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妖刀と恩

 ナンカ、シャベッタ。



(蒼黒、しゃべれるよ)(………碧黒も)



 ココロ、ヨマレタ。



 ナニコレ。



「……ゃん、ユウカちゃん?」

「はっ!」


 いかん、衝撃的すぎてトリップしてた。


「どうしたの?」

「いえ、なかなか衝撃的だったもので……」

「なにが?」


 いろいろと。


「まさか幻想級(ファンタズマ)が出てくるとは……」

「えっホント!?初めての幻想級(ファンタズマ)だっ!」



 アイテムのレア度は以下のように区分されている。


 創世級(ジェネシス)

 幻想級(ファンタズマ)

 伝説級(レジェンダリー)

 秘宝級(アーティファクト)

 希少級(レア)

 一般級(コモン)



 まあつまり、幻想級(ファンタズマ)はヤバいってことだ。


「そっか〜、最高傑作だとは思ってたけど、幻想級(ファンタズマ)か〜」

「あとなんか呪われてますし、生きた武器(リビングウェポン)ってなってますね」

「へ〜……はっ!??」


 いいリアクションだね、リンベル。


「なにそれ!?なんでそうなってんのっ!?」

「リンベルが作ったんでしょう?」

「いやそうだけどっ、呪った覚えはないし、生きた武器(リビングウェポン)にしたつもりもないよっ!?」


(ユウカのスキルのせい)(………精神、できた)


「え、私のせいですか?」

「ん?」


(こころができた)(………異形精神)


「……ああ、なるほど。それですか」

「ユウカちゃん、誰と話してるの?」

「え?」


 他の人には聞こえてないのか?この声。


(スキルの効果)(………共鳴してる)


 スキル……《共鳴》のことか。


(そう)(………それ)


 何が出来るんだ?


(考えてることがわかる)(………おたがいの位置も)


 ほー……便利だな。


「……ちょっと刀と喋ってました」

「え!?意思疎通できるのっ!?」


 できちゃうだよなあ、これが。


「……一回、試し斬りとかしてみたいですね」

「ああ、それならこっちに―――」


(血が欲しい)(………殺したい)


「……えぇー……」


 なんか物騒だよこの子ら。

 そういえばスキルにも《血ヲ吸ウ者》とかあったな。どんな効果だよ。


(斬れば分かる)(………いきもの斬りたい)


 えぇー……。


「ん?どうしたのユウカちゃん」

「……試し斬りは外でしてきます」

「え、そう?」


 後で魔物斬ってあげるからそれまで待っててや。


(わーい)(………ひゅーひゅー)


 反応雑っ。



「本当にありがとうございました、リンベル。素晴らしい、正直言えば予想以上の刀でしたよ」

「ふふ〜ん、なんたって私だからねっ!凄いに決まってるじゃんっ!」

「ふふ、そうですね」


 胸を張るな、ぶるんぶるんしてるぞ。


「では、ちょっと試し斬りしてきますね」

「いってらっしゃ〜い」


 さっきから刀達が急かしてくるんだ。



「………」


 ちらりと後ろで空気になってる男共を見る。

 おら、話しかけるなら今のうちだぞ。早くしろ。


「あ、あの、リンベルさん――――」


 リンベル、男相手でも頑張ってね(適当)。


(はやく)(………血)


 はいはい。









「ギャギャギャァァアア」


 ぷすりとな。


(ちゅーちゅー)(………むう)


「ギュッ、ギィイイ……」



「……えぇ……」


(おいしかった)(………ずるい)



 目の前にあるのは、完全に干からびたブレイクホーンラビット(Cランク)の死体。


 ……えぇ……。


 《血ヲ吸ウ者》って、文字通りかよ。この子達ヤバすぎでしょ。


(………次、わたしにも)


 あーはいはい。


 魔物を探しながら訊いてみる。


 これって血を吸う意味あるの?


(わたしたち、つよくなれる)(………だからもっと)


 強く?どんなふうに?


(見ればわかる)(………はやく)


 見ればって言われても……ああ、鑑定しろってこと?


(そう)


 へいへい。


「《鑑定》&《見切り》」



 名称:蒼黒(呪いの武器)

 種族:生きた武器

 等級:幻想級

 製作者:リンベル=アルフォード

 契約者:ユウカ=ロックエデン

 スキル:《共鳴:碧黒・ユウカ=ロックエデン》《不壊》《呪斬》《自己回復》《威圧》《自我》《血ヲ吸ウ者》《()()()()》(new)

 備考………



 ……ん?んん?あっれー?


「いや強奪チートかよっ!」


(どんどん強くなる)(………わたしにもほしい)


 ……えぇ……(困惑)。



 次回、『蒼黒&碧黒・強奪チートで刀生活!』開始?



 えぇ……(恐怖)。


 ていうか刀が脚力を強化してどうすんの。足どこよ。


(そのうち使う)(………人化する)


 ああそう……人化は確定なのね……。


「ぷすっとな」

「シャァァアア!?」


(………おいしい)


 そりゃ良かったね。



「これはなかなか……エライもん作ってくれたね、リンベル」



 いろいろエグいわあ。



(わたしたちすごい)(………つよい)



 はいはい。







 ◇






 猫髭亭にて。


 借りている部屋に皆で集まった。


 そこで待ち構えていたのは、めちゃ嬉しそうな男共と、苦笑いのカレンさんとリュエルさん。


「ありがとうユウカちゃん!君のおかげでリンベルさんに武器を作ってもらえることになったんだ!しかも4人分!」

「ありがとう……感謝するぞ、ユウカ!」

「それは良かったです」


 リンベルに言ってよかった。これで竜の咆哮みんなが買える……。


 ……む、しまったな、これじゃあ俺がプレゼントする余地がないじゃないか。俺が代金払おうとしても絶対止められるだろうし……。


「……むう」

「あら、どうしたのユウカちゃん」

「いえ、ちょっと恩返しの方法が―――」

「恩返し?」


 おっと。つい返事しちゃった。


「あ、えっと、何でもないです」

「……そう?」


 誤魔化すの下手か、俺。


「……ねえユウカちゃん、私達に、恩なんて感じなくてもいいのよ?」

「え……」


 そんなこと言われても……。


「私達は少し手助けしただけ。今のユウカちゃんになれたのは、全部ユウカちゃん自身のおかげなの」


 ……それは違う。


「私達はほとんど何もしていない」


 そんなことはない。


「だからね?そんな、私達のために何かをしようとしなくてもいいの。ユウカちゃんは、ユウカちゃん自身のために、何かするべきだと、私は思―――」

「違うっっ!」


 俺は。


「……ユウカちゃん?」

「私……私は……皆さんがいたから、ここまでやってこれたんですよ……」


 弱いから。


「皆さんがいたから……一人じゃなかったから……」


 急に一人で異世界と言われて困ってた。

 そりゃ不安だったさ。


 そこでこの人達に会った。

 得体の知れない俺によくしてくれた。

 かわいがってくれた。

 温かかったんだよ。


 久しぶりに、誰かと一緒に、ご飯を食べたんだ。


「今の私は、皆さんのおかげなんです……感謝しか、ないんですよ……」


 恩を返さなくていい?


 ふざけるなよ。


 それは俺のポリシーに反する。

 こんなに世話になった人達に何もしないなんて、ありえないから。



「ユウカちゃん」



「あ……ごめんなさい、何でもないです」


 む、柄にもなく熱くなっちゃったね、ダセエなあ。


「ユウカちゃん、こっち来なさい」

「……はい」


 言われた通りに、カレンさんの膝の上に座る。恥ずかしいんだが。


「あの……」

「ちょっと黙ってなさい」

「……はい」


 後ろから抱かれてるから、胸が当たって気になるんだが。


「まったく……そんなに考えなくてもいいのに」

「そうだな……リンベルさんと取り次いでくれただけで、俺達は十分だよ」

「むしろ、こちらの方が恩ができてしまったな」

「私はユウカちゃんがもふれればそれで……」

「リュエル、もふるって何だ……?」

「柔らかくて気持ちいいんですよ……」

「ホント!触り心地いいのよねえー。これだけで恩は返ってきてるわ」

「へ、へぇー……」



「あの……」



「食卓も賑やかになったしな」

「魔物氾濫だってユウカちゃんのおかげですぐにおさまりましたし……」

「そもそもそこにいるだけで眼福、って感じだからね」

「確かに、場が華やぐな」



「………」



「怪我したり帰ってこなかったりしましたから、心配ではありましたけどね……」

「手のかかる娘みたいで楽しかったわ」

「娘にしては年齢高くないか?」

「例えよ、例え!」

「……悪くは、なかったな」

「ゲイルめー、素直じゃない奴ねー」

「そういうお年頃なんだよ、きっと」

「……おいアレン、それはどういう意味だ」




「………なんで」




「……なあ、カレン」

「何よ」

「楽しかったよな?」

「……当ったり前じゃない!」

「なあ、リュエル」

「ユウカちゃんは大好きですよ……」

「ゲイルも」

「……ふん」




 そんなこと―――。




「―――ねえ、ユウカちゃん」



 ………。



「私達はもう、十分返してもらってるから」



「そんなに背負い込まないで」



「あなたはまだ子供なんだから」



「大丈夫、大丈夫よ」



 大丈夫じゃ、ないよ。



「私……いえ、私達は」



「ずっと、あなたの味方だから」


「そうだな」「そうですね……」「……ああ」



「……っ」



 ダメだよ。



「……っあ、う」



 ダメだよ。



「……っわ、私、ち、ちょっとお手洗いに行ってきますねっ」



「…ええ、いってらっしゃい」



 バレないわけがない。

 ああもう、やんなっちゃうなあ。





「うっ、ぅう、ひっく」





 あったかすぎだよ。





「えっぐ、なんだよ、もう……」





 なんで今更、涙なんか―――





 ――――私やあの子の他にも、きっと、あなたに味方はいるから――――





「……くそっ……」







 なんで今更、思い出すんだよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 武器さん達の美少女化ならグッジョブですw 物騒てエグいの武器さん達ですけど、主人公さんの性格も同じの気がしますw 主人公さんはお優しいですね! 仲間達も良い人て、感動的です
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