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【非公開】元勇者、異世界をゆく  作者: 千夜みぞれ
第四章 元勇者、暗殺者になる!
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第67話 元勇者、珍客

 翌朝。

 未明からメイドたちは大忙しだった。

 なにしろルーファン家、そしてルーファン邸はパーティーなどを開催したことがない。

 初めてのパーティーが主催者側で、そのうえお客は交易都市ベルンの錚々(そうそう)たる面々だ。

 一切の手抜かりがあってはならんと、何度もルカ商会と屋敷を往復して食材や食器を持ってきた。

 パーティーは昼頃から。

 彼女らは額に汗を口元には笑みを浮かべて準備する。





 目が覚めたので窓から外を見てみると、屋敷の庭にはそれまでなかった机や長椅子が置かれていた。

 机の上には光る美しいグラスが見える。

 音楽隊の人々が演奏の練習をおこない、メイドたちが休憩の合間にうっとりと眺めている。

 厨房も大忙しで、仕込みや時間のかかる料理などを作っているのだろう、美味しそうな匂いが鼻腔を刺激した。


(お腹へったなぁ……)


 ふと、クローゼットに掛けられたドレスを見た。青い生地に金の刺繍を施した美しい逸品だ。

 ボクはティエラの言葉を思い出す。


「兄さんの美しさの前には、名工の作品とて釣り合うとは思えませんが……しかし、私は頑張って二つに絞りました。このどちらかを着てください!」


 そう言われて示されたのは赤と青のドレスだった。

 赤は明らかに露出が過多で、スリットや透けている部分がある。

 一方の青のドレスは肌の露出も多くない。


(誰でもこっち選ぶって。ティエラは赤を選んでたらどうしてたんだろう……)


『ピィ?』

「ソラみたいな色だね。さて、ティエラを探しに行こっか」

『ピィ~』


 部屋にいるのも暇だった。

 ボクは廊下に出て、そのあと玄関から出て庭に出てみる。

 メイドさんたちに感謝しつつ石畳を歩いて──いると、格子(こうし)状の門の隙間に人影が見えた。

 近づいてみると、どこかで見たことが、というか昨晩見た人たちがいる。


「え……カティ、なにしに来たの?」

「なぁ、ウェンズデイ。パーティーするんだろ? いれてよ」


 ニシシと笑うカティ。


「うまいもんあるんだろ? どうせ残るんだし食わせてくれよ、ウェンズデイ」


 ニカっと笑うルドヴィヒ。


「はぁ……ごめんなさい、ウェンズデイ。この二人、止めても聞かなくて」


 苦笑うカーチャ。

 いろいろ言いたいことはあったのだが、まずは、


「そのウェンズデイってのやめて! レインでいいから!」

「えーでも、ウェンズデイはウェンズデイだしなぁ」

「あぁ」

「そうね」


 三人は困惑した表情でそう言った。こっちが困惑しているわ! と焦っているのはボクだけである。


「命令でもお願いでもなんでもいいから、やめて! とりあえず入れられるか聞いてくるから待ってて!」


 そう言った瞬間だった。

 タタタッという石畳を走る足音が聞こえる。

 振り向くとカイネとミッコとユッカ、そしてティエラが剣を抜いて走って来ていた。

 ボクが「あばばばばばばば」と慌てていると既に目の前では殺気がぶつかっている。


「兄さんから離れなさい!」

「「今度こそ守ってみせます!」」

「ハァ? やるってんなら相手してやるぜ!」

「あたしに勝てると思うなよ、メイド」

『ピピィ! ビィ~』


 一部始終を聞いていたソラが悪のりしているのは置いといて、止めなければ流血沙汰になるのは目に見えている。

 いくらなんでも祝いごとの前に縁起が悪い。

 ボクは門に背を預けた。


「ワー! 待って、ちょっと待って! お互いに武器を(おさ)めて!!」

「……ティエラさま、彼らに殺気はありません。レインさまの言う通り、武器を収めましょう」


 カイネの言葉を受け入れたティエラと二人の弟子は、しぶしぶ剣を収めた。


「ほら。あんたたちも!」


 カーチャがわざとらしく肩を落として言う。


「仕方ねぇか」

「メイド! 負けたわけじゃねーぞ」


 カティたちも武器を収めた。

 流血沙汰は未然に防がれたのだが、どう説明するべきなのだろう?


(いやぁ~実は、暗殺者になってウェンズデイっていう二つ名まで貰ったんだよね、アハハー……なんて言えるか!)


 さすがに可愛い男の娘でも言えることと言えないことがある。

 仕方がないので嘘を考えた。

 ただ、ボクは嘘が下手だ。


「えっとこの三人とは友達になったから……。パーティーに招待したいなって思って、えっと」

「兄さん。本当ですか? 脅されたり、弱味を握られたのではないんですね?」

「そんなこと、されてないよ!」

「あぁ! あたしら友達だよなぁ、レイン!」

「おう! レインを傷つけるやつは許さねーぜ!」

「友、うん。敵対はしないって誓うわ」

「はぁ……お互いに認めているので、()()()()()()()疑いはしません。パーティーに参加するのも許可します。ですが、マナーは守りなさい。兄さんの晴れ舞台を台無しにすれば、当家と商会の名誉に誓って、消しますからね?」


 その目は本気(マジ)だった。いくらかかっても、凄まじい大金を使ってでも消すんだろうな。と確信出来た。

 しかし彼らはそんなことお構い無しである。


「レインの妹こえー」


 ヘラヘラと笑うカティたちには来客としてではなく、使用人として参加して貰うことになった。

 使用人とは言ってもメイドなどではなく護衛、あるいは用心棒って感じの使用人である。

 絶対に暴れるな。と言っているが……どうなるかは神のみぞ知るってやつであろう。

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