はじまり
この話だけ6000文字ですが、基本的に一話3000文字でいきます
プロローグです
ぐだぐだですが、次の話も読んでくださると幸いです
とある世界の。
とある城の。
とある地下室にて。
「成功したぞっ!」
複雑な幾何学模様。
その中心から、光が迸る。
「これで…ようやく…っ」
その周囲を取り囲むのは、ローブを着、いかにも魔法師然とした格好をした男女、数十名。
「二人の勇者が……っ!」
彼らはその手に持つ杖をかかげ、祈る。
「二勇者よ……我らを救い給え……っ!」
そして、その光が強くなり。
一人の、美しい金髪の少女が、涙を流しながら、最後の言葉を口にする。
「発動……『勇者召喚』ッ!」
その光はもはや目を開けていられないほどとなる。
そしてその光が収まり、果たしてそこにいたのは―――――
「一人……だけ……?」
―――――たった一人の、黒髪の青年だった。
異様な雰囲気に包まれるその場で、その黒髪の青年は、口を開く。
「……おや?ここは……悠様はどちらへ?」
◇
とある城から、遠く離れた地。
草原。
雲一つない晴天。
しかし突如。
そのまっさらな上空に、光が集まる。
その光は徐々に増し、ナニカを形作る。
そして、光が迸り、そこに現れたのは――――
――――一人の、人間だった。
その髪は蒼。しかし、そこには銀も混じり、太陽を反射し光り輝く。
その姿は少女。歳は13ほどだろうか。まだ無垢といえる年齢。しかし、体は少し成熟し始めており、胸は少し膨らむ。
その顔はまさに美貌。幼さに少し大人っぽさが混じり、そのバランスが、独特の美しさを放つ。それを見れば、人々は「綺麗」としか思えないだろう。
そして、今開かれたその瞳は澄み切った碧。まさしく、広がる大空と同じ色。その目は、今、何を映すだろうか。
この日、新たな歴史が刻まれる。
魔王の誕生に対し、ヘインセラ聖国は勇者召喚を実行。
通常、二人が召喚される勇者召喚において、一人しか召喚されないというイレギュラーが起きる。
しかし、この一人だけの勇者は破竹の勢いで、魔王へと迫る。
この輝かしい歴史の一頁目である。
だが、この世界の住人は誰も知らない。
この日、勇者召喚と同じ時刻に。
この世界を揺るがす一人が、とある草原で目を醒ましたことを。
その少女が、この世界へと、足を下ろしたことを。
「フフッ」
今は、まだ知らない。
そして、今の、その少女は。
「目がぁぁああ、目がぁぁああああ!!」
あの女神仰向けに転移しやがって、ぶっ殺すぞ!
太陽を目に映して、焼かれていた。
◇
―――――数時間前
ふと。
「はっ?」
目を覚ませば、そこは真っ白な世界。
辺りを見回しても、果ては見当たらない。
……なんだこれ。
「おはようございます、岩田 悠 様」
「……はっ?」
そんな空間の中で。
突如として目の前に現れたのは……女神?
この世のものではない(断言)美貌。
なんか神々しい雰囲気。
お決まりの白いふわふわした服(胸零れ落ちない?)。
なにより、背中から生えた、一対の純白の翼。
……うん、女神だね。そうとしか思えない。
えぇ……急にふぁんだじぃ……。
「この度、岩田様は勇者召喚の対象となりました」
「……はっ?」
え、っと、頭大丈夫?
「……この度、岩田様は勇者召喚の対象となりました」
あっ、続けるんですね、スルーですかそうてすか。
「しかしその際に、イレギュラーが発生したため、通常経由しないこの女神の領域に、岩田様を呼び出させていただきました」
へー、ようわからん。何言ってんのこの人。
「………」
……いや、分かったよ、聞いてあげるから。
え、えー、イレギュラーってなにー。(棒)
「……召喚中に、召喚対象が死亡したため、召喚に不具合が発生しました」
「……はっ?」
は?しか言ってねえな。
……てか何言ってんだ、このおばさん。
それじゃあまるで、俺が死んでるみたいじゃないか。
「……その通りです」
「は?」
なんだこいつ。頭逝ってんじゃねえの。
「………」
あ、いや、待って。ちょっと思い出してきた。
確か、学校への道で、幼馴染(男)と合流して、そしたら急に足元が光りだして、それで……
なんだっけ?
「……足元の石に躓いて、頭からトラックへ激突して死にました」
……ちょっと言い方に棘あるね、女神さんや。……あ、ホントだ、よく見たら俺の身体ないじゃん。形容し難い何かがふわふわしてるだけじゃん、どうやって発声してんのこれ。
ていうか死に方ダサいなあ……しかも異世界転移と異世界転生を混ぜるなよ……。別に未練とかは……少しはあるけど。
「通常、この時点で輪廻転生するのですが、召喚対象として選ばれた時点で、魂が召喚先の世界へ適応されてしまったため、元の世界での輪廻転生の輪に戻ることは出来なくなりました」
えぇ……そこは頑張れよ……。
「……しかし、召喚先の世界へ行こうにも、身体が既に死亡しているため、不具合が起こる可能性が高いのです」
……詰んでんじゃん。ダメじゃん。
「そこで岩田様には、召喚先の世界にて、新たに輪廻転生の輪に入るか、ここで新しい身体を作成して、その身体で召喚先の世界で生活するかを選択していただきたいのです」
……え、一択じゃねえの?それ。
「………」
いや、一応説明は聞くよ?聞くからね?
えー、輪廻転生ってなにー。(棒)
「……召喚先の世界にて、岩田様の魂を輪廻転生の輪に組み込みます。その際、記憶の保持などは不可能ですので、ご了承ください」
……え、ますます一択じゃん。
「……しかし、この度の補償として、来世の生まれや才能を、ここで決定することができます」
……いや、それ、俺関係ないよね?
「………」
……ああ、うん。
なんとかして記憶の保持とか出来ないの?
「記憶の保持には多くのエネルギーを消費するほか、生誕直後の脳には負担が大きいため、正常な活動が不可能となる恐れがあります」
意外と副作用がエグい。
ああ、うん、いや別にいいんだよ。聞いてみただけだし。
じゃあ、次は本命。身体の作成って何?
「私の身体の一部から、岩田様の身体となる元を作り出して、岩田様自身がその身体の外見、才能、スキルを決めていただきます。その際に消費できるエネルギーは限られていますが」
ん?私の身体の一部……?え、どゆことそれ……。女神分裂するってマジ……?
……ていうか、なんかもう、一択じゃねえか。
「じゃあ、身体の作成でお願いします」
「了解しました。身体の元を作成します」
どう作るのそれ?
「ふんっっ」
アーーーーーッ、胸引きちぎったァーーーーーッ!!痛い痛い痛い!!しかもふんっって、ふんっって言ったよ、女神の癖に!!えっ、しかもなんかもう胸生えてきたーーーーーッ!!怖い怖い怖いよそれ。
「作成完了しました」
そう言って、女神が差し出してきたのは、自分の胸の片方、だったモノ。
え、いや……うん……え、これで作るの?
あんまり触りたくないっていうか、どうせならちぎる前のを触りたかったっていうか。
「……姿を思い描けば、その形になります」
え、ああ、良かった。これには触りたくないからね。
「………」
いや、だって、ねえ?言っちゃ悪いけど、肉塊だよ?これ。触りたくはないよねえ。
「……大きな姿を創造するほど、消費エネルギーが増加しますので、注意してください」
おけおけ。
「では、残りエネルギーを100と設定します」
ああ、わかりやすいね。
じゃあ、作っていこうか。
そうだな、まあ性別は……男でいいか、変えるのもなんだし……。
「……っておいっ!」
なんで男にしただけで残りエネルギーが23になってるんだよっ!
「元となる私の身体が女性型ですので、男性型にするのはエネルギーを消費します」
にしても消費しすぎじゃねえっ!?
生やすだけだよね?そんなに変わんないよね!?
これお前が男嫌いなだけだよねっ!?
「………」
はいだんまりですよ、政治家ですか?
……はあ、分かったよ、女にすればいいんだろ。
「………♫」
……このババア……。
ああもういいよ。分かったよ。やってやるよ。
どうせ女にするなら、超絶美少女にしてやるよっ!
年齢は16……だとすぐに少女じゃなくなるな。13くらいにしておこう。あ、これでもエネルギー消費すんのね。消費は……13?年齢と同じか。
髪は……肩くらいの長さがいいか。あんまり長くても邪魔だろうし。色は……青かな、好きだし。ああ、でも銀も欲しいな、うん、混ぜちゃえ。おお、綺麗になった。
一番の問題は顔だ。可愛く、美しく、それでいてバランス良く、不自然じゃない顔じゃないと。
そうだな…目は…少し切れ長にしてクールな感じに、他は少し可愛い方向に振るか。唇は薄くして、鼻はスッキリした感じに。全体はちょっと和洋折衷な感じに。お、いい感じじゃない?
こうして完成した少女は、青銀に輝く髪を持つ、スレ違えば誰もが振り向くような、圧倒的美少女だった。
……え、俺、これになんの?ちょっとやりすぎた?
……いやでもせっかく作っちゃったし、これでいこう。ここまで綺麗に出来たし。
うん、これでいいや。
「では、続いては才能とスキルを選んでいただきます」
はいはい。
「スキルは好きなものを一つだけ、選ぶことができます。一覧をお見せしますので、そこから選んでください」
……カタログかな?
「……才能は近接戦闘、魔法戦闘、生産技能、この三つに分かれています。それぞれにエネルギーを振ることで、身体の所有する才能が決まります」
……ふーん。
「では、お選びください」
女神がそう言うと、俺のの目の前にスキル一覧が表示された。
なにこれAR?すごいね。
えーと、なになに…?
おお、大量にあるな、スキル。
この中から一つ?悩むなあ。
ただ、俺の直感が、才能は大事だと告げている。いや、なんの直感かは知らないけど。
だから、出来るだけエネルギー消費の少ないスキルを選んで、多くのエネルギーを才能にまわしたい。
それを前提にしてスキルを選んでいこう。
まずはテンプレのスキル?達。
《勇者》《魔王》《聖女》《剣聖》《賢者》etc…
《勇者》
称号:勇者を獲得する
Lv1:スキル《剣術Lv3》相当の力を獲得する スキル《光剣Lv1》を獲得する
消費エネルギー:100
つよそう(小並感)。
強そうだけどさ、消費エネルギー100とか、もう取らせる気ないよね。え、なに?0歳で転移しろと?ムリムリ死ぬよ、それ。
……てか勇者ってスキルだったの?
勇者と魔王は消費エネルギー100で、他のは消費エネルギー80。これじゃあ才能の方に全くまわせない。没だな。次。
《火魔法》《水魔法》《風魔法》《土魔法》《光魔法》《闇魔法》《空間魔法》《時間魔法》《重力魔法》etc…
《火魔法》
火魔法が扱えるようになる
Lvが上がるほど、威力・効果が上昇する
お決まりの魔法達。
ふーん、固定された詠唱はないのか。
でも、普通すぎだな。次行こう。
《剣術》《体術》《槍術》《槌術》《刀術》《弓術》etc…
武術軍団。
うーん、自分で出来そう。
これはいいや、次。
《無限収納》《解析》《鑑定》《神眼》
なんかラノベでよく見るやつ。
無限収納さん空間魔法と被ってませんか?
それに解析と鑑定って何が違うの?
てか神眼って……ヤバそうだな……。
《神眼》
あらゆるモノが観えるようになる
消費エネルギー:100
あっ、アカンやつやこれ。やめよう。次いこう。
…………、うーん、めぼしいヤツはこれくらいか。
《暗殺術》《暗器生成》《殺人鬼》《隠密》《呪殺術》《毒薬作成》
ああ、いい響きだ……この物騒なスキル達よ……。なんだ文句あんのか、こういうのが好きなんだよ俺は。ぶっ殺ロリしたいんだよ。
《暗器作成》
暗器をいくらでも作成することができる
Lvが上がるほど、作れる暗器の種類が増える
Lv1:手裏剣
消費エネルギー:50
《殺人鬼》
同種の生物を殺すほど、ステータスが上昇する
Lvが上がるほど、効果が上昇する
消費エネルギー:70
《呪殺術》
呪殺術が使えるようになる
Lvが上がるほど、威力・効果が上昇する
消費エネルギー:60
ああ、悩ましい……どれも素敵じゃないか……。
暗器作成は若干ネタっぽいけど……好きなだけって……。
ん?おや、これは……?
《毒薬作成》
好きな効果の毒薬を作成することができる
作成にはMPを消費する
Lvが上がるほど、作れる毒薬の種類が増える
Lv1:3種類
消費エネルギー:60
……へえ。
『好きな効果』の毒薬ときたか。ヤバくない?それ。
消費エネルギーは……60か。
これは……なかなかじゃない?
よし、《毒薬作成》にしよう。俺の直感もそう言ってる。だからなんの直感だよ。
よし、次は才能だ。さっさと決めよう。女神がすごく退屈そうな顔してるし。そんな顔していいのか、女神よ。
うーん、俺が近接戦闘をしないっていうのは有り得ないからなあ。でもせっかくの異世界で魔法使わないってのもねえ……。
ん?いや待てよ?毒薬作成って生産技能に影響されるんじゃないか?もしこれで効果が上下するなら……ふむ。
なら生産技能に多く振ろう。
そうだな……これでいいか。
近接戦闘:7
魔法戦闘:7
生産技能:13
よし、こんなもんだろ。これでピッタリ100消費だ。
おーい、終わったぞー女神ー。
「……z、はっ!」
……おい女神、お前……。
「………では、これでよろしいですね?」
あっスルーするの、すごいね。
「これで、よろしいですね?」
……ああうん、それでいいよ。
「では最後に、自らの名前をお決めください」
え?名前?今のままじゃダメなの?
「それでも構いませんが、新しい身体ですので、新たな名前も付けることが可能です」
ふーん、まあ、異世界で岩田はねえよな……。
せっかくだし変えてみよう。今の名前をもじればいいか。
名前は……悠……ゆう……ユウカ?
……うん、安直だけど、これくらい似てないと呼ばれても反応できなさそうだし、これでいいか。
名字は、そうだな……岩田、ロック?田はどうしよう……あ、エデンとかカッコよくね?ロックエデン。あ、良さげ。
よし、じゃあ名前はユウカ=ロックエデンにしよう。
「では、転送を開始いたします」
ほーい。
……あ、ちょい待ち。転送する場所は、勇者召喚から離れた場所にしてくんない?
「………?」
いや、勇者とか面倒くさそうだからさ。
「……了解しました。では、良い人生を」
はいよ。
さて、なんかよく分からんが異世界らしい。
前の世界に未練がないこともないが……まあ、大事なヒトはいないしな。
視界が霞む。
ああ、いよいよか。
「フフッ」
まあ、楽しんでいこうか。
いざ、異世界へ。
「ああ、おはよう、世界」
〈名前がユウカ=ロックエデンに設定されました〉
〈特殊スキル《毒薬作成Lv1》を獲得しました〉
「うがぁああ、目がぁぁああ、目がぁぁあああ!」
死ねクソ女神っ!
◆
「やっと行きましたか……」
まさか、3日間もスキルを選び続けるとは……。
「仕事が溜まってしまいました」
ああ、面倒くさい。
「……そういえば、彼は結局何のスキルを選んだのでしょうか」
……それくらい、いいですよね。
虚空へ手を伸ば――――
「早く仕事しろっ」
「はいっ!!」
くっ、ここで上司女神の乱入とは……。
まあ、いいでしょう、そこまで重要ではありませんし。
「ああ、そうだ、お前、変わったスキル知らないか?」
「変わったスキル……ですか?」
「ああ、何やらスキル開発部の奴らが調整ミスったらしくてな、名前は……なんだったか……」
「……いえ、存じません」
「そうか、ありがとう」
「いえ」
そう、彼女は知らない。
なぜなら、彼のスキルを確認していないのだから。
ブックマーク、感想、評価、なんでも待ってます