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【非公開】元勇者、異世界をゆく  作者: 千夜みぞれ
第五章 暗殺者、南の大陸でがんばる!
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第93話 暗殺者、集められた者たちの正体

 執事は皆に見えるように、蝋で封をしてある茶色の手紙を三枚(かか)げる。


「皆さまが全員、お集まりいただけた際に開封するようにと、雇い主から言われております。ではひとつ目の手紙を開封いたします」


 それは若干わざとらしい動きではあったものの、蝋を外して手紙を開けると、演技がかった声音が聞こえた。


「まずはごきげんようと言わせて貰いたい。私はこの屋敷の主人です。依頼内容は後で伝えますが、先に成功報酬を言っておくことにしましょう。成功報酬は──金貨、五千枚です」


 室内がざわついた。

 金貨五千枚。

 それが暗殺の報酬としてどれほどのものかはわからなかったが、それでもこの世界で生活している中での経験として、桁外れの金額であるのはわかる。

 ちらりとカティたちを見ると、やる気を出していた。


「どんな依頼だと思う?」


 小声でそう聞くとカーチャが(ささや)く。


「小国の王族を暗殺するほどの金額だから、それなりの依頼だと思うわ。よかったわね」


 結局暗殺なのかとは思ったものの、額が額なだけにヤっちゃおうかなと思案する。

 この人数なのだ。

 仮に半数が暗殺者なのだとしても、ボクが手を(くだ)す必要はないかも知れない。


「えー、それでは別室へどうぞ。ダイニングルームに食事を用意しておりますので、用意された椅子にお座りになって食事を楽しんで下さい。とのことです」


 執事はダイニングへと案内してくれる。

 皆の足取りは軽く、先ほどの悪い空気などは一切無かったとばかりに良い雰囲気が覆い尽くした。

 ダイニングに入ると、まるでパーティーに使うような長机がある。

 純白のテーブルクロスは初雪のように白い。


「あ? これ、俺の二つ名じゃねーか」


 口の悪い剣士がそう言った。

 確かに椅子の前に置かれた札を見てみると、〈毒殺〉などの明らかに本名ではないものや〈イルセトのマルシュ〉といった二つ名であるとわかるような文字が書かれている。

 再びざわざわとしていく雰囲気の中で、執事が手紙を掲げた。

 それは二枚目の手紙であり、一瞬の迷いもなく開封される。


「席に置きましたるはあなた方の二つ名です。今回の依頼ではご高名な皆さまの二つ名こそが重要であり、また席を割り振っています。と書かれております」


 手紙の内容などは大半の者には届いてすらいなかった。

 彼らの思うところは、ただひとつ。相手の二つ名であったからだ。


「お前が、あの〈毒殺〉のソニアかよ!」

「そういうあなたは〈村殺し〉、ね。良い噂なんて全く聞かないし、変な名ねぇ」

「あぁ? 傭兵が占領した村を皆殺して語られ出した名だぞ?」

「貴様が〈トッツの怪人〉だと……?」

「ん? そうだが、あんたのお友達でも殺しちまったか?」

「この依頼が終わったら殺してやる!」

「やれるもんなら、やればいいさ。待ってるぜ!」


 どうやら集められた人たちは、全員が二つ名を持っている暗殺者、あるいは殺し屋らしい。

 感心していたり、一触即発だったりとあちこちでもめている。

 なんではじめての依頼がこんな変な依頼なのか。

 取り敢えず最奥の上座に用意されていた椅子に座ると、一斉に声が消え去った。

 まるで、いきなり一人になってしまったようだとキョロキョロと辺りを見ていると、慌てたような声が聞こえる。


「嬢ちゃん、その席はまずいって……」

「さっさと立ちなさい」

「まちな! 私らは全員座ってるんだ。結社の暗殺者を抜きにすれば……ね。だからこのお嬢ちゃんが……」


 部屋にいる全ての者たちがボクを見た。

 そして気がつく。彼らはボクの席にある札を見ているのだ、と。


「あー、ボクがウェンズデイだよ」

「……結社の、間違いないんだね?」

「あぁ。この少女がウェンズデイで間違いない」


 おばあさんの問いかけに、席のないカティたちがボクの後ろに立って肯定の言葉を口にした。

 集められた彼らは唖然といった表情で、呼吸すら忘れて銀髪の子どもを凝視する。

 執事やメイドは青い顔をして震えていた。


「ちょっと待て。俺はベスカー、〈鋼鉄〉のベスカーだ。俺は以前、〈首切り〉ウェンズデイに会ったことがあるが、あいつは男だし金髪だぞ?」


 全身鎧の男が問いかける。 


「あ、それは先代のウェンズデイだよ。ボクは二つ名を引き継いだの」


 その後は静かなものであった。

 先ほどまでの喧騒は消え去り、彼らの顔にあるのは興味か恐れのみ。

 そして運ばれてくる料理たち。

 ボクは皆にジーと見られているので居心地が悪く、仕方なく料理でも楽しもうとスープをごくり。


「毒を恐れないなんて、さすがウェンズデイね」


 キセルをこちらに向けて、〈毒殺〉のソニアがそう言った。

 まぁ、一口飲んでも大丈夫だったので毒はなかったのだろう。

 安心して美味しいポタージュを楽しみ、飲んで食べてを繰り返していると、執事は三枚目の手紙を開封し、読み始める。


「では依頼内容を伝える。暗殺対象はウェンズデイ。ウェンズデイを殺した者に金貨五千枚を渡す」


 と───

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