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前途多難

「クソがっ……」


 ええ、本日は全くの晴天。雲一つありません。


 そこに広がる草原。ここでピクニックなんてしたらさぞや気持ちいいことでしょう。


 ええ、本当に、異世界転移日和と言えることでしょう。



 仰向けに転移しなければなっ!



 目を開けたらそこは太陽だったよ。焼けたよ。ム○カ大佐だよ。目がぁぁだよ。死ね(直球)。


 しかも。


「痛ってぇ……」


 あのクソ野郎、上空に転移しやがった。

 落ちるよ。落ちたよ。全身打撲だよ。死ね。


 ……はあ。


「あーあー、マイクテスマイクテス」


 声、可愛い。


 視点が低い。


 自分を見てみる。


 真っ白な肌。

 スラリと伸びた手足。

 視界に入ってくる青銀の髪。

 若干膨らみがないこともない胸。

 股を触ってみれば、長年付き合ってきた感覚はない。


「マジで女になったのか……」


 ああ…さげぽよ…。


 ……おい、なんか肌まで見えるなと思ったら、全裸じゃねえか。服寄越せよ女神。


「はぁ〜……」


 なんかもう、やる気出ねえ……。







 きゅるるる


「あ、腹減った」


 如何せん。


 見回せば、辺り一面の草原。あ、向こうに森がある。



 ……あれ、飯はどこだ?


「……どうしよ」


 草原。草原か。

 ……この草食えるのかね?


 ……。いや、食う勇気はないな。


 ああ、こういう時鑑定が欲しくなるなあ。


 なんとかして分からないかな。植物知識なんてないからなあ。

 ……前世で食べたやつに似てるやつを探そう。なんかあるはず、と信じたい。


「飯はどこだぁ」








「分かるかボケェ!」


 知ってた。そりゃそうよ。分かるわけないじゃん。

 そんなサバイバル生活はしたことねえぞ。

 ああもう、なんかそういう感じのスキルが欲し――――




 〈スキル《見分けLv1》を獲得しました〉




 ファッ!?タイミング良すぎぃ!てか何だこの声!?


 いや、なんで?なんで急にスキル?いやありがたいけどさ。

 あれか?2時間くらい見分けようと頑張ってたからか?ふーん、意外と早くスキルって習得できんのね、ありがたい。


 よし、じゃあ早速使ってみましょう、スキルというものをっ!


 そこの雑草っぽいものめがけて!


「《見分け》っ!」



 雑草

  無毒



 Z A S S O U

 おう……おおう……。雑草か、おおう。

 しかも見分けるのは有毒かどうかだけか……おう……。


 ……つかえな。


 いやっ、諦めるなっ!Lv表記があるってことはレベルアップがあるってことだ!そこまでやり続けるんだっ!さすれば勝つるっ!いざ!


「見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け………」




 雑草

  無毒

 雑草

  無毒

 雑草

  無毒

 雑草

  無毒

 雑草

  無毒

 雑草

  有毒

 雑草

  無毒

 雑草

  無毒

 雑草

  無毒……




 おい誰だっ!一個だけ有毒な雑草混ぜたやつっ!



 〈《見分け》のLvが2に上昇しました〉



 ホイ来たぁぁぁああああ!!

 行くぜぇええ!


「《見分け》っ!」



 雑草

  無毒

  非食用



 H I ― S Y O K U Y O U

 食ふに用ふるに非ず


「グハッ……」


 なん、という……最初から……無駄だったのか……。


 いや、まだだっ、まだ慌てる時間じゃないっ!食用があるかもしれないだろうがっ!


 きゅるるるる


 くっ、無駄に可愛らしい音鳴らしがって……。

 ああわかったよ、今すぐ見つけてやるよ!


「見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け見分け………」


 非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用非食用……







 〈《見分け》のLvが3に上昇しました〉




 なかった。


「ああ……腹減ったなあ……喉乾いたなあ……」


 現代の飯が恋しい……。


 人はしばらく食べなくても大丈夫とは言うけどさ……飲まないと不味いけど、水場なんて見当たらないし……。


「はあ……」


 今の時刻は夕方。うん、めっちゃ探したよ。なかったよ。悲しいなあ。


 異世界初日からこんなとか、先が思いやられるなあ……。


 飯と水はどこにあるかなあ……。





「……あっ」


 森行けばなんかあるんじゃね?











「《見分け》」



 木の実

  無毒

  食用

  食物繊維多め



 ブチギレそう。

 森に入って一発目の見分けで食用です、はい。

 俺の5時間返せ。


 まあいいや、食用なら食べようじゃないか。腹減ってんだよ。


 さっさと木登りして、手のひらサイズの木の実をもぎ取る。ブチッとな。


 ふむ、では実食。





「……まっず」





 いやもう、声が出るほどにね、不味いんですわ、これが。もはや味が雑草と変わらないっていうね(雑草は試しに食べた)。


 苦い……マジ苦い。


「うぇぇええ……」


 これはあれですね、何かしらの調理が必要なやつですね、分かります。……そんなのここじゃ出来ねえよ、バカヤロー。


「どうしよう……」







「うおえっぷ」



 ええ、食べましたよ、木の実。食べなきゃ死ぬんでね。


 ……あ、ヤバい、吐きそう。


(自主規制)


 スッキリした。いや、これは吐いたんじゃないんだ、自然に還ったんだよ、きっと。







 腹を満たした(?)後は水を求める。


「あ、湖だ」


 水場発見。ラッキー。


 顔をザブザブ。水をゴクゴク。水質?知らん。


 汚れた手と足を洗う。いや、もう全身洗おう。全裸だし。









「ふう」


 スッキリした。


「さて」


 腹を満たして水を得た今、考えるべきは今後のことだ。


 今いる場所は草原、兼森の湖。


 ずっとここにいるつもりはない。やだよ、こんな飯もなくて、原始人みたいな生活は。


 つまり、恐らく存在するだろう人里へ向かわなければいけないわけだ。


 さて、そこで問題になるのは、俺の立場だ。


 俺、怪しすぎない?


 全裸。美少女。出身なし。強いて言えばfrom草原。この世界の常識は何一つ知らない。名前だけ。


 え、詰んでね?

 これを街の中に入れるとか、無理くね?


「どうしたもんか……」


 特に全裸美少女というのはいけない。

 これで男に見つかったら即襲われる。手取り足取り腰取りいろいろされる。今の俺はまだ非力だし。


 つまり、女性の第一村人を発見しなければならないわけだ。


 それに加え、今の状況の俺を街にまで連れて行ってもらわなきゃならない。


「ハードル高いなあ」


 どうすればいいんだろう。


 ……もう安直に記憶喪失美少女でいいか。

 なんか名字も付いてるし、貴族記憶喪失美少女ってことで。そうすりゃ深読みしてくれるでしょ(適当)。


 よし。



 私、記憶喪失の貴族の超美少女、ユウカ=ロックエデン。


 なんか目覚めたら、草原に一人で全裸で転がってたの。



 ……うん、まあ、これでいいや。しょうがないじゃん、他に思いつかないんだから。



「ああ……出切れば第一村人は親切で美人な女性であってくれますように……」



 切実に。





 そして、重要なのは今後の目標設定だ。

 人間、目標がないとグダるからね。


 うーん、そうだな、まずは自立した生活を送れるようになることにしようか。

 幸い前世では一人暮らし……いや、二人暮しか?

 まあ自炊はしていたから、そういうのは平気だ。


 つまり、俺に必要なのは金稼ぎの手段と、生活の拠点だ。

 生活拠点は金がないとどうしようもない。つまり、まず最初は金稼ぎの手段の確保だ。


 この世界には魔物がいるらしい。つまりそれを狩る存在、いわゆる冒険者っぽいモノもいるはずだ。


 この身体のスペックはたぶん高いし、《毒薬作成》とかいう戦闘向けのスキルも持ってる。なら、そういうので稼いでいければいいかな、って感じかな?



 私、貴族の記憶喪失美少女ユウカ=ロックエデン、草原で全裸で目覚めて、冒険者志望なの。



 ……どんどんイロモノになっていく……。


 まあ、これが現実的な路線ですかね。


 はあ、これが勇者として召喚されたなら、こういうことは考えなくて済んで楽だったんだろうけどね……まあ勇者になった時点で面倒くさそうだけど。


 よし、とりあえずこれで、この世界を生きていこう。


 まずは自立だ。



 これは絶対に達成しよう。



 俺は、一度決めたことを違えることはしないよ。




「そういうのは、嫌いなんだよね」




 前世からね。

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