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リンベル

「おうっ、おえっ、おうぇぇええぼろ…」

「………」


 サッと回避。二度も食らわんよ。


 無事西門に到着。風魔法飛行で結構すぐだった。速いわあ。


「うえっぷ、ちょ、飛ぶとは聞いて無い……」

「聞かれませんでしたし」


 聞かない方が悪いってそれ一番言われてるから。


「とりあえず私はギルドに行って、コレ処理してきますので、ここで失礼します」


 そう言って、俺の周りを浮遊するロックバードの死体計10個を指差してみる。ええ、風魔法で持って帰ってきました。


「うぷっ、それどうやってんの……?」

「企業秘密です」


 教えねえよ。


「ちょっと待ってユウカちゃん……頼みたいことがあるの……」

「えー」


 めんどくさそう。


「あとでお願いします」

「待って〜…せめてギルドで待ってて〜…」


 気が向いたらね。


 さて、早く行こう。








「ルミルさん」

「はい、次のか……あれユウカさん、どうしたんですか?忘れ物ですか?」

「いえ、依頼達成してきたので、報告に」

「えっ……?だって朝に……」


 ちょい早すぎたかね。


「交戦したら巣まで逃げられたので、追いかけて10羽殲滅してきました。コレ、その死体です」

「えっ?えっ?追いかけ、え?」


 落ち着いてー。


「ルミルさん」

「あっ、すみません、ちょっと驚いちゃって。……ふう、はい、ロックバード討伐依頼の達成ですね。鑑識に回しますので、少々お待ちください」

「分かりました」


 やっぱルミルさん仕事人だなあ。


「ところでユウカさん、追いかけたってどうやったんですか?ロックバードってかなり速いと思うんですけど……」

「ああ、それならちょっと風魔法で飛んだだけですよ」

「風魔法で、飛ぶ……?」

「じゃあ、あっちで待ってますね」

「え、あ、はい」


 普通飛ばないのかね。便利だと思うんだけどなあ。



 受付から離れて、ギルドに併設された食堂(というか酒場)へ。


「すみません、ジュースみたいなのってありますか」

「あいよ」


 渋いマスターに声をかけたら、出てきたのはオレンジジュースもどき。あるのか……。ストローまで付いてるし……。


「……ん、おいしい」


 果汁100%ですね分かります。おいしいなあ。

 これでしばらく待とう。








「ユウカちゃんっ!」


 騒がしい。


「私の護衛してくれないっ!?」


 間に合ってます。



 酒場でくつろいでたら、そこに突撃してきたのはリンベル。

 いきなり訳分からんこと言い出したな。


「なぜ、私に?」


 一番の疑問はそこだ。他にもいっぱい冒険者いるだろ。


「なんかビビっときたから!」


 ……馬鹿か。あ、馬鹿だったわ。


「それに、女の子の冒険者ってなかなか居ないから、私男の人あんまり好きじゃなくて……」


 ……むう。


「……どこまでの護衛で?」

「さっきも言ったけど、鉱山まで!」

「……それ、私に何か利益あります?」

「ユウカちゃんが言うならなんでもするよ!」


 ん?今なんでもす(ry


 改めて彼女を見てみる。


 巨大な双球。

 美しい髪。

 無垢な瞳。

 可愛らしい顔立ち。


 コレを穢したら、どれだけ――――


「………」


 ……いやいや。


「……何でもするなんて、簡単に言っちゃだめですよ」

「いやでも―――」

「ユウカさーん」

「はーい、今行きまーす」


 話は終わりだ。


「あ、ちょっと待ってよ!」

「待ちません」


 早足で歩く。我ながら足長いな。


「ユウカさん、鑑識終わりました。どれもいい状態でしたよ。あのロックバードはギルドに売却しますか?」

「それでお願いします」


 さっさとお金貯めて拠点、の前に刀を買わないと。

 あー、でも普通の武器屋に刀無さそうだなあ。


「はあ……どこで刀買えばいいかな……」

「刀!?刀って言った!?」


 まだいたのかお前。


「刀なら私作ってるよっ!護衛してくれたらタダで作ってあげるよっ!」


 ……ほーん?


「……それ品質大丈夫ですか?」

「失礼だねっ、私の武器は全部最高級だよっ!」


 いや、全部は嘘だろ……。


「……ホントに作ってくれます?」

「もっちろん!最高の素材で作ってあげるよ!」


 ……ふむ。たった一回の護衛で刀が手に入るなら、悪くはない、か?いろいろ怪しいけど。


「………(キラキラ)」

「……はあ」


 そんなつぶらな目で見られるとなあ……。


「……分かりましたよ、引き受けます。本当に私でいいんですね?」

「やっほ〜い!さっすがユウカちゃ〜ん!」


 なにがさすがやねん。


「むしろユウカちゃんじゃなきゃダメだよ!こんな美少女と一緒にいれるなんてなかなかないよっ!なんか話も合うしっ!」


 まあなんか気楽に話せるけどさ……美少女って……。


「そうと決まれば早速行こ〜っ!」

「ちょ、引っ張らないでくだ……」


 ああ、もう。


「あっ、ユウカさーん!報酬はギルドの口座に振り込んおきますねー!」

「すみませーん、お願いしまーす」

「早く行こっ!」

「はいはい、分かりましたよ……」


 行きますよ、行けばいいんでしょ。


「めんどくさいなあ……」






 ◇






 再び西門から街を出て、山へ。


 リンベルは歩くのが遅かったので、パッと抱えて移動。


「わっ、きゃっ、にゃっ」

「口閉じてください、噛みますよ」

「ちょっ、まっ、速っ」


 お姫様だっこで運んでるけど、ほぼほぼ全速力で走ってる。これで疲れないとか、この身体どうなってんの。


「あ、魔物」


 また?


「『火炎槍(ファイアジャベリン)』」


 取ってつけたような詠唱で発射。

 貫きます、燃やします。


「ギギャァァアア!!」

「えっ、何っ!?」

「いえ、ちょっとCランクの魔物を燃やしただけですよ」

「そ、そう……?」


 ………。







 山の、深くへ。


 行く。


 行くけど。


「……これは」

「うわあ……」




「キシャシャシャシャァ!」

「グルルルゥ」

「ああああああぁぁああ」

「キィェェエエエ!!」

「ブモォォオオオ!」

「………」




 そこには多種多様な魔物。


 Bランクのグレードマーダースパイダーを

 単体Cランク群れBランクのヘルハウンド。

 謎の魔物。形はぐちゃぐちゃだし、《見切り》じゃ見えん。たぶんBランク。

 Cランクのブルーキラーモンキー。

 Cランクのオーク・ソードマン。

 Bランクのサイレントマンティス。



 ……なんだこれ。


「……多すぎる」


 なんでこんなに種類が多い?1つの山にこんなに集まるか?ていうかなんでこいつらは、ここに集まってるんだ?縄張りは?


 しかも軒並みランクが高い。Dランク以下がいないってどうなってんだ。


「……明らかに異常、か」

「そんなの気にしないでゴーゴーっ!」


 ……この野郎……何も考えないで……。


 …なんか、もういいや。めんどい。


「……『火炎旋風(ファイアストーム)』」


「「「「ギャァァァァァアアア!?」」」」


 みんな焼却処分だ。


「……ハッ」


 ちなみに今のは火魔法と風魔法の混合。ドライヤー(仮)の改良版の広域殲滅魔法だ。魔力操作の練習してたら使えるようになった。でもドライヤーはもう使わない。絶対。


「はい、行きましょ」

「……すっげぇぇええ!何今の!何今のっ!?ユウカちゃん強えええええ!!Dランクとか嘘くせえええええ!!!」


 うるさいよ。


「さっさと進みますよ」

「あ、はいよ〜!」


 ちなみにこの間ずっとリンベルはお姫様だっこです。

 柔らかい。役得かよ。


「あっ、待っ、速っ、あべっ!?痛〜〜っ!!」


 だから噛むよって言ったのに。









 ガキンッ


「ちぃっ」


 刀が通らんっ。


「ガァァアア!」

「おふっ!」


 レッドオーガ・ジェネラルの右ストレートを横に飛んでギリギリで躱す。危ねえ。


「クソッ」


 刀は使えん。邪魔、捨てる。

 さあ、素手だよ。


 拳に魔力を集める。あと全身の要所にも。


 殴り合いだ。


「オラオラオラァ!」

「ガァアアァァァア!!」


 お互いに有効打が入らない。だけど。


「ガァッ!?」


 こっちには魔法がある。

 足場を崩して体勢を乱す。

 隙だらけだ、よっ!


「死ね死ね死ね死ね死ねっ!」

「ガッ、ゴッグボッ」


 全身全力魔闘術で滅多打ち、からの。


「ふっ!」

「ゴ……」


 渾身のストレートで腹を貫く。

 そこでやっと倒れるレッドオーガ・ジェネラル。


「ふぅー」



 メギャ



 その頭を踏み抜いて終了。


「疲れたあ」


 Aランクの魔物は強いなあ。『賛美の狂歌』飲んでギリギリだもんなあ。


「お、終わった……?」

「はい、終わりましたよ、なんとか」


 ここは山にあった洞窟の入口手前。

 この洞窟が採掘場所らしい。

 んだけど……。


「これ、入るんですか……?」


 入る直前にレッドオーガ・ジェネラル単体と遭遇。本来は下級種を従えているはずのジェネラルと単体で、だ。異常すぎる。


「危ないですよね?」

「むぅ〜っ、でもここまで来たんだから少しは取りたいじゃんっ!先っちょだけだよっ、先っちょだけ!」


 それ絶対奥まで入る奴じゃないですかやだー。


「………」


 いやまあ確かに?ここまで来て何にもしないで帰るのは癪ではあるけどさ……癪、だけどさあ。


「ユウカちゃん」

「……はあ、分かりましたよ、行きますよ。すぐに戻りますよ?」

「わ〜いっ!ユウカちゃん分かってるぅ!」


 調子のんなよてめえ。


「じゃあ私が先に行くので、道、教えて下さいね」

「はいよ〜っ!」



 こうして俺達は、明らかにおかしい洞窟に足を踏み入れたのだった。

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