ゴリラゴリラゴリラ
一章を分割しました
第二章、スタートです
ゴリラ。
「………むふー」
ゴリラだな。
「ムキッ、ムキッ」
暑苦しい。
「ふんすっ」
マッスルポーズとんなゴリラ。
「あのー……」
「ああ、すまん嬢ちゃん、なんて話を切りだそうか迷ったものでな」
迷うとマッスルするんですか?
今、病室の中の人口密度は高い。
まず、美人女医さん。
次に俺。
からの竜の咆哮4人。
そしてゴリラ(ギルマスのことです)。
計7人。
いや狭いわ。特にゴリラ、お前邪魔だよ。
「では、今回の経緯について話してくれるか?」
「分かりました」
そう、これはゴブリン事件の聞き取り調査だ。まあ、ちょっと確認するだけだろうけど。
「まず私はゴブリン討伐依頼を受けて――――」
説明をしていく。
俺がドジったところはカットで。
「その時《魅了耐性》を獲得して、魅了が解けたようです。その後はゴブリン達と戦闘になったため、殲滅しました」
ええ、殲滅です。一匹残らず。
「そうか……本当に、嬢ちゃん一人で、殲滅したんだな?」
「ええ」
見つめてくるゴリラ。
いや、需要ないです。
「……嘘を言ってるようには見えないな」
まあ言ってないし。
「……よし、なら嬢ちゃんはこれからDランクだ。ギルマス権限で昇格させよう」
……は?
「え、何でですか?」
「Aランク相当の実力者を放置しておくのはもったいないだろう?出来るだけ早く昇格させてやりたいからな」
……Aランク相当だってバレてる。なんでや。
「えっ、と……なんで……」
「ん?なんでって嬢ちゃん、Aランクの魔物を倒してるんだから、そう考えるのは当たり前だろう?」
OH……あのゴブリンそんな強かったのか……。まじかい……。
「え、あ、ありがとうございます?」
「おうっ」
ゴリラドヤ顔。
……いやゴリラなんだって。
うん、まあ、上がるならいいのかな?
「ユウカちゃんすごいわねっ!いつの間にそんなに強くなったの?」
「え、あー……戦ってる最中、ですかね?」
なんとも言えん。
「これじゃあ、すぐ俺達も追いつかれるかもな」
「すごいです……」
「………」
……なんとも言えん。
「ゴブリン達の討伐報酬は嬢ちゃんに支払われることになってる。かなりの金額だぞ?」
「えっ!!」
マジッ!?臨時収入!?
「なんでそこに一番反応するのよ……」
「じゃあ、俺はギルド上層部と掛け合ってくるから、また会おうな、嬢ちゃん」
「はい、ありがとうございました」
ゴリラが出ていく。急に部屋がすっきりしたよ。
「俺達もそろそろいくよ」
「また明日ね、ユウカちゃん」
「さようなら、ユウカちゃん……」
「……じゃあな」
「はい、皆さんもありがとうございました」
みんな行っちゃった。暇だな。
「じゃあユウカさん、安静にしていてくださいね」
「はーい」
そして誰もいなくなった。(名言)
「……はあ」
暇だなぁ……。
「ああぁぁぁぁ……」
魔力を全身に流す。
すると、なんか敏感になって、全身活性化した感がある。うん。
「あぁあぁあぁあぁあぁあぁあ」
風魔法を顔に強弱つけて吹きつける。
疑似扇風機の完成。うん。
「わぁれぇわぁれぇわぁうちゅうじんだぁあぁあ」
うん。
あ、これドライヤーになるんじゃない?
風魔法に火魔法を混ぜて……。
「あっづぁぁああ!!」
火炎放射器ぃぃいい!?
あっ、髪がっ、自慢の髪がっ!!
「うう……先っちょ焦げちゃった……」
顔面に火炎放射器を浴びても火傷すらしない俺。人間辞めてるね。
「もう二度とやらない……」
……はあ。
「暇だなぁ……」
することねえなあ。
「《毒薬作成》」
パクリと。
痛みはない。《痛覚遮断》の効果でなんともなくなった。人間辞めてるね。
「……魔力操作の練習でもするか」
出来るだけ効率良く出来るようにしよう。
魔力の消費は少なければ少ないほどいいからね。
全身に魔力を巡らす。手、足、頭の先、髪の先まで全てに通す。筋肉、骨、神経、組織全てに満遍なく。
「ふぅーー……」
集中して。
〈《魔力操作》のLvが7に上昇しました〉
〈《魔闘術》のLv2がに上昇しました〉
〈《魔力操作》のLv8がに上昇しました〉
◇
「ありがとうございました」
「お大事に、ユウカさん。もう二度とご利用がないように」
「ふふっ、分かりましたっ」
午後3時くらい。
やっと退院。猫髭亭へ向かう。
入院の間はずっと魔力を操ってた。おかげで今では全身に好きなように行き渡らせることが出来る。
しかも何やら副次的効果もあったようで、身体の細胞に魔力が浸透したのか適応したのか、前より身体が軽い。動きも速くなった。いいね。
あと肌と髪にハリとツヤが出て、さらに美少女になってしまったようで。おかげで視線が集まる集まる。
そして今の気温はまあまあ高い、つまり薄着である。具体的に言うと半袖の上に、足が結構見えてる下。
もうね、足に目が向きすぎだよね。男って気持ち悪い。
「ただいま帰りました」
到着。
「あ、久しぶり、おかえりなさい、ユウカさん」
「ただいま、ミカンちゃん」
ミカンちゃんのお出迎え。
耳がピコピコ。ゴブリンとは大違い。
可愛い。
「どうしてたの?」
「いやあ、少し怪我をしてしまいまして……」
「大丈夫?」
「はい、もうこの通り。ピンピンですよ」
「良かったあ」
笑顔に癒やされる。何この生物。
「ミカ〜ン!」
「はぁーい、じゃあね、ユウカさん」
「ああ……はい、また」
女将許すまじ。
カレンさんのいる部屋へ。
ノックしてから。
「はーい」
「失礼します」
いざ女子部屋へ。いい匂い。
「おかえりなさい、ユウカちゃん!」
「おかえりなさい……」
うん、やっと帰ってこれたね。
「はい、ただいま」
「え、明日からまた依頼行くの?」
「はい、もう十分休みましたし。何よりちょっと暇で……」
「腕、大丈夫ですか……?」
「はい、もう違和感はないです」
魔力流してたらすぐ治った。てか前より良くなった。
「早くお金を稼いで、皆さんに恩……いえ、早く独り立ちしようと」
恩返しって本人達に言うのは、なんか違うよね。
「ホント、しっかりしてるわねえ」
「前にも言いましたけど、もっと頼ってくれていいんですよ……?」
「いえ、これ以上は……」
「なら、いいですけど……」
これ以上は無理。恩が返せる気がしない。
「あ、ねえユウカちゃん、私達にもう一回ゴブリンとの戦いのこと、教えてくれない?もっと知りたいなーって思ってたの」
「武勇伝、聞きたいです……」
「ええ、まあ、いいですけど……」
人に聞かせるもんじゃないと思うよ?
「じゃあまずは――――」
「持ち帰れないほど薬草取った?やりすぎよユウカちゃん……」
「え!?森で迷子になったの!?何してんのユウカちゃん!」
「自分から突っ込んだの!?逃げなさいよ!」
「思ったよりユウカちゃんがドジだったわ」
「むぅ…」
「可愛いですねえ……」
「うひゃっ!リュエルさん、ちょっ、まっ」
「あ、ズルいわリュエル。私にも――――」
騒がしく、一日が終わる。
◇
「……ぅむ」
朝。ちょい遅め。
久しぶりの宿の天井。
「……あさごはん」
食べなきゃ。
「…おはよぅございます」
「あら、ユウカちゃんおはよう。眠そうね」
「はい…」
今日も朝から肉。
「ぃただきます……」
食べましょ。
「うえっぷ」
目が覚めるわ。
「いってきます…」
「おーう」
「いってらっしゃい、気をつけてね」
ギルドへ向かう。
いざ2つ目の依頼へ。……1つ目から濃かったなあ。
ほい到着。
さっさと掲示板へ。周りの視線がうざい。
「ね、ねえ君!俺らと一緒にパ――「結構です」
他人と組む気はありません。あとお前キモい。
「あっ、ユウカさーん、少しいいですかー?」
むっ、この声は。
方向転換。受付へ。
「どうかしたんですか?ルミルさん」
美人受付嬢、ルミル。すき。
「すいません、ユウカさん。冒険者カードの更新が来てましたので」
「更新……?」
「はい、Dランクへの昇格ですっ」
……ああ、ゴリラか!
「すごいですねユウカさん!13歳でDランクなんてなかなかないですよ!」
「え、あ、ありがとうございます」
そんなすごいの?
「あ…こほん、失礼しました。この昇格に伴い、ユウカさんはCランク依頼まで受けられるようになりました。ただし、Fランク以下の依頼は不可となったので、ご注意ください」
「分かりました、わざわざありがとうございます」
「いえいえ。すみません、引き止めてしまって」
いいってことよ。
ルミルさんと手を振りあって別れる。
さて、気を取り直して、掲示板へ向かおう。
銅色になったカードを手に。
冒険者ユウカの活動再開だ。