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アガーラ和歌山、2019年始動

 ワールドカップという一大イベントを終えた日本のサッカー界。次の4年間に向けて、破れなかったベスト8への壁を破るべく、新たな挑戦をスタートさせることになった。


 日本代表は、毎大会後に監督が退任して現場サイドはゼロからのスタートを繰り返しているのだが、ロシアでの結果を受けて、日本サッカー協会は四郷清彦A代表監督の続投を大会後に発表したのだった。


 その後、ロシア大会のメンバーを中心にチームの再構築を図りながらの年明け、まずはアジアカップに臨んだ。結果は今大会大躍進を遂げたカタールに敗れての準優勝だった。


「アジアを制せなかったことを、まずは国の威信を預かったチームを率いる身として、日本のサッカーを応援してくださる皆さんに謝罪したい。いくつかの台頭もあったり、新戦力のめどがついたりと収穫も少なくなかったが、優勝できなかったのは何よりも重い結果であると受け止めている」


 会見場に現れた四郷監督は、そう言って頭を下げた。だが、咳払いののち、大会をこう総括した。


「アジアで勝てなかったことを、これからしばらくはマスコミ関係者は叩いてくるだろう。それは当然だ。制すだけの力を有しているのだから。だが、私は今の日本がどれだけ地に足がついていなかったかを知れたのが救いだと思っている。アジアで手こずっているようでは世界とは戦えないのかもしれないが、世界に目を向けすぎた結果がこの敗北だと思っている。今まで強豪として数えられた韓国やオーストラリアが不調に終わった一方で、東南アジアや中東の成長は目覚ましいものがある。私たちが決勝トーナメントで相まみえたベトナムや、今大会を制したカタールと肌を合わせて実感した。もはやアジアは簡単に勝てる地域ではない」


 指揮官が振り返ったように、今回のアジアカップでは強豪国の苦戦と同時に、東南アジアの台頭や中東勢の躍進が光った。特に前者は大会を大いに盛り上げ、日本と相まみえたベトナムも粘り強さを発揮してPKによる1失点に格上日本を抑える大健闘を見せた。そして、長期的展望に立って国家レベルでサッカーを強化してきたカタールは、その最初の花を見事に咲かせた。日本にとって、うかうかしていられない状況である。


「我々が目指すべきはもちろんワールドカップでの勝利、そしてベスト4進出が一つの区切りだ。だが、その前に自分たちの地域であるアジアでの地位が揺らいでいる。幸い、次の本戦まではまだ3年ほどある。地に足をつけ、強化し、土台をゆるぎないものにする必要がある。最も幸運なのは、手前味噌だがロシアで結果を出した日本代表を継続しているということだ。大会後に毎回監督を変えていた今までとは違い、ロシアで残したロジックを継続、強化し続けられるのが大きな利点だ。まずこの1年はチームの再構築と成長をテーマに戦っていきたい」


 このアジアカップには、アガーラ和歌山からはエースストライカーの剣崎と守護神の天野に加え、クラブの超新星(といっても今年でプロ3年目)の緒方と、目下売り出し中のセンターバック外村が代表入りし、戦った。剣崎はエースとしての期待に応えてチームトップの5得点。緒方はベトナム戦でPKを獲得、自ら決めて勝利の立役者となってみせた。昨年途中に内海と竹内という攻守の要をそれぞれ失った影響もあって中位に終わった和歌山は、政権4年目を迎える松本大成監督のもと、着々とリーグ優勝に向けた強化を始めていた。


 まず首脳陣で若干の変化。松本政権誕生後、右腕として支えていた宮脇健太郎コーチが、今シーズンからはユースの監督に配置転換され、クラブOBの元韓国代表ボランチ、チョン・スンファンが現場復帰。アシスタントコーチの職に就いた。また、昨シーズン限りで戦力外となったDF沼井琢磨がトライアウト後に現役引退を発表。ユースの新任コーチとして金の卵の育成に携わることになった。


 そして本題の選手の補強だが、最大のトピックスは、昨年に続いてかつて和歌山でデビューした選手たちの『復帰』である。和歌山で戦力外となったのちに、町田の心臓として急成長を遂げたMF江川樹と、山口に三顧の礼で迎えられて守護神として期待通りの活躍を見せたGK本田真吾が、この度完全移籍で復帰を果たした。二人は会見で「新しくなった自分を、プロ選手としての故郷ともいえる和歌山、紀三井寺のピッチで見てもらいたい」と口をそろえた。復帰という形では、J3の鳥取に武者修行に出ていた成谷もその一人。強力なブラジル人たちにももまれながら、チームトップの8得点を記録し、表情には自信があふれていた。「何としても結果を残す!」と鼻息は荒い。

 この他、内海ら主力センターバックの相次ぐ退団や、リーグワースト上位の失点数の改善をもくろみ、J2の千葉では3年間で100試合以上に出場してきたセンターバックの上原隆志、J1の磐田でくすぶっていたサイドバックの河本育人をそれぞれ獲得。攻撃的な選手は、江川を除けばあとは新卒選手。特に、駿河水産大学から加わったFW塚原慎二は、大柄ながらスピードとキック力に優れたアタッカーとして期待がかかっている。


 2014年の天翔杯以降、国内の主要タイトルに縁のないチームの歴史に終止符を打つべく、アガーラ和歌山は新シーズンのスタートを切った。


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