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【非公開】元勇者、異世界をゆく  作者: 千夜みぞれ
第二章 元勇者、召喚師でがんばる!
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第26話 元勇者、必殺技を習得する

 自分の力を発揮できる戦い方、強くなる方法。

 そんな単純でややこしい答えは中々見つからない。


「単純に乗る? いや、でも……んー」

「魔法使いとしてなら、魔法学校に入るのも良いかも知れないぜ? 大金が必要らしいけどさ」

「剣術を上達させたいのでしたら、誰かに弟子入りすると良いのでは? やはり高名な方に弟子入りするのが手っ取り早くて安全です」

「おぉー」


 強い剣士と言われて思い浮かんだのは、オーリンとナツユキだ。しかし昔の戦友に弟子入りなんて考えられない。

 ならば魔法学校、だろうか。


 そんなこんなで三日目のスパルタが始まった。

 今日は初日と同じで実戦だ。

 しかし今度は二人が敵を引き連れて来るらしく、一対多という状況での戦い方の練習──いや、実戦ということだ。

 川辺で待っていると、声がどこからか聞こえてくる。


「行くぞ、準備しとけー!」

「私も行きまーす」


(──同時かよ!)


 もはや戦いは避けられない。

 ボクは狩猟刀を抜くと前に構える。ソラもぽよんぽよんと跳ねて臨戦体勢だ。

 川の方から走ってくるイルマの後ろには火を吹いている小さい竜、あるいはワイバーン。

 林の奥から走ってくるリーネの後ろにはアーメイジャ。しかし今回は四体もいる。


「ソラ、アーメイジャをお願い」

『ピィ』


 二人は戦闘には手を貸さないと言っていた。だから、今は特訓の成果を見せるときだ。

 召喚しつつ戦う、未完成ではあるがボクだけの戦法。

 つまりボクにとっては一対多、ではなく多対多の戦いでしかない。


(──なら、先制あるのみ!)


 小さい竜は空を飛んでいる。


「タイヴァス!」


 黒の中から飛び出した青い鳥が、空へと舞い上がる。

 四体のアーメイジャは流石に多い。

 だから、こちらはソラと練習していたアレを使うことにした。


『ピィ! ピィ! ピィ!』


 ソラが先行してアーメイジャの前でぽよんぽよんと挑発する。

 案の定、刺されているソラを尻目に、ボクは蟻人を背後から不意討ちした。

 正々堂々とは真逆の戦い方。

 歌われている勇者の戦い方とは違う、邪道。

 それでも勝つためには手段を選ばないのが、あの大戦で生き残れた理由かも知れない。とそんなことを思いつつ一体目を倒した。


 ──テッテーン


 ボクは言葉に、前回のアーメイジャをあわせた二体を召喚するイメージを込める。


「アーメイジャ召喚!」

 

 なぜか召喚されたアーメイジャの槍と盾が金属製に変わっているが……気にしない。

 死んだはずの仲間が(よみがえ)って敵に味方するという状況に、動揺しているところを不意討ち、魂縛。そして召喚。

 これでこちらはボクとソラ、アーメイジャが三体。

 相手は混乱し、動揺しているために連携の取れていないアーメイジャが二体。


「──突撃!」


 あとは数の力でごり押しした。

 途中で一体が倒されたが即、再度召喚したので相手は更なる絶望を抱いていただろう。


 倒し、魂縛、そして召喚。

 この流れ、いわばこのコンボは非常に強力だった。

 相手からしてみればまさにゾンビさながらであり、動揺と恐怖で隙が生まれる。

 まったくもって悪役っぽい戦い方ではあるのだけれど。


 ──テッテーン


 最後のアーメイジャを倒した。そして召喚する。

 タイヴァスを見ると苦戦していた。相手は小さく、大型犬ほどの大きさしかない竜。

 しかし、火を吹くのだ。

 体が大きくとも攻撃手段が爪かクチバシしかないタイヴァスでは、素早い敵との相性が最悪であった。


「タイヴァス、なんとかそいつを落として!」

『グルォ!』


 命令を受けたタイヴァスは羽を広げて敵にぶつかる。大きいからこそ出来る攻撃だ。

 それでも空中で押さえ込む。なんて出来るはずがない。

 二体はもつれ合いながら、地面に墜落した。

 即座にタイヴァスを撤退させると、竜は再び飛ぼうと翼を羽ばたかせ始める。


「狙え。──放てぇ!」


 その瞬間、アーメイジャに命令して槍を投擲(とうてき)させた。

 二本は外れたが三本が小さな身体に突き刺さる。

 飛べなくなった竜に近づき、ボクはトドメをさした。


 ──テッテーン


 竜を倒したことで名前がわかる。心に浮かぶのは、まるで忘れていた名前のようだ。


「バジリスク、召喚!」


 海鳥が海面に突入し、その出口が足下の黒なのだとさえ思えるような勢いで、それは出てきた。

 光沢のある黒い鱗、コウモリのような翼。降り立つと二本の足で立ち、尻尾は長く、ボクの肩ほどの小さな身長。

 頭には二本の小さなツノが生えていて、火を吹ける。

 カッコいい魔物であった。


 お疲れー、と二人がこちらにやって来る。

 そして、


「どっちが良い敵だった?」


 とイルマが聞いた。

 首をかしげていると、リーネも聞いて来る。


「四体ですよ? 私が上ですよね!」

「いやいや、バジリスクだぞ? レアな魔物だぞ? オレの勝ちだろ」


 どうやら二人で勝負していたらしい。


「私は前にもアーメイジャを連れて来ましたし、レンオアムも見つけましたよ!」

「はぁ? この前のは勝負に入ってねーよ! だからオレの圧勝」


 二人はお互いに自分の勝利を確信している面持ちだ。それでも視線の間にはぱちぱちと稲妻でも流れていそう。


「レインはどっちの勝ちだと思うんだ!」

「レインはどっちの勝ちだと思いますか!」


 同時に聞かれた。

 しかしボクの中ではもう決まっている。


「んー、イルマの勝ち! バジリスクがカッコいい!」

「フハハ、どうだ!」


 ドヤ顔のイルマとぐぬぬと悔しがるリーネ。

 そして彼女は深いため息をはいた。


「仕方ありませんね」


 リーネはみんなの荷物を持った。

 どうやら負けた方が荷物を持つという罰ゲーム付き、だったらしい。


「あ、ボクも手伝うよ」

「まだ病み上がりなので無理しないで下さい」


 ここ数日のスパルタは一体? ボクをボコボコにしたリーネはどこに行ったの? その言葉を胸にしまうと、本日のメニューが終了した。

 帰り道を歩く二人に、ボクは声をかける。


「ちょっと試したいことがあるから、残ってもいい?」

「ん? あぁ、わかった。じゃあ村で待ってる」

「無茶はしないで下さいね?」


 ボクが頷くのを確認すると、二人は村へと向かっていく。

 二人の背中が見えなくなったのを確認して、ボクはカードを見た。



 レイン・ヴィーシ

 Lv.2 力:E20 耐久:E23 俊敏:E15 魔力:A280


 〈魔法〉

 【使令秘法】

 ・魂縛できる

 ・召喚できる《召喚可能数:524288体》


 〈スキル〉

 【前世の記憶】

 ・思いだせる

 【生活補助】

 ・クリーニングできる

 ・牛乳だせる

 ・調味料だせる

 【対話】

 ・魔物と会話できる


 【登録モンスター・魔物】

 ・ソラ(スライム)

 ・ストーンドラゴン

 ・ケイハスx2

 ・タイヴァス

 ・アーメイジャx5

 ・レンオアム

 ・バジリスク



 ステータスは平均的に見てどうなのかはわからない。

 しかし、


(──召喚可能数52万!?)


 どう考えても桁がおかしい。ボクは苦笑う。牛乳と調味料のことも含めて。


「ねぇソラ」

『ピィ?』

「これ、本当に出せるのかなぁ」


 ただの表記ミスかも知れない。

 そもそも数十万体も召喚出来たとしても、一体ずつでは日が暮れてしまうだろう。

 だが、ボクの魔法には言葉というキーワードが必須だと思い出した。


(んーっと。撤退で消えるから……全軍出撃、かな? 召喚?)


 悩んでいても仕方がない。


「──全軍召喚」





 突然、空を引き裂くような『ゴォオオオオオオ!』という、雪崩のような音と大地の揺れが辺り一帯に(とどろ)いた。

 イルマとリーネの二人は同時に後ろを振り向くと、最悪の状況を想像してしまい顔を(こわ)ばらせる。

 村人の叫び声の中、ただ一点のみを見て走り出す。


「「レイン!」」


 イルマとリーネは銀髪の少女がいた場所まで全速力で走った。

 何が起こったのかはわからないが、友達が助けを求めているかも知れない。

 ようやくたどり着いたそこで見たものは、周囲一帯の荒れ果てた光景であった。

 まるで巨大なドラゴンでも通って行ったかのような、一直線の災害。

 その端に小さな銀が見える。


「なんだ、これ」

「何が、あったんですか?」

「アハハ……」


 銀髪の少女は一匹のスライムを抱きながら、座り込んでいた。

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