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初冒険

 講習を終えて、一言。



 〈スキル《火魔法Lv1 》を獲得しました〉

 〈スキル《水魔法Lv1 》を獲得しました〉

 〈スキル《風魔法Lv1 》を獲得しました〉

 〈スキル《土魔法Lv1 》を獲得しました〉

 〈スキル《魔力操作Lv1 》を獲得しました〉



 スキルおいしい。



 〈スキル《刀術Lv1 》を獲得しました〉

 〈《刀術》のLvが2に上昇しました〉



 それに、日本人なら、やっぱり刀だよね。



「お疲れ様でした」

「おう、お前は才能あるから、すぐに強くなるだろ」

「ふふっ、ありがとうございます」


 教官に挨拶。

 この教官はすごく好感が持てる。俺の顔を見ても少し驚くだけで、後は普通に接してくれた。こう…全員に平等って感じ?うん、いい人だ。




「………」




 あっちのクソガキとは違ってな。こっち見るなカス。


 あの野郎、俺との模擬戦の時手ぇ抜きやがった。思ったより剣の間合いが広くて対応出来なかったのに。あそこで決めないとかナメてんの?

 しかもそのうえこっちを笑ってきやがった。

 いやもう、殺してやろうかと思ったよね。思わず笑っちゃったよ。

 だからもう本気出して全力で刀の扱い覚えて、最後には完全にあいつをぶっ飛ばしてやった。見様見真似の抜刀術も出来たし。ぷぷぷ、ざまあみろ。


「………」


 ああ、もう、このまま依頼受けていこうかと思ったけど、あいつがいるならもう帰ろうか。こっち見すぎだカス。


 ギルドから出る。

 必然的にあいつの横を通り抜けるわけだけど。


 もう二度と、会いたくないね。


 そんな君に一言。




「ごきげんよう」




 おっと、ちょっと悪役令嬢っぽくなっちゃった。







 ◆






 side:イチル







 俺は、どうかしてしまったみたいだ。


 あの模擬戦からずっと。


 何も考えられない。


 他のことが目に入らない。


 ずっと、彼女のことを目で追ってしまう。


 その細い手足に。


 その胸元に。


 その美しい首筋に。


 その可愛らしい顔に。


 視線がいってしまう。


 ああ、どうかしてしまったみたいだ。


 この気持ちはなんだろう。


 俺の心は、君でいっぱいだ。


 なんだか、とても、甘ったるい――――



「…ああ、そうか」



 これが、恋か。


 そう考えれば、ストンと、胸に落ちた。






 彼女の名前はなんていうんだろう。

 彼女はどこに住んでいるんだろう。

 彼女はなにが好きなんだろう。

 彼女はどうして冒険者になるんだろう。

 彼女と目が合うのはどうしてだろう。

 彼女が俺に微笑んでくれるのはどうしてだろう。


 彼女はなんであんなに強いんだろう。


 彼女はなんで、あんなに美しいんだろう。



 彼女のことは。


 何も知らない。


 何も知らないけど。


 これから、知っていけるといいな。



 彼女がギルドから出ていく時に、俺にだけ声をかけてくれた。





「ごきげんよう」


「……あ、ああ」





 ああ、そうだね。また会おう。愛しい君へ。








 ◇








 いやあ、男とラブコメとかないわあ。こっちから願い下げだわあ。どうせなら女の子と恋がしたい。こっちは元男だし。まあしないだろうけど。


 そんなことを考えながら宿に到着。

 時刻はもう夕方。明日の朝にギルドに行って、そこで依頼を受けましょう。



「あ、おかえりなさい、ユウカさん」


 声をかけられる。


「はい、ただいま」



 目の前には耳。ピコピコ。ふさふさ。


 視線を少し下げれば、そこには眠たそうな可愛い顔。


 微笑んでみる。笑い返してくれる。


 可愛い。



 彼女はミカン。この宿の、看板猫娘である。ちなみに宿の名前は『猫髭亭』らしい。


 そして、目の前の耳は、猫耳。


 獣人、いたのね。


「ユウカさん、講習、どうだった?」

「はい、とても有意義でしたよ。いろんなことを教われて」


 これは本当。まあ使うかどうかは知らんけど。


「よかったね」

「はい」


 にこにこ、ふわふわ。ああ、癒やされる。


「ミカンっ!早くこっち来な!仕事中だよっ!」

「はぁーい、ユウカさん、またね」

「……ええ、また」


 女将、許すまじ。我が癒やしの時間を取り上げるとは。

 ふん、もうこの宿に用はない。さっさと部屋に戻らせてもらおう。



「ふぅー」


 一息つく。

 …あ、この部屋も宿だね。用、あったね。


 さて、することもなくなったし、晩ごはん食べてさっさと寝ようか。


「《毒薬作成》」


 その前に、これだけどね。








 ◇








 目がパチリ。

 ええ、おはようサンシャイン。


「《毒薬作成》」


 ぱくりと。


『ぎっ…』


 さて今日は、依頼を受けようか。


 少し、楽しみ。


「何があるかなあ」


 まあその前に。

 まずは、腹ごしらえですかね。






「ごちそうさまでした」


 うん、今日も肉だった。うえっぷ。朝から重いよ。


「さっさと行こう」


 着替えは……しなくていいか。このまま行こう。


 ちなみに今の俺の服装は、カレンさんからプレゼントされた、俺にピッタリのワンピースっぽい服だ。わざわざ買ってくれたらしい。

 ……若干足がスースーするのが気になるけど。


 この格好で冒険者って言われても、しっくりこないよねー。どうでもいいけど。


「はいダッシュ」


 いざギルドへ。




「あ、武器ないじゃん」


 どうしよ。








 ギルドで借りられました。


「一日銅貨3枚です」

「分かりました」


 お安いですね。


 借りられた刀を腰に差す。うん、カッコいい。


「さて、依頼はっと……」


 掲示板へ向かう。めちゃくちゃ視線を感じるけど、無視無視。


 さて、今の俺はGランク、つまりFランクまでの依頼を受けることができるわけで。


「そうなると……ここらへんかな?」




 Gランク依頼

 ナオリ草5束の採取

 報酬:銅貨5枚


 Fランク依頼

 ゴブリン3体の討伐

 報酬:大銅貨3枚


 Fランク依頼

 スライム3体の討伐

 報酬:大銅貨2枚


 Fランク依頼

 ナオール草5束の採取

 報酬:大銅貨1枚




 ……世知辛っ。報酬低っ。低ランクへの暴力っ。


 ちなみに銅貨1枚で100円、大銅貨1枚で1000円である。


 つまり、Gランク依頼なんてホントにワンコインだし、Fランクも日々の食費と装備の整備だけでカッツカツっていうか、それにも足りないね。


 うーん……つまりさっさとランクを上げろってことか……。厳しい世の中だなあ……。


「うーん……まあ、受けるならこれとこれかな」



 Fランク依頼

 ゴブリン3体の討伐

 報酬:大銅貨3枚


 Fランク依頼

 ナオール草5束の採取

 報酬:大銅貨1枚



 本で見た限りだと、ゴブリンの生息地とナオール草の生育地が被ってたはず。


 ……ていうか、ナオリ草とナオール草って……安直ぅ……。


 まあ、とりあえず依頼を受付に持っていって。


「ルミルさん、これ、お願いします」

「あ、ユウカさんおはようございます。依頼受注ですね、分かりました」


 ルミルさんがいたから受付してもらう。顔見知りがいいよねって。


「はい、完了しました。お気をつけて」

「はい」


 手を振りあって別れる。うん、青春っぽい。え、違う?そう。

 周りからなんか生暖かい目で見られてる気がするけど、気にしない気にしない…。


 ………。





 ちょっと早足になってギルドから逃げた。









 街の東門から外に出る。この街の名前、イオニル街っていうだと。初めて知ったよ。


 そしてこれから向かうのは、この世界で初めに到達したあの森。実はゴブリンが溢れかえっている森だったらしい。あっぶな。そこで気絶してましたよ、俺。いやあ、竜の咆哮に拾ってもらえて良かったあ。



 と、そんなことを考えながら歩いて、一言。



「なんか、遠くね?」



 なんだかんだ2時間歩いてる気がするんだけど。全然着きそうにないっていうか、視界に森が入ってこない。


 ……地図の縮尺どうなってんだよ。



「クッソ、めんどくさいなあ」



 うん、走るか。


 ダッシュ。

 道の端をダッシュ。

 耐久テストだ。



「ほっ、ほ、ふっ」



 道端をワンピース着て全力ダッシュしてる美少女の図。






 シュールだなあ。






 はじめてのぼうけんは、しまらないなあ。

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