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【非公開】元勇者、異世界をゆく  作者: 千夜みぞれ
第五章 暗殺者、南の大陸でがんばる!
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第88話 暗殺者、七曜になる

「ではウェンズデイよ、敵軍はなにゆえ退却したと思う?」

「……七人が将の妻子、家族を殺した……?」

(しか)り。彼ら彼女らは妻子を殺したのだ。ただし、少なくともひとりは残して。それは──褒められたことではない、他国からは非道だと言われる行為だ。されどペルナの人々は助かった。ペルナの殺されていたであろう人々と、戦によって亡くなっていたであろう人々。それらを合わせた数と比べれば……いや、比べるまでもない数の死で、戦は終わったのだ」


 やがて満身創痍で今にも命が消えそうな者が一人、ペルナ城にやって来た。

 その者は王への謁見を望み、そしてそれが伝わると王が自ら出てその者に会った。

 王はすべての説明を受けた。

 彼ら彼女らは──戦に出ていたために──どこの屋敷も警備が手薄だったので、忍び込んで将の家族を殺したのだ。

 しかし最後の日、王を撤退させるために七人で城に忍び込んだのを奇襲された。

 当然の如く、他の家を襲ったのがバレていたので待ち伏せをされていたのだ。


「王族であろうと貴族であろうと、世継ぎがいなくなるのは恐ろしいことだ。自分が死ねば血脈が途絶えるのだから、な。──そうして周辺国家は戦に勝てず、さりとて国内の不満を抑えられなかった。次第に滅びていき……ペルナを中心とした連邦制度が生まれたのだ」


 首長はふぅ~と少し疲れたように息を吐いた。


「なるほど。南の大陸の歴史は知らなかったから、面白かったよ。……まぁ面白いなんて言っていいのかわかんないんだけど」


 ボクがまるで友達に話すように、首長である少女と話すと大臣たちの顔が真っ赤になった。

 憤怒に燃える眼差しが痛いほどに突き刺さる。

 それでも、首長本人は嬉しそうに笑った。


「お主、物怖じせぬのだな! ふむ、確かに他国の歴史、特にオルベリアの建国とは違うだろう。されど遠い昔のこと、面白いと感じて誰が責めようものか」

「……最後にひとつ、聞かせて欲しい。ウェンズデイは、〈七曜〉は、悪だと思う?」


 その質問に他の〈七曜〉たちは驚いたようなそぶりを見せた。

 大臣たちは今にも詰め寄ろうと。

 首長である少女は片手を上げて彼らを制止すると、にんまりと笑う。


「悪か、と? ドラゴンを相手に正面から戦うのと、寝首をかくのと、どちらが有利だ? どちらが有効だ? 相手の軍がこちらより多ければ、正面から攻めるのではなく夜襲したり食糧に毒を混ぜたりするだろう? それを誰が卑怯だと言える? ならば暗殺とは手段でしかないのだ」

「では、相手が善人であれば?」

「善人などと、誰が判断する? 悪政を敷き民を苦しめる王を暗殺すれば、その者は英雄と呼ばれる。国民に慕われている王を暗殺すれば、逆賊であったり売国奴と。同じ王という存在でも、見方によって異なるのだ。──つまり暗殺には善悪はなく、また相手がいかなる人物かも関係がない。何故(なにゆえ)におこなうのかが重要なのだ。依頼が嫌なら受けなければいい。他の誰かがやるだけ、だからな」


 少女は言い切った。

 あの年齢でちゃんと首長をしているのが見れて、ボクは顔を伏せて口角を緩める。

 暗殺者はともかく、この首長は面白そうだ。


「わかった。しかし若き首長よ、ボクはあなたに忠誠を誓わない。……ま、オルベリア王に誓ってもいないけどね! それでも良いなら──ウェンズデイの名、謹んでお受けいたす!」


 銀髪の首長は、大胆不敵な銀髪の少女に対して笑った。

 こんな〈七曜〉は未だかつて、いなかっただろう。


 そうして首長が暗殺者としての掟を伝え始めた。

 新人の〈七曜〉に直接伝えるのが伝統であるらしい。


 一つ、イジェルド連邦人を殺してはならない、ただし場合による。

 二つ、受けた依頼は必ず完遂すること。ただし実現不可能ならば中止しても良い。

 三つ、他人の依頼を邪魔してはならない。ただし助けるのは許可する。

 四つ、イジェルド連邦に他国が攻め込もうと画策(かくさく)した時点で暗殺をおこなう。ただし実行は各自の判断に任せる。

 五つ、裏切り者と敵対者は全員で殺すこと。ただし絶対ではない。

 六つ、仲間が殺されたら報復せよ。ただし恩情をかけても良い。

 七つ、イジェルド連邦を守ること。



「ただしってのが多いね」

「仕方あるまい。そうでもなければ、命をはれとは言えんさ」

「一つ目だけ聞きたいんだけど、場合ってどんな場合?」

「相手がイジェルド人かどうか、見た目だけでは判断出来ないだろう? 我らは多くが褐色の肌をしているとはいえ、東に行けばオルベリア人と差がない肌の色をしている。他国においては巻き添えは出来るだけ避ければいい」

「なるほど。あ、暗殺者だから見つかっちゃダメ?」

「いや、好きにしてかまわない」

「じゃあ、あらためましてよろしくお願いします」

『ピィ~』

「人などいずれは死ぬのだ。そこには遅いか早いかしかない。君も、遅ければいいな」


 正直、『無礼者め、帰れ!』とか『国外追放じゃ!』を期待していたのだけれど、首長である少女は何故か逆に嬉しげで、怒っているのは大臣だけだった。

 ツラい。

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