる」

「えっ、なに、何なの!?ちょ、ユウカちゃ〜ん!?」


 絶空魔法で上空へ飛翔。

 ある程度の高度まで行ったら、目に魔力を集めて視力を強化。


「……うわ」


 そうして眼下に見えたのは無数の魔物。

 一斉に、何かから逃げるように迷わずこちらへ向かってきている。

 いや実際逃げてるんだろうけど。


「天然の魔物氾濫(スタンピート)だ」


 初めて見た。壮観だな。


「うん、さっさと逃げよう」


 この量は面倒くさい。上空には魔物も少ないし、リンベルも連れて飛んで逃げよう。



 飛翔をやめて地上へ降りる。


「どうしたのユウカちゃん!?」

「天然の魔物氾濫だ。危ないから上に退避するよ」

「えっ!?」


 有無を言わさずリンベルの手を取る。


「いくよー、あーいきゃーんふらーい」

「待っ、きゃぁぁあああ!?」


 王都に向けて空中散歩だ。





「ちょっと、待って!待ってよユウカちゃんっ!」

「なに?」

「魔物氾濫って大丈夫なのっ!?」

「少なくとも私達は安全だよ」


 なぜなら俺がいるから。


「でもっ、ユウカちゃんなら何とか出来るんじゃないのっ!?」

「かもしれないけど……やだよ面倒くさい」


 チラッと見た限り、魔物のランクは低かった。あれならやられることはないだろう。けどとにかく面倒くさい。数が多すぎる。


「でもでもっ、そしたらいっぱい人が死んじゃうんじゃないのっ!?」

「……いや、まあ」


 進行方向にあった小さい村とかは潰れるだろうけど。


「ユウカちゃんっ!!」

「………」


 いやそんなキラキラした目っていうか涙目で見られても困るっていうか……リンベルが気にしなくてもいいっていうか……そんなふうに見られると良心が痛むっていうか……。


「………」

「……はぁー」


 ああもう、面倒くさいなあ。


「分かったよ、殺るよ、殺ればいいんでしょ?」

「……!うんっ、ありがとうユウカちゃんっ!!」


 しょうがないなあ、もう。




 魔物の集団から少し離れたところに降りる。ここなら魔物も来ない可能性が高い。


「私ついてっちゃダメ?」

「ダメ。危ないからね」

「むぅ〜」


 それくらいは従ってもらわないとね。


「『岩絶壁(ガイアウォール)』」


 壊地魔法で四角い箱を作る。めちゃくちゃ頑丈に、自分でも壊せないほどに。


「リンベル」

「なに?」

「この中入って待っててね」

「……え」

「これが一番安全だから、ね」

「……えっと、それはちょ」

「はいどーん」

「ぎゃああ!」


 有無を言わさずどついて箱に入れる。うん、これで準備オーケー。


「しばらく待っててねー」

『ちょ!ユウカちゃん!ここ真っ暗なんだけど!ガンガン!出して〜!怖いよ〜!ガンガン!』


 なんか聞こえるけど無視で。自分で撒いた種だろ?



「さて、どうやって潰そうかな」


 殺るって言ったからには、本気で殺ろうか。






 ◇






 魔物達の進行方向に待ち構える。

 今回は敵がわんさかいるから、どんな攻撃しても当たりそうだな。うーん、できる攻撃全部すればいいか。それが一番手っ取り早い。


(いっぱい殺せる?)(………血がいっぱい?)


 そうだね、今までで一番の量だ。大半は魔法で殺すだろうけど、蒼黒と碧黒もたくさん殺せるだろうね。


(やったー)(………わーい)


 テンション低いのか高いのか分かんないね。



「……さて、《毒薬作成》『賛美の狂歌』『solid』、《魔闘術》《魔纏》《魔拳》《魔脚》《魔刃》《魔遊剣》《魔糸》」


 できる限りの強化をしてみる。必要ないとは思うけど。そして魔遊剣をこちらもできる限り展開、合計60本。魔糸も張り巡らしておく。蜘蛛の巣みたいなもんだね。これを1kmくらいの幅に展開する。これで逃がすことは少なくなる、はず。




 魔物が見え始めた。


 視界に入るだけでも千は超える。


 まあ、そんなのは関係ない。


 この世界では、多くの弱より、一つの強だ。



「全部、ぶっ殺してやろう」



 久しぶりに殺戮だ。






 〈敵対勢力1000体以上を確認しました〉


 〈条件を満たしました〉



 〈《殺戮機械(キリングマシーン)》が発動します〉






「あ?」



 瞬間、身体に力が漲る。魔力が増大する。思考が冴える。


 強化率は高いみたいだ。



 ああでも、これはいけない。


 これは――――



「昔を思い出すな」



 あの時と、同じ精神状態だ。



「いや、それはどうでもいい」



 思考は切り替わる。



「早く殺そう」



 ただ殺すための機械へ。



「皆殺しだ」







 魔法だけで事足りそうな勢いだ。


「「「「「ギャァァアアアア!!!」」」」」


 俺の半径30mより外は、もうクレーターだらけ。ここしばらく本気で魔法撃ってなかったから加減を間違えた。殺せるからいいけど。


「フフッ」


 両手の刀を縦横無尽に振るう。これだけで魔物がどんどん斬れていくんだから、その数の多さが分かる。


「遅い遅い」


 ただ、弱い。魔物が全体的に。

 全て見える。

 攻撃は掠りもしない。


「アハッ」


 全身を使って敵を切り刻む。魔法で爆破する。魔遊剣と魔糸で粉々にする。


 一匹たりとも、逃がしはしない。








「弱すぎる、脆すぎる、塵芥だ」





 一時間は戦った。何百の魔物を斬って、何千の魔物を魔法の餌食にして、万に届くほどの数を殺した。


 でもそれもようやく。


「はい、これで終わり」

「ギュゲッ……」


 目につく範囲で最後の魔物を殺す。


 魔物氾濫鎮圧完了だ。



 〈《殺戮機械》の効果が消失しました〉



「おっと」


 全身から力が抜ける。急に切れるなよ、危ないな。


「はぁー、疲れた」


 全身返り血塗れ。気持ち悪い。早く洗い流さないと。


「あ、その前にリンベル回収しないといけないな」


 一時間暗闇に閉じ込めたのはちょっと可哀想かもしれない。早く迎えに行ってあげよう。






 ◇






「……え」



 リンベルが、いない。



「あれ」



 頑丈に作ったはずの箱に、穴が内側から開けられている。



「どこ」



 箱の中は、空っぽだった。



「リンベル」



 地面には、魔物の足跡があった。



「まって」



 リンベルが、危ない。



「いかないで」



 リンベルが、死ぬかもしれない。



「やだ」



 また、死なせてしまうかもしれない。



「やだよ」



 大切な人を。



「ァぁ……」



 ………。



「……だめっっ!!」



 そんなの認めない。


 絶対に許さない。


 必ず見つけ出す。



 全感覚を集中っ。リンベルを探せっ。



「………いたっ」



 意外と遠い。それに近くに1つの魔物の気配。



「リンベルっ!!」



 リンベルは傷付けさせない。










 そこに到着したのは。



 熊の魔物がリンベルに爪を振るう寸前。



「ふざけんな死ねゴミ」

「ゴッ!?」



 遠くから魔導銃で頭をぶち抜く。何度も、何度も、何度も。絶対に殺す。リンベルに手を出しやがった奴は。無限に殺す。刀で切り刻む。死ね。早く死ね。死ね死ね死ね死ね。二度と起き上がるな。この世から消え去れ。ぶち殺す。死ね。死ね。死ね。



「ユ、ユウカちゃんっ!?」

「ぁ……リン、ベル」



 生きてる。



「リンベル……」

「ユウカちゃん……?なんでそんなに顔真っ青なの……?」



 まだ、間に合った。



「ぁあ……」

「ちょ!?血塗れなのに抱き着いて来るなんて―――」



 あったかい。


 つめたくない。



「……ユウカちゃん?なんでそんなに震えてるの?」



 よかった。


 ほんとうに、よかった。



「ユウカちゃん……?」

「……なんでもないよ、リンベル」



 そう、なんてことはない。



「ただちょっと、もうちょっとだけ、このままで……」

「う、うん……?」




 ただ、不安になっただけだよ。






 ◆






 side:リンベル





 魔物氾濫から帰ってきたユウカちゃんは顔面蒼白だった。震えてた。


「なんで外に出てるの」

「いや〜、暗すぎて怖かったから……」


 そして少し、幼児退行していた。


「どうやって外出たの」

「えっと、アイテムボックスの中にあった建築物特攻のハンマーでガツンと……」

「外出て何になるの」

「いや、暗闇から逃れようと……」

「魔物危ないじゃん」

「魔物追い払う効果付きの武器だって作ってあるから、大丈夫だって思ったから」

「熊がいたじゃん」

「うっ、あれは……」

「なんでそんな危ないことするの」

「だって、暗くて」

「なんで、そんな無理するの……」

「……ユウカちゃん?」

「ダメだよ……私が、俺が、全部守らなきゃいけないのに……」


 ユウカちゃんの様子がおかしい、ちょっと本格的に。


「ユウカちゃんっ!」

「……ぁ、なに?」

「どうしたの?大丈夫?なんか変だよ?」

「……なんでもない、なんでもないから、大丈夫」

「いや無理があるでしょ」


 明らかになんでもなくないよ。


「大丈夫、ユウカちゃん、大丈夫だから」


 座り込んでるユウカちゃんの頭を私の胸に埋める。こうすると、なんか安心するでしょ?


「なんでそんなに震えてるのか分かんないけど、私はここにいるから」

「……あ……ぅ……」

「だから大丈夫、ね?」

「……………」

「……あれ、ユウカちゃん?」

「……すぅー……すぅー……」


 ……寝てる?


「……なんだ、子供っぽいところあるじゃん」




 安心しきった顔のユウカちゃんは、抱きかかえたままで。


「可愛い顔してるなあ……」


 ユウカちゃんが起きるまで、その顔を眺めていたのだった。








 ◇








 〈《刀術Lv10(Max)》《体術Lv10(Max)》《魔闘術Lv9》《魔纏Lv3》《魔刃Lv7》《魔拳Lv4》《魔脚Lv3》《魔遊剣Lv4》《魔糸Lv4》《集中Lv10(Max)》《軽業Lv10(Max)》《立体機動Lv10(Max)》《跳躍Lv10(Max)》《縮地Lv5》《獄炎魔法Lv3》《滅碧魔法Lv3》《絶空魔法Lv3》《壊地魔法Lv3》《魔力精密操作Lv4》《多重詠唱Lv4》《無詠唱Lv4》《殺戮機械Lv2》《見切りLv8》《鑑定Lv6》にLvが上昇しました〉



 〈条件を満たしました〉


 〈スキル《刀術》が分岐進化します〉


 〈特異スキル《双刀殺術Lv1》を獲得しました〉



 〈条件を満たしました〉


 〈スキル《体術》が分岐進化します〉


 〈特異スキル《拳脚殺術Lv1》を獲得しました〉



 〈スキル《集中》が進化します〉


 〈希少スキル《限界突破Lv1》を獲得しました〉



 〈スキル《軽業》《立体機動》《跳躍》が合成進化します〉


 〈特異スキル《軽気功Lv1》を獲得しました〉

中途半端なようですが、これで幕間は終了です

次から第三章に入ります

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― 新着の感想 ―
[一言] 幼児退行? リンベルが初めてお姉さんに見えたね。(`・∀・´)
[良い点] 前半のユウカさん、物騒ですね。 意外にリンベルさんが危なかった。。。ユウカさんが何か過去あるかどうかは判らないですけど、大切な人の危機に対して、普通でも怖がるだと思います。 しかし、そのお…
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