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【非公開】元勇者、異世界をゆく  作者: 千夜みぞれ
第五章 暗殺者、南の大陸でがんばる!
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第92話 暗殺者、刺客者たち

 屋敷の門は開いており、中に入ると馬車はボクたちを降ろして去っていった。

 目的地の大きな屋敷はまるで山奥には不釣り合いで、それこそ首都の中にある豪邸と言っても過言ではない。

 屋敷を守るように一周しているであろう金属製の柵と壁。

 若干荒れ果てているが以前は綺麗だったとわかる庭。

 手入れがされなくなったのはここ数年だろうか?


「おっきい家だね」


 目の前に黒い重厚な扉が立ちふさがった。

 金色のノッカーがピカピカと美しい。


(ティエラの、いや、ボクたちの家くらい大きい。なんでこんな山奥に建てたのか謎だけど)


 外壁は白を基調にしているが薄汚れてしまって変色している。

 今は住んでいないのだろうか。そんな疑問だけが浮かんでは消えていった。


「さて、こんにち……は」


 ノッカーを鳴らそうと手を伸ばすと、


 ──ガンガンッ


 という裁判に使う木槌のような音が静かな森に響き渡る。

 唖然として犯人を見ると、カティが鳴らしていた。


「ボクが鳴らしたかったのに」

「……ごめん。出てこないし、もう一回鳴らしても良いんじゃね?」


 子供みたいだが、まぁ今は子供なのだから許されるだろう。

 ノッカーなんて今まで鳴らしたことがなかったのだ。

 自宅にある物も鳴らす機会が無かったし。

 ボクは金の取っ手を掴んだ。


 ──ガンガンガンガンガンッ!


 頭を抱えるカティとカーチャ、大笑いするルドヴィヒとソラと一緒に待っていると、すぐさまガチャンという鍵を開ける音がしてタキシードに身を包んだ執事が出てきた。


「申しわけありません。お待たせしました」


 あきらかに作った笑顔を絶やさない彼は、深々とお辞儀をする。


「どうぞ、中へ」


 そしてボクたちは屋敷の中へと招かれるままに入っていく。

 屋敷の中は外とは違って掃除が行き届いており、大きなシャンデリアすらある豪華さである。

 執事に案内されて一つの扉の前まで行くと、どうぞと言われた。

 今度はカティが開けて良いぜって顔で見ている。


(別に扉なんてどうでもいいんだけど……)


 うながされるままに扉を開けると、そこには十三人の男女がいた。


「あら? 可愛らしいお嬢さんね」


 スリットから見える太ももがエロいお姉さんが、椅子に座って脚を組み替えつつ、キセルをこちらに向けてそう言った。


「チッ、ガンガンうッせーんだよ。おい、もう揃っただろ? さっさと話せや」


 口の悪い剣士があからさまに怒りながらそういうと、執事は淡々と「もうしばらくお待ち下さい」と言う。

 室内には先に来ていた十三人とボクたち、あとは執事とやたらとスカートの短いメイドがひとり。

 つまり、十九人もの人がいた。

 いくら広い応接室とはいえ、圧迫感を感じざるを得ない。

 家具もあるのだから当然といえば当然である。


 椅子はすべて占領され、小さいテーブルにも座っている人がいるので仕方なく、戸棚の横に移動すると、しばらくして再び来客を知らせる音が屋敷に響いた。


(こんなに人数を集めるなんて、どんな依頼なんだろう……?)


 いや、彼らが依頼の関係者とは限らない。

 毛皮のマントを羽織った男や先ほどのお姉さんは、どちらかというと貴族に見える。


 扉の向こうから、同じような台詞を言う執事の声が聞こえた。

 新たにやってきた人物も、おそらく客なのだろう。

 鍵を閉める音が聞こえ、こちらに近づいてくる足音も聞こえる。

 扉を開けて入ってきたのは、ものごいのような小汚ないボロを着た老人だった。


「いつまで待たせるのかしら?」


 お姉さんはため息を漏らした。


「もう我慢ならん!! これは一体なんの集まりなのだ! 貴族風の者に、全身鎧(フルプレート)のお前は騎士か? 冒険者のようなやつに、そこの女は娼婦か? あ? イジェルドの犬の次はものごいと来た! ふざけるのも大概にしろ!」


 もうひとりの貴族風の男が、この場にいる大半の者に喧嘩を吹っ掛ける。こわい。


「フフッ、私は確かに娼婦だけれど、それがどうしたの? 試したいのかしら」


 胸元のあらわな女性はニヤリと笑う。


「わしは確かにものごいじゃが、お主に迷惑はかけとらんじゃろう?」


 飄々(ひょうひょう)と言い返している他の人たちとは違って、ボクの連れは沸点が低かったようだ。

 ギリッと奥歯を噛んだ音が聞こえた。


「イジェルドをナメるな、三下が!」

「どたまかちわってやろうか?」

「舌を引き抜いて口を縫い合わせるわよ?」


 激怒するカティたちに少し恥ずかしくなり、ボクはうつむいた。

 執事が咳払いをして場をいさめると視線が彼に集まる。

 その手には手紙があった。

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